地球の生物、地質、大気システムはもはや安全な状態ではない。それを一目で示す評価が先日、科学者たちによって発表された。デンマーク、ドイツ、スウェーデンなどの29人の研究者は「サイエンス・アドバンシス」に発表した論文で、「地球の限界」を示す9つの指標のうち6つが安全な水準を外れていると評価した(ハンギョレ9月15日付14面)。このような結果は、地球の限界という概念が初めて提案された2009年の評価時より悪化している。
韓国語では「地球危険限界線」と呼ばれるが、直訳すると「惑星境界(planetary boundaries)」だ。人類の生存に必要な地球システムの限界線(境界)を選定し、それを数値で評価した指標だ。スウェーデンのストックホルム・レジリエンス・センターが主導して開発したこれらの指標は、気候変動、生物多様性、海洋の酸性化、淡水、リンと窒素の循環、土地利用(森林破壊)、新たな化学物質、成層圏オゾン、エアロゾル(PM2.5など)の9つからなるが、今回の論文ではオゾン層とエアロゾル、海洋の酸性化を除く6つの指標に赤信号がともっている。
地球の限界は指標の境界として選定された値が任意の可能性があるという批判も受けたが、今は概して広く受け入れられている。地球という惑星の環境と気候危機を語る場では、地球の限界の図がよく登場する。何よりも地球を生物、地質、人類が相互作用する有限なシステムとして眺めていること、システムを維持する上で重要な指標を一度に扱っていることが長所だ。
学術検索サイトを検索してみると、2009年の最初の論文はこれまでに実に1万3900回あまりも引用されている。この論文の影響力がどれほど大きかったかを示す数値だ。またウィキペディアによると、2012年にパン・ギムン前国連事務総長が持続可能性について「気候変動に抗して闘うとともに、地球の限界を尊重すべき」だと述べて以来、この語は国連の様々な文書で使われている。
2009年以降、分析の枠組みには変化もあった。最初は安全、不確実、危険という3つの状態で各指標が評価されたが、今回の論文からは安全と危険の2つにまとめられたのだ。2009年には評価すべき資料が不十分だったため化学物質とエアロゾルの指標が空欄のままになっていたが、今回はこれまでの研究とデータを総合して初めて9つの指標がすべて評価された。
研究陣が言うように、これらの指標は産業化以降、特に1950年代以降は、大量生産と大量消費という人間の活動が地球システムに直に影響を及ぼす新たな地質時代、すなわち人新世に入っていることを示している。もちろん限界を超えたからといって、すぐに崖から落ちるわけではない。ある研究者は限界の意味をこのように説明する。「地球を私たちの体、地球の限界を血圧だと考えてみましょう。120/80の血圧は心臓まひを意味しているわけではありませんが、リスクは高まっているので、私たちは血圧を下げるよう努めなければなりません」。地球の健康管理にとって希望の持てる先例もある。「オゾン層の破壊は1990年代には限界を超えていましたが、(共に努力したおかげで)今は超えていません」
オ・チョルウ|ハンバッ大学講師(科学技術学) (お問い合わせ japan@hani.co.kr )