本文に移動

[社説]何かにつけて企業トップを付き添わせるのが「市場経済」なのか

登録:2023-12-09 00:24 修正:2023-12-09 08:36
尹錫悦大統領が6日、釜山中区のカントン市場で、サムスン電子のイ・ジェヨン会長ら企業のトップとトッポッキなどを試食している/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が6日、釜山(プサン)で大規模な緊急懇談会を開いた。来年の総選挙を前に、2030年の万国博覧会(万博)誘致の失敗で大きく失望した釜山の民意をなだめるために急きょ実施した政治的イベントだ。直接謝罪してからわずか1週間後にあたふたと場を設け、大企業のトップを大勢呼んだ。「南部圏の拠点都市として育成」など、事実上の地域に向けた総選挙公約を提示する場に、企業家たちを付き添い役として立たせたのだ。常識を逸脱した行いだ。

 尹大統領はこの日、釜山港国際展示コンベンションセンターで「釜山市民の夢と挑戦」という名の懇談会を開催し、「地域の懸案はさらに完璧に推進する」と約束した。万博誘致合戦での惨敗後、現地の民意の動揺で支持率が下落し、総選挙に対する懸念が高まったことを受け、急きょ対応に乗り出したのだ。企画財政部などの主要省庁の長官、与党「国民の力」のキム・ギヒョン代表、釜山出身の与党議員などの出席者の面々から、このイベントの趣旨が分かる。大統領は加徳島(カドクト)新空港の早期開港、韓国産業銀行の移転など、釜山の民意に合わせた地域開発公約を重ねて強調した。

 ところで、この場にはサムスン電子のイ・ジェヨン会長、LGグループのク・グァンモ会長など、主な大企業のトップたちが呼ばれていた。果ては、イ会長などは「釜山の挑戦を私たち企業とサムスンも常に共にする」と述べた。企業のトップたちが総選挙を前に、政府与党の地域発展公約を後押しするような格好となった。前例のないことだ。尹大統領は懇談会の終了後、釜山の2つの伝統市場を回ってトッポッキの試食など「ショーイベント」を繰り広げた際にも、彼らを屏風(びょうぶ)のように立たせた。尹大統領が強調してきた「自由」と「市場経済」とはこのようなものなのか。

 政府は彼ら大企業のトップを万博誘致広報合戦にこぞって動員している。それだけではない。「毎月1回」と言われるほど頻繁な大統領の外遊のたびに、秘書のように同行させている。今回の釜山でのイベントに参加した大企業のトップは、11日からの大統領のオランダ訪問にもほとんどが同行する。みっともないだけでなく、年末年始を控えてよりいっそう忙しい企業にとっては「官製の迷惑」以外の何物でもない。

 韓国現代史において、政治と大企業の過度な癒着は常に不正腐敗へとつながった。警戒すべきだ。かといって、政府と大企業は親しくするなということではない。企業の独立性と自律性は尊重し、70~80年代のようなむやみな動員は控えるべきだ。釜山での懇談会の前日の5日、チェ・サンモク経済副首相候補は「市場と民間中心の躍動経済」を語った。その言葉どおりに実践すればよいのだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1119510.html韓国語原文入力:2023-12-07 18:09
訳D.K

関連記事