最高裁は2日、2014年に起きたセウォル号沈没惨事の際に乗客の救助に失敗して業務上過失致死傷の疑いで起訴された海洋警察の指揮部の無罪を確定した。キム・ソッキュン元海洋警察庁長ら指揮部にとって人命被害の可能性は「分からなかった」というのがその理由だ。この判決により、惨事当日に現場へ救助に向かった海洋警察の「末端」幹部以外は、海洋警察指揮部の誰も責任を取らないこととなった。災害に直面した国民を救うべき国の責任は言葉で存在するに過ぎないのか。「災害惨事が発生しても国に責任を問うことはできなくなった」という遺族の叫びを前に、頭が上がらない。
最高裁2部(主審:イ・ドンウォン最高裁判事)は、海洋警察指揮部には当時の現場状況の報告がきちんと入っていなかったため、「人命被害の可能性は予測しがたかった」として無罪判決を下した一審、二審の判断を認めた。「業務上過失致死」は乗客の死が予見でき、それを回避する措置が存在したということが立証されなければならないが、検察が提出した証拠だけではその条件が満たされていない、というのがその趣旨だ。セウォル号の船長と船員たちが何の報告もせずに真っ先に脱出してしまったうえ、船舶の違法な増築と過積載で予想より早く沈没することがまったく予想できなかったため、乗客を救助できなかったということだ。
しかし遺族たちは、海洋警察指揮部が当時の状況を知らなかったからといって免罪符を与えるのではなく、なぜ状況を把握できなかったのか、その責任を問うべきだったのではないかと司法府に問うている。国に国民の命と財産を守ることを義務付けた憲法の精神に則り、たった1人の命であろうと救うために最善を尽くさなければならないのが国ではないか、という根本的な問いだ。今後、国がいかなる救助計画も立てず罪のない命が犠牲になったとしても責任は取らないという先例を残した、との指摘も重く迫ってくる。
今回の判決は、初期捜査の誤りにその原因が求められる。朴槿恵(パク・クネ)政権が救助失敗の責任についての捜査を妨害したため、検察と警察の合同捜査本部は2014年、キム・ギョンイル元海洋警察庁長のみを起訴することで捜査を終えた。キム元庁長ら11人の海洋警察指揮部は、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代のセウォル号惨事特別捜査団の発足後の再捜査を経て、2020年になってようやく起訴された。その間に海洋警察の関係者をはじめとする証人の陳述が変わるなど、証拠の確保には限界が伴わざるをえなかった。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の「梨泰院(イテウォン)惨事」についての検察の捜査も「上層部」に対する捜査が事実上中止されている。検察の首脳部はソウル警察庁のキム・グァンホ庁長の起訴決定を先送りしている。今回の判決を上層部に免罪符を与える言い訳にしてはならない。