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[コラム]「経済運営は保守の方がうまい」は今やたわごと=韓国

登録:2024-03-01 00:46 修正:2024-03-01 10:29
チョン・ナムグ|論説委員
2月28日、ソウル市内のある大規模スーパーに1個4990ウォンのリンゴが並んでいる/聯合ニュース

 「モクレンの咲く春がやって来れば、金浦(キンポ)はソウルになれるでしょう」

 与党「国民の力」のハン・ドンフン非常対策委員長は2月3日に金浦市を訪問した際、このように述べた。「ソウルになれるだろう」として断定はしていないものの、「なることもありうるだろう」と言って大きな抜け道を作ってもいない。要するに、「4月10日の総選挙でみなさんが国民の力の候補に入れて過半数の議席を確保させてくれれば、特別法を可決して金浦市をソウル市に編入する」という意味だと私は読み取った。

 住民投票を経て、京畿道とソウル市の議会の同意を得て金浦市をソウル市に編入するいうのは、不可能に思える。京畿道民やソウル市民の60%以上が反対しているからだ。だが、国民の力が総選挙で過半数の議席を獲得すれば、それを迂回して特別法でソウルへの編入を押し通すだろうか。私はしないと思う。選挙が終わったら、世論の激しい逆風を受けながら推進するほどの実益はなくなるからだ。だとすれば、「モクレンの花が散るころにハン・ドンフン委員長が詐欺師と呼ばれる事態」を避けるためには、むしろ国民の力は過半数の議席を獲得してはならないことになるだろう。

 与党である国民の力が、総選挙選略として人々の心に不動産の開発利益に対する期待心理を膨らませている。国民の力は、昨年10月30日に金浦市のソウルへの編入を党の方針として推進すると表明した後に、金浦市以外のソウル周辺都市のソウルへの編入も口にしている。ハン・ドンフン委員長は金浦訪問の前日に九里市(クリシ)を訪れ、ソウル編入を迅速に推進すると約束している。

 政府は派手に太鼓をたたきながら、その後を追っている。2月5日には第2期首都圏広域急行鉄道(GTX)の推進計画を明らかにしており、21日には原則的に開発が不可能だった環境評価1~2等級の土地も含めて非首都圏のグリーンベルトを積極的に解除すると発表している。26日には、汝矣島(ヨイド)の面積の117倍に達する計339平方キロの土地に対する軍事保護区域の指定を解除すると発表している。

 不動産には麻薬のような成分が含まれている。文学評論家の故キム・ヒョンが月刊誌「根の深い木」1978年9月号に寄稿した一節が改めて思い出される。「マンション価格が動く時期には、すべてのマンションの住民が重曹をたっぷり使った小麦のパンのように膨らむ。マンション団地は人を良い塩梅におかしくさせるのに天才的な能力を発揮するのだ」

 国民の力の前身であるハンナラ党は2008年4月の総選挙の際、ソウル各地でニュータウン指定を公約し、大きな利益を得た。後に大きな後遺症を残したが、ソウルの全48議席中40議席を獲得し、過半数を確保した。政府と国民の力の指導部は、その思い出が忘れられないようだ。今回も人々の胸に火が付き、票が動くだろうか。期待する人がいないわけではないが、市場が浮つくほどではなさそうだ。住宅市場の流れが悪く、激増した家計負債と高金利のせいで人々が逆にいらだっているからだろう。

 にもかかわらず私が「悲しい」と思うのは、この国を率いる政府と与党の政策能力はこの程度なのかと感じるからだ。第2期首都圏広域急行鉄道、グリーンベルトの解除、軍事保護区域の解除の方針は、すべて尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が自ら主宰したいわゆる「民生討論会」で発表された。それが当面する「民生の現実」にとって何の意味があるのか。不動産開発で景気を立て直し、その恩恵が庶民にも回るようにするという話だとしたら、どれほど古臭い発想だろうか。

 昨年、韓国経済は1.4%の成長にとどまった。消費者物価は3.6%も上昇した。昨年1~11月の常用労働者を1人以上抱える事業体の1人当たりの月平均実質賃金は、2022年に比べて0.9%減少した。家計に対する信用貸しは大幅に減ったが、住宅担保貸付が45兆ウォンも増えたことで家計負債総額は10兆ウォン増加し、延滞率は上昇し続けている。個人再生の申請件数は12万1017件で、2022年に比べ34.5%増え、2014年の統計開始以降で最も多かった。しかし、民生対策に政府の影は見えなかった。税収が56兆4000億ウォンも減ったため、国会の承認を受けて使うことになっていた金さえ使えなかったからだ。

 今年は少しは何かがましになるだろうか。韓国銀行は22日、今年の経済成長率見通しを2.1%と提示した際に、民間消費の増加率は1.6%にとどまるだろうと述べた。昨年11月の1.9%という見通しからの大幅な下方修正だ。民生の状況を示す最重要指標であるにもかかわらず、政府は努めて無視している。家、土地、株を持つ人々の心に火をつけることにばかり力を注いでいる。悲しいことだ。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ナムグ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1130411.html韓国語原文入力:2024-02-29 16:04
訳D.K

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