誰もが懸念していた「悪夢」が徐々に現実のものとなりつつある。米国のドナルド・トランプ大統領が1日(現地時間)、3日後からメキシコとカナダからのほぼすべての輸入品に25%(カナダ産エネルギーは10%)の高率関税、中国からの輸入品には10%の追加関税を課すことを表明したのだ。「米国を再び偉大に(MAGA)」というスローガンを掲げるトランプ大統領が自国の利益を最大化するために「関税」を振りかざすことがはっきりした以上、韓米間においても貿易摩擦が強まることが懸念される。最悪のシナリオにもとづいて似たような利害関係を持つ諸国との連帯を強化するなど、国益を守るために早急に徹底した備えをすべきだ。
トランプ大統領はこの日、自身のSNSでこのことを告知しつつ、「私は選挙期間中に違法な外国人と薬品が国境を越えてあふれるのを防ぐと約束し、米国人は圧倒的にこれを支持する投票をした」と述べた。ホワイトハウスも同時刻、ウェブサイトに詳細な資料を掲載した。カナダは「とうてい容認できない」として報復関税を宣言し、メキシコも対応に乗り出すことを決めている。
今回の決定を非常に懸念すべきなのは、先の大統領選挙での「選挙公約」だからという理由で、自国メディアからも「歴史上最も愚かな貿易戦争」(1月31日付ウォール・ストリート・ジャーナル社説)と評される「自傷的措置」を敢行したものだからだ。米国とカナダとメキシコの「産業サプライチェーン」は細部にわたって一体化しているため、下手に高率関税を課すと食料品などの消費者物価が急騰するだけでなく、トランプ大統領が育成しようとしている主要産業も大きな被害を受けざるを得ない。一例として、昨年の米国全体の自動車部品の輸入額に占めるカナダの割合は13%、メキシコは実に42%にのぼる。これらの部品価格が25%も跳ね上がることになるのだ。結局、今回の措置は、トランプ個人の政治的利益のためには、国全体の経済的合理性や国際関係に及ぼす影響などは問わない、ということだと解釈せざるをえない。
トランプ大統領による関税の脅威が韓国を襲うのは、4月以降になる見通しだ。トランプ大統領は就任初日、財務省、商務省、通商代表部(USTR)などに対し、米国の貿易赤字の原因▽不公正な貿易慣行▽自由貿易協定(FTA)改正の必要性などを調査し、4月1日までに報告するよう求めた。この結果が出れば、韓国にも容赦ない要求が大量に突き付けられるだろう。まかり間違えば、大韓民国を先進国入りさせた自由貿易秩序そのものが崩壊するかも知れない。