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台風が5週間後も消失しない…1400人死亡の「極端な気候」

登録:2023-08-02 05:55 修正:2023-08-02 08:42
[ハンギョレ21] 
2023年上半期、全世界における異常気象の決算
2023年7月18日、記録的な猛暑に見舞われているイタリア・ローマのポポロ広場で、市民が暑さを凌ぐために水に頭をつけている/ロイター

 どこもかしこも耐えがたいほど暑い。記録的な日照りに苦しめられたかと思うと、突然の豪雨で水害に見舞われる。「知能」でもあるかのように自ら延命する台風や、何カ月も続く山火事もある。2023年上半期、「極端な気象現象」が地球全域を襲い、威力を見せつけた。

■期間最長で7回発達した「殺人鬼サイクロン」

 2023年新年早々、米国は類例のない暑さだった。米国海洋大気庁(NOAA)は、2023年1月を「史上6番目に暑い1月」と規定した。アラスカとハワイを除く米国本土48州の平均気温は、例年に比べ1.78度高かった。コネチカット州やメイン州などの東海岸7州は、史上最も暑い1月だった。内陸地方ではトルネード(竜巻)の発生件数が、1950年以降では3回目となる100件超えとなった。毎日のように天気予報が主要ニュースとして扱われた。選挙前の世論調査と同じくらい、記録的な「誤報」が続出した。

 平均降水量は例年に比べ13.7ミリ多い72.4ミリを記録した。ジェット気流に乗って太平洋上空の暖かい空気が米国本土に押し寄せた。2022年下半期に記録的な日照りで苦しんだ西部カリフォルニア州は、1月に入って強風と豪雨をともなう嵐が10回も生じ、洪水や山崩れなどに悩まされた。

 2023年2月5日、インドネシアのバリ南部やオーストラリア北西部の広い海で、熱帯暴風雨(サイクロン)「フレディ」が発生した。インド洋を横断した「フレディ」は、2月末にマダガスカルを経てモザンビークに上陸し、勢力を失うかのようにみえた。しかし、突然方向を変えてインド洋に戻ったフレディは、水蒸気を大量に抱えてよりいっそう強力になり、3月11日にモザンビークに再上陸した後、マラウィに向け北上した。

 瞬間最大風速は時速220キロメートルを超えた。マラウィだけで1200人あまりが死亡するなど、アフリカ東南部5カ国であわせて1400人あまりが「フレディ」の横暴によって命を失った。「フレディ」は発生後5週間からさらに2日が経過した3月14日に消滅した。最もエネルギー量が多く、複数回(7回)発達し、最も長く生存したサイクロンとして記録された。

 4月にはアジアと地中海沿岸の多くの国で、異常な高温現象が観測された。バングラデシュ、インド、ラオス、タイなどの地では気温が45度まで急上昇した。スペイン南部のコルドバとモロッコ中部のマラケシュでは、気温が38.8度と41度を記録するなど、真夏の天気がしばらく続いた。

 5月に入ると、大西洋を越えたカナダでは異常気流が本格的に観測された。西部アルバータ州では100件以上の山火事が同時多発的に発生し、白く濁った煙が国境を越えたモンタナ州やワシントンなどの米国西北部一帯にまで広がり、現地の気象当局が大気汚染警報まで発令するに至った。カナダの山火事は6月に入り勢いを増し、7月17日時点であわせて4193件の山火事が発生し、1000万ヘクタール以上が消失した。韓国を含む国際社会の支援が次々と届いたが、カナダ消防当局は900件あまりの山火事を今もなお鎮火できずにいる。

■極端な気象現象による災害、3656件から6681件に

 同期間中、サイクロン「モカ」が襲ったミャンマーとパキスタンでは約数百人が死亡し、数十万人の被災者が生じた。発表主体によって被害規模の違いは大きいが、死亡者の相当数がミャンマーから追い出されたロヒンギャ難民だという点には、意見の相違がないようにみえる。5月中旬には、台風2号(マーワー)が強い勢力で米国領グアムを襲い、韓国人観光客3000人あまりが数日にわたり電気も止まった現地で足止めをくらうこともあった。

 人口2億人あまりを抱え、世界最大の行政区域と呼ばれるインド北部のウッタル・プラデーシュ州では、6月に入り異常な高温現象によって死者が続出した。最高で43.5度を記録した高温現象が続き、ウッタル・プラデーシュ州と隣接するビハール州だけで、約170人が熱射病で命を失った。短期間に患者が急増したため、現地の病院では病床が不足する事態に直面した。

 「最近生まれた子どもたちは、2100年まで生存するとすれば、極端な気象現象を現在に比べ4倍も多く経験することになるだろう。地球の気温が現在より0.1~0.2度だけ高くなったとしても、洪水・台風・日照り・異常な高温現象などが何倍も増えることになりうる」

 国連の気候変動政府間パネル(IPCC)は、2022年3月に出した報告書で、気候変動にともなう極端な気象現象についてこのように警告した。昨日今日の話ではない。指標で確認されている。国連防災機関(UNDRR)が「緊急事態データベース」(EM-DAT)を分析し、2020年10月に出した報告書が代表的だ。

 当時の報告書では、UNDRRは資料をもとに死亡者10人以上、被害者100人以上、非常事態宣言など3種類の基準を満たす災害を20年単位に分けて分析した。1980~1999年の間でこの基準を満たす災害は合計4212件だった。これによって119万人が命を失い、約32億5000万人が各種の被害を受け、合計1兆6300億ドルの経済損失をこうむった。これらの災害のうち、3656件が極端な気象現象と関係があった。

 その後20年で指標はよりいっそう悪化した。2000~2019年に3種類の基準を満たした災害は合計7348件で、前の20年間に比べ3000件以上増えた。死亡者は123万人、被害者は42億人と規模も多くなっている。経済的損失も、前の20年間より1兆3000億ドルほど増えた2兆9700億ドルに達した。このうち極端な気象現象に関連した災害は6681件だった。気候変動に対する人類の対応が遅れたことで、極端な気象現象の回数も増え、強度はよりいっそう強まったという意味だ。

■気候変動への対応に消極的な「利権カルテル」

 「気候変動の状況を常にあるものと認識して対処するべきであり、異常現象だから仕方ないといった認識は、完全に改めなければならない」。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は7月17日、政府ソウル庁舎で開かれた集中豪雨に対処するための中央災害安全対策本部会議でそう述べた。極端な気象現象が「日常化」したことを強調したのだ。ならば、補助金などではなく、気候変動への対応に消極的な「利権カルテル」を根絶することに集中しなければならない。

チョン・インファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1102546.html韓国語原文入力:2023-08-01 22:17
訳M.S

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