2018年に関税賦課で表面化した米国と中国の間の貿易対立が技術覇権戦争につながり、今でも続いている。ところが2019年に日本は、韓国の強制徴用被害者への賠償判決を問題にして、素材、部品、設備の輸出規制というとんでもない策を打ち出した。米国が安全保障を問題として、ファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)などの中国企業の通信装置の使用を禁止する措置を取ると、日本も安全保障を言い訳に、韓国をホワイト国(現「グループA」:輸出審査優待国)から除外することによって、韓国が得意とする半導体産業に打撃を与えようとしたのだ。素材、部品、装置は半導体産業に必要不可欠だが、韓国が全面的に日本に依存しているため、アキレス腱だと考えて攻撃したのだろう。
2022年に米国のバイデン大統領の署名で発効された「チップおよび科学法」(CHIPS法)は、米国政府が大規模な補助金を支給することによって、インテルのような米国の半導体企業だけでなく、台湾のTSMCや韓国のサムスン電子、SKハイニックスのような半導体企業に米国に工場を作らせるようにすることで、米国の半導体産業の復興を試みた。同時に、中国に対する投資を禁止する一挙両得の措置であった。先端半導体は覇権維持に必須だが、中国がまだ確保できていない技術であるため、中国にとってはアキレス腱であるわけだ。すると日本も巨額の補助金を支給し、台湾のTSMCだけでなくサムスン電子の投資も誘致した。これもまた、日本が自国の半導体産業の復興のために米国が取った方法をまねて行なったようだ。
今年に入ると、米国は自国で高い人気を得ているSNSアプリ「TikTok」が、国家の安全保障の脅威になりうるという理由で、中国企業のバイトダンス(TikTokの親会社)の米国での事業権に対する強制売却を推進している。すると日本も同じように、日本で80%以上が利用するメッセンジャーアプリ「LINE」の個人情報流出に対する責任を問い、韓国企業であるネイバーが持つ株式の売却に圧力をかけた。ネイバーは、日本でLINEを運営するLINEヤフーの持ち株会社「Aホールディングス」の株式の50%を保有している。
日本はなぜ、このように続けざまに韓国の先端産業の発展を邪魔するのだろうか。米国は主要2カ国(G2)に浮上した中国をけん制する動きを続けている。これについて、『戦史』を書いた古代ギリシャの歴史家トゥキュディデスの名前を取った「トゥキディデスの罠」(既存の大国と新興の大国の間の覇権交替は、戦争を含む直接的な衝突を伴うという理論)が言及されているのは、あまりにも自然であり、そのためかどうかは分からないが、『戦史』の本を持ち歩く人がメディアに取り上げられたりもした。それをそのまま韓日関係に適用するならば、日本は自国を追撃している韓国をけん制しようとて、「トゥキュディデスの罠」に陥ったのではないか。
ところで、日本はなぜ米国のまねをするのか。たまたま動きが同じになり、あたかも模倣しているかのようにみえるということなのかもしれない。しかし、米国がしたので安心してまねた可能性もある。米国の顔色をみなければならない韓国が、米国と同じ行動をする日本を非難しにくいという点を利用したのではないだろうか。
しかし、米国と敵対関係にある中国とは違い、韓国政府は友好国を標ぼうして日本に過去最大級の好意を示しているにもかかわらず、日本は一貫して韓国を苦境に陥れている。しかし韓国政府は、今もなお日本が望むことはすべて聞き入れ、韓国の利益は得られずにいる。韓国国民としては本当に腹立たしいことだ。これまでのところ日本は米国をまねるだけだったが、韓国が低姿勢を取り続ければ、安心して米国の模倣を越える行動をとるのではないかと非常に懸念される。今からでも気を引き締めて国益を守る、いや、少なくとも大きな損害を受けない外交を展開する必要がある。
チェ・ギヨン|ソウル大学名誉教授・元科学技術情報通信部長官 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )