「修学能力試験で全国上位の3058人が医学部に来たわけで、定員が5058人に増えれば自分より勉強ができない子たちも入ってくるようになると考えているんです。2025年からは、入学定員が3千人の期とは同窓会も別々にしなければならないのではないかという声もあがっています」
医学部の増員に反発した専攻医の診療拒否が3週間を越えた中、専攻医のAさんがハンギョレに語った内部の空気は殺伐としたものだった。1970年代の高校平準化政策の実施後、一部の名門高校の卒業生たちが非平準化世代と平準化世代を分離して同窓会を開催することもあったというが、今はほぼ半世紀が過ぎた2024年ではないか。いわれてみれば見たことがあるような気がする。「全校1位を逃さないために学習にまい進してきた医師」ではない「クラスで20~30位だった医師」を国民は望まないという風に、公共医学部と地域医師制を見下したことだ。
医師集団のこのような特権意識と閉鎖性は、長期戦に入った専攻医事態を理解する上でヒントを与えてくれるキーワードだ。全国の100の研修病院でインターンやレジデントとして勤務していた1万2千人(全体の93%)の専攻医は、先月20日に病院を離脱し、今も戻ってきていない。発端は2千人という政府による医学部増員の規模だった。一般の国民の目で見ると納得しがたい部分が多い。世界中のどこにも医師の数を増やすからといって医師が診療を拒否する国はないというのもあるが、救急室や集中治療室さえ何の猶予も与えずに空にした。政府との交渉や最後通告のような過程も省略された。人の生命権を脅かす極端な方法を動員し、患者や病院に残った別の職域の同僚に最小限の了解を求める過程もなかった。集団行動の開始後にようやくウェブサイトに「増員計画白紙撤回」を含む要求案を掲示しただけで、政府の対話要請にも沈黙を貫いている。ひとまず要求案を受け入れろという脅しだ。コミュニケーションのあり方そのものが非常識だ。
「政府は医師に勝てない」という集団行動の効能感は、若い医師たちにも内面化されている。必須・救急医療の最前線である上級総合病院の医師の37.8%が専攻医だ。学んでいる身分である専攻医への依存度が高すぎる異常な構造のせいで、集団行動が起こるたびに病院が正常に回らず、患者は人質に取られる。政府による医療政策の推進→専攻医の診療拒否→医療の空白による患者の被害→政策推進の中止という悪循環が、この20年あまりのあいだ繰り返されてきた。徒弟式の教育で教授と先輩が進路に大きな影響を及ぼす閉鎖的な構造にあって、医師たちの凝集力は格別だ。教え子(専攻医)が診療を拒否しても、師(教授)は止めるのではなく応援する。記名投票やブラックリストなど、別の考え方が出てくる道そのものが封鎖されている情況も多く見られる。2020年の医学部増員に反発しての長期間の集団休診でも不利益はなかった。業務開始命令に応じなかったことで告発された専攻医たちも、政府をひざまずかせてからも「政策撤回の明文化」に固執した。医師国家試験を拒否した医学部生たちもみな救済された。
もちろん、総選挙の2カ月前に「2千人増員」を突如として発表した政府も、拍手ばかりされる立場にはない。国政支持率の上昇を狙ったものだということを知らないわけではない。この1年あまりの間に医協と28回も会ったと強弁するが、当初の予想をはるかに上回る増員数は最近になって打ち出したものではないか。だが、一部の医学部教授と専門家が提案する漸進的増員論(500~1千人)が妥協案になりうるかは疑問だ。問題の本質は数ではないように思えるからだ。
増員が500人だったら集団辞職は起きなかったのだろうか。医師たちは科学的データにもとづいて増員するかどうかを決めようとの立場だが、政府が医師の需給見通しの根拠とした国策研究機関(KDI、韓国保健社会研究院)の報告書さえ認めない。ソウル大学医学部の教授たちは、「信頼性のある海外機関に分析を任せよう」という荒唐無稽な提案までしている。医師集団全体の納得しうる科学的データは存在するのだろうか。医師は不足していないと繰り返すばかりで、高齢化による医療需要の増加や引退する医師を考慮しない推計を押し付けるのは合理的ではない。専門分野の中でも医療は特に情報の非対称性が大きい。生死が行き交う診療室の最終決定権者である医師の独占的権限が、医師の数を決める政策の決定過程にもそのまま行使されることを望む。そのような傲慢さに陥ってはいないか振り返ってみるべきだ。
いつの間にか医療改革のメスを握っている政府は、毎日のように大病院の専門医の拡充、国立大医学部の教授の補充、患者の偏りを防ぐための医療資源の効率的な運用などを次々と打ち出している。政略的な意図があるのかを疑う前に、医師たちも積極的に意見を表明してはどうか。週80~100時間勤務で過重な業務を抱えている専攻医が、政府の専門医拡充方針に沈黙しているだけなのは納得し難い。政府も医師も「必要なところに医師が配分されなければならない」という原則には同意している。小児青少年科のような必須医療の専攻医に研修費として月に100万ウォンを与えるというような場当たり的な政府の対策だけでは、非給与診療で簡単に多くを稼ぐ開院医への流れは変えられないだろう。もはや意地悪はやめるべきだ。さもないと、専攻の集団行動は将来の利権が脅かされるという懸念から行われているという疑念を払拭することはできない。
ファンボ・ヨン|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )