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[特派員コラム]チョン・ジェホ駐中大使の「予告されていた惨事」

登録:2024-04-05 01:58 修正:2024-07-25 11:12
チェ・ヒョンジュン|北京特派員
チョン・ジェホ駐中韓国大使(右)が2022年7月15日、ソウル龍山の大統領室で、尹錫悦大統領から信任状を受け取った後、記念写真を撮っている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 「数年間、国益をいかに守るかが頭から離れなかった」、「国益を前にして大韓民国の国民はワンチームでなければならない」

 2022年8月1日に中国の北京で就任式をおこなったチョン・ジェホ駐中大使は、「国益」と「ワンチーム」を強調した。1年9カ月が過ぎた現在、駐中大使館は内輪もめが起き、国益も得られずにいる。不幸にもこのような状況は、彼の就任前から予想されていた。

 チョン大使の赴任を1カ月後に控えたその年の7月、北京の韓人社会は、人が集まるたびに新任大使についての話題でもちきりだった。中国の専門家で、ソウル大学政治外交学部の元教授であるチョン大使の学問的実力に異議を唱える者はあまりいなかったが、彼と直接的、間接的な縁を持つ人々は「相手に対する配慮が足りない」、「相手を理解する気持ちが足りない」などの否定的評価を語った。彼の教授時代の態度と言動をみると、知識、戦略的思考、度胸、忍耐、包容力などが総合的に調和すべき「外交」を扱うには足りないというのだった。ほぼすべての省庁からの派遣者が集う大使館を統率するのは容易ではない、と予想する人も多かった。

 実際にチョン大使は、赴任直後から彼自身が強調した「ワンチーム」とは逆の行動を取ってきた。北京駐在の韓国の特派員たちとの初の懇談会で摩擦を起こし、1年半が過ぎた現在にいたるも解決できずにいる。大使館内部の職員との関係もめちゃくちゃだ。就任初期、高位幹部とチョン大使との間に確執が生じ、その幹部は異動した。チョン大使ににらまれた広報官は1年間にわたって彼に報告さえできず、他の職員が代わりにその役割を担っている。ワンチームどころか、予算や人材の浪費が深刻だ。

 先月中旬のハンギョレなどの報道で世に知れ渡ったチョン大使の「パワハラ疑惑」は、彼が職員との業務の過程で重ねてきた過ちが一度に爆発したものだ。チョン大使はきちょうめんな業務スタイルだが、自らの期待に満たなければ過度な人身攻撃的な発言をためらわないという。省庁から派遣されたある駐在官は、大使から浴びせられた屈辱的な発言に耐え切れず、それを録音して外交部に通報した。実行に移したのがその駐在官だっただけで、その職員の他にもチョン大使に暴言を吐かれて通報を考えた人は少なくないという。相当なパワハラをしてもほぼ公にならない大学で取ってきた態度が、駐中大使館で事件を起こしてしまったのだ。

 問題が起きた後の対応も無責任極まりない。パワハラに対する批判が広がると、チョン大使は1日午前に予定されていた本人主催の特派員との懇談会を「一身上の都合」を理由に取り消し、職員に代理させた。職員にパワハラを通報されたチョン大使は、本人は後ろに隠れ、またも職員を盾にしたのだ。

 駐中大使館の内輪もめのせいで、中国との外交関係において大使館の存在感がなくなってしまったのは当然だ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は文在寅(ムン・ジェイン)政権の対中外交に対し、行き過ぎた低姿勢外交だったと述べ、それに対する反省として相互尊重を基礎とする、言うべきことは言う「同等な関係」へと方向転換した。中国の反発が予想される中、駐中大使館は中国の雰囲気をよく観察し、韓国の意思を誤解なく伝えるなどの重い役割を担っているが、中国外交部との対面の場すらまともに持てていないのが実情だ。

 チョン大使が就任時に強調した「国益のためのワンチーム」はどこに行ってしまったのだろうか。1年9カ月ならもう十分だ。彼は本当に国益のための道を決めるべき時に来ている。彼の高校の同窓である尹大統領のためにも。

//ハンギョレ新聞社

チェ・ヒョンジュン|北京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1135298.html韓国語原文入力:2024-04-04 17:40
訳D.K

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