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【コラム】トランプ大統領の「コペルニクス的非核化」、韓国と北朝鮮の選択とは?

登録:2025-03-19 06:46 修正:2025-03-19 08:22
トランプ大統領、「北朝鮮の非核化」ではなく「世界の非核化」を強調 
南北いずれにも挑戦でありチャンス 
非核地帯の有用性に注目すべき 

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所長兼平和ネットワーク代表
トランプ米大統領が13日(現地時間)、ホワイトハウスのオーバルオフィスで北大西洋条約機構のマルク・ルッテ事務総長と会談し、記者団の質問に答えている=ワシントン/UPI・聯合ニュース

 「もし私たちが核兵器の数を減らすことができれば、それは素晴らしい成果になるでしょう。私たちはあまりにも多くの武器を保有しており、その威力は莫大です。そして最も重要なのは、そこまで多くの武器が必要ではないということです。そして、私たちは他の国々も参加させる方法を模索しなければなりません。ご存知のように規模はさらに小さいものの、金正恩(キム・ジョンウン)も多くの核兵器を保有しており、他の国々も同様です。インドにもあり、パキスタンにもあり、核兵器を保有する他の国々もあります。私たちは彼らも(議論に)参加させなければならない」

 ドナルド・トランプ米大統領は3月13日(現地時間)、ホワイトハウスで北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長と会談した際、記者団にこのように述べた。ここで「私たち」とは世界3大核保有国のロシア、米国、中国(核兵器保有量の順)を指す。トランプ大統領はまた、朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長を「確実なニュークリア・パワー(nuclear power:核保有国)」と呼び、金委員長との関係を再構築する方針を示した。

 これはトランプ大統領が就任した1月20日の発言の単なる繰り返しではない。トランプ大統領は、「朝鮮半島非核化」や「北朝鮮の非核化」を超えた、世界の非核化や核軍縮を念頭に置き、北朝鮮の核問題もこのような観点からアプローチすべきという考えを持っているためだ。まさに「コペルニクス的転換」と呼ぶべきかもしれない。1990年代初めに北朝鮮の核問題が浮上して以来、米国の伝統的なアプローチは、自国の核兵器政策や戦略には手をつけず、朝鮮の核と弾道ミサイルの放棄だけを求めるものだった。ところが、トランプ大統領は金委員長を「ニュークリア・パワー」と称し、米国を含む世界の非核化や核軍縮にともに乗り出そうと呼びかけている。

 筆者が知る限りでは、大統領選の遊説期間を含め、トランプ大統領がこれまで「非核化」という言葉を公の場で言及したのは一度だけだった。ところが、それは「北朝鮮の非核化」や「朝鮮半島の非核化」ではなかった。トランプ大統領は1月23日、スイスのダボスで行われた世界経済フォーラム(WEF)のビデオ演説で、ロシアと中国を取り上げ、「私たちは非核化ができるのか知りたいと思っているが、私はそれが非常に可能だと考える」と述べた。米中ロなど大国が核軍縮交渉に乗り出さなければならないという趣旨で出た発言だ。そしてこの3月13日の発言は、米中ロが率先して模範を示し、これをもとに朝鮮を含む他の核保有国も世界の非核化や核軍縮に参加すべきという意味を含んでいる。トランプ大統領はまた、イランの最高指導者に親書を送り、核交渉の再開を提案した。これを総合してみればトランプのさまざまな発言は場当たり的に出てきた発言ではないと見ることができる。

 では、トランプ大統領のこのような提案の含意は何だろうか。急変する米国の世界戦略とトランプ大統領個人の欲望が絡み合っている。トランプ政権は米国主導の一極体制が現実的でも望ましくもないとみて、米中ロ中心の多極秩序を認め、その中で米国の利益、特に経済的利益を最大限に増やすことを目指している。「安全保障の経済性」がキーワードに当たる。米国独自の国防予算の削減と同盟・友好国に対する防衛費の大幅な引き上げ要求はその一部だ。さらに大きな野心は、世界3大核保有国であり軍備支出国家である米中ロが、核軍縮と大規模な軍事費削減を断行することにある。これを通じて「軍拡競争型勢力均衡」ではなく「軍縮型勢力均衡」を図り、米国の軍備負担を大幅に減らすのがトランプ大統領の考えだ。

 また、トランプ大統領はバラク・オバマ元大統領に対して強い嫉妬心とライバル心を燃やしてきた。世界の核軍縮に関するトランプ大統領の発言もこれと相まっている。オバマ大統領は就任初年の2009年、「核兵器のない世界」を訴え、ノーベル平和賞を「前払い」で受賞した。しかし、この分野におけるオバマ大統領の成果は微々たるものであるうえ、任期後半には1兆ドルに達する核兵器の現代化計画を承認してひんしゅくを買った。トランプ大統領は機会があるたびに、「オバマ元大統領もノーベル賞を受賞したのに、なぜ私が受賞できないのか」という趣旨の発言をしてきた。おそらく心の中で「世界の核軍縮のマイルストーンを立てれば、ノーベル賞を受賞できるだろう」という野心が渦巻いているのだろう。

 トランプ大統領は北朝鮮政策においても、オバマ元大統領との違いを強調してきた。オバマ元大統領が「戦略的忍耐」にとらわれ、金正恩国務委員長との対面会談はもちろん、電話会談もできず、その結果、北朝鮮の核問題を悪化させたということだ。実際、オバマ元大統領も2017年1月にホワイトハウスの鍵をトランプ大統領に渡す際、「米国の国家安全保障における最大の難題は北朝鮮の核問題だ」と述べたほどだ。一方、トランプ大統領は金委員長と3度も会い、「ラブレター」も交換したと自慢してきた。そして、金委員長との親交を重ねて誇示し、再び会うことを望んでいるというメッセージを送っている。「ニュークリア・パワー」と呼んであげるから、世界の核軍縮に参加してほしいというメッセージとともに。

 このようにトランプ大統領の非核化路線はこれまでとは次元の違うものだ。これは韓国と朝鮮の両方に挑戦とチャンスを同時に与えている。韓国は依然として米国の拡大抑止をはじめとする韓米同盟の強化にしがみついているが、これはトランプ大統領の軍縮路線とは合わない。韓国がこれまでの慣行にとどまっていると、防衛費分担金の大幅引き上げのようなトランプ大統領の請求書に苦しめられることになるという意味だ。また、与党「国民の力」はもちろん、最大野党「共に民主党」の一部でも独自の核武装や核潜在力確保の主張が頭をもたげているが、トランプ大統領の核軍縮の野心に阻まれ、話を切り出すことすら難しくなるだろう。

 金委員長に対するトランプ大統領の「最大限の圧力」もその様相が変わった。第1次トランプ政権の初期には経済制裁と武力示威に焦点が置かれたが、第2次トランプ政権では「親交を通じた最大限の圧力」に乗り出す兆しを見せているためだ。ところが、トランプ大統領の発題には金委員長と「共感」できる余地がある。「世界の非核化」は昔から朝鮮が掲げてきたものだ。また、金委員長は「戦略国家」を強調してきたが、トランプ大統領が自分を核保有国の指導者と認め、世界の戦略問題、特に核軍縮問題を論議しようとすれば、朝鮮の戦略的地位を強化できる契機とみなすこともできる。さらに、2月18日の外務省談話で、「北朝鮮の非核化」が不可能だという点を繰り返し強調しながらも、「米国とその追従勢力の敵対的脅威が存在する限り」という条件を付けたことも注目に値する。ジョー・バイデン政権時代には余地すら残さなかったのに、トランプ大統領の帰還と共に再び条件を提示したからだ。

 このように韓国は、金委員長の「非核化不可」が固定される中、トランプ大統領の「世界非核化論」という新たな挑戦に直面している。この二つに同時に対応できる創意的な解決策はないだろうか。筆者は朝鮮半島や北東アジアの非核兵器地帯(非核地帯)が代案になり得ると考える。朝鮮は非核化が「実践的にも概念的にも今はさらに不可能で非現実的」という立場だが、非核地帯は実践的かつ概念的に共感を得られる可能性が高い。また、核戦争の危険が大きい朝鮮半島や北東アジアを非核地帯化することは、トランプ大統領の核軍縮路線にふさわしい議題になり得る(詳細は拙著『変わった金正恩、帰ってきたトランプ』を参照)。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所長兼平和ネットワーク代表(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1187266.html韓国語原文入力:2025-03-17 08:21
訳H.J

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