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[寄稿]自ら失敗しようとがんばる尹大統領

登録:2024-01-31 01:13 修正:2024-01-31 11:14
カン・ジュンマン|全北大学新聞放送学科名誉教授
昨年11月11日(現地時間)、オランダを国賓訪問した尹錫悦大統領と妻のキム・ゴンヒ女史がアムステルダムのスキポール空港に到着し、専用機の空軍1号機を降りて車に乗り込んだ様子/聯合ニュース

 先日、大統領尹錫悦(ユン・ソクヨル)と与党「国民の力」の非常対策委員長のハン・ドンフンとの間で起きた3日間の衝突は、3つの点で驚かされた。

 第1に、ハン・ドンフンが非常対策委員長職を受諾した際に「キム・ゴンヒ・リスク」に関する事前合意がなかったこと。与党がハン・ドンフンを委員長に持ち上げようと思っているのなら、ハン・ドンフンは尹錫悦の「譲歩」を得ることを条件に非常対策委員長職を受諾するのが常識ではないのか。だから「八百長花札」、「約束組み手」と言われたのだろうが、これは反尹錫悦派の政略的な見解であるという限界がある。韓国政治はしばしば常識を超えることもあるから、ここでは衝突が本物であったことを前提にしよう。

 第2に、尹錫悦氏が自分が大統領になれた理由を忘れて裏切ったこと。彼は文在寅(ムン・ジェイン)政権の「身内に甘く他人に厳しい」態度に憤っていた「公正と常識」の化身ではなかったか。大統領室はキム・ゴンヒ女史の「ブランドバック授受疑惑」について、「罠を作って窮地に追い込むという計画の下で進められたというのが事件の本質」だと主張する。一理ある指摘であるとはいえ、問題の核心は、尹大統領には自分の妻への「政治工作」に対する怒りがあるだけで、様々な面を総合的に見て判断する国民は眼中にないということだ。

 第3に、尹大統領は民意に壁を築き、何が究極的に自分にとって有利なのかを把握できないという判断不能の状態にある、ということ。これまで「キム・ゴンヒ・リスク」が政権の致命的な急所となるまで膨らませてしまったのも、まさにそのような理由からだろう。妻をあがめる純愛物語を完成させることが大統領になった理由ではなかろうが、それが彼にとっては民意の支持を得ることよりも重要になっているということが明白になった。

 私たち全員が理性的な判断を下すためには、いわゆる「119対29」事態が起きた昨年11月29日に立ち戻ってみるのがよいだろう。フランスのパリで開かれた国際博覧会事務局の総会で、サウジのリヤドが119カ国(72%)の票を得て、29票(18%)にとどまった釜山(プサン)を抑えて2030年の万博開催地に決まった日だ。この事件は国民に大きな衝撃を与えた。単に敗北したからではなく、「119対29」という4倍の差が問題だった。

 国内での宣伝があまりにも騒がしかったため、何となく釜山の勝利を期待した国民は多かった。ところが、ぎりぎりで負けたわけでもなく、完全な惨敗だったのだから、政権に対する信頼は地に落ちた。野党の重鎮、ユ・インテがその衝撃をうまく表現した。「韓国の外交部も、国家情報院も、また財界も、分かっていながら大統領の顔色をうかがって言えなかったのか分からないが、国民が感じるのは『おいおい、こんな政府を信じて我々はどのように生きていけるんだ』という絶望のようなものがあったはずだ」

尹錫悦大統領が25日、京畿道議政府市の議政府第一市場を訪れおでんを食べている/聯合ニュース

 「キム・ゴンヒ・リスク」も同様だ。そのリスクそのものが重要なのではない。これは、大統領が何を最も重要だと考えているかという、国政運営の姿勢に関する信頼の問題だ。「ブランドバック政治工作」は憤るに値する。「盗撮」映像を1年以上寝かせておいて、総選挙の局面で暴露したのが悪意ある工作だということを、国民は知らないわけではない。国民は、国政運営の基本システムが傷つけられたことと、あれほど強調してきた公正と常識を自ら裏切る大統領の態度に怒っているのだ。

 一度は工作にやられることもありうる。しかし二度やられたら、それは失敗ではなく癖だ。2年前、大統領選挙を50日あまり後に控え、「キム・ゴンヒ7時間通話録音」が公開された事件を覚えているだろうか。当時、尹錫悦陣営は「政治工作」だとして大騒ぎしたが、一部のメディアは「尹候補側は政治感覚の劣る配偶者に対して適切な助言ができていなかったのではないかと指摘されている」と報じた。

 しかし問題は、キム・ゴンヒが自分の政治感覚は優れていると信じており、夫が大統領になった暁にはそれを積極的に活用しようと努めてきたということだ。さらに大きな問題は、それを止めるべき夫が妻のそのような試みを事実上支持し、苦言を呈する周囲の人物に火のように怒るなど、聖域化することによって「キム・ゴンヒ・リスク」を膨らませる後援者役を果たしてきたということだ。そのことに対する国民の怒りを理解できないというのか。

 今、この国の政治は相手を殺さなければ生きていけない戦争であるかのように壊れていっているが、それは決して政治ではない。与野党を問わず、どの政党であれ改革を断行して成功しなければならない。誰がより大きな改革と成功を成し遂げたかという善意の競争を繰り広げなければならない。だが、政権与党が公私の区分のできない大統領の「妻への愛」のせいで激しい内紛に直面することになれば、正常な国政運営は難しくなるうえ、政治は民生からさらに遠ざかり、自分たち同士の争いの場へと成り下がってしまう。遠くを見渡してみよう。尹錫悦には、自ら失敗しようとがんばる大統領にはならないでほしい。

//ハンギョレ新聞社

カン・ジュンマン|全北大学新聞放送学科名誉教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1126270.html韓国語原文入力:2024-01-29 09:00
訳D.K

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