イ・ドングァン放送通信委員長が先の大統領選挙のときのニュース打破の「キム・マンベインタビュー」報道について、「国の根幹を揺るがす悪意的思考を呼び起こす」報道だとして、「当該マスコミの存廃自体を根本的に再検討する」と述べた。また、インタビューの内容を後続報道したマスコミに対しても、「凶器」などと述べて責任を問うと言った。これに先立って、与党「国民の力」のキム・ギヒョン代表は同報道に対して「死刑に処すべき国家反逆罪」と激しく非難した。取材・報道の瑕疵を指摘し、大統領選候補者に対する正当な検証報道を「死刑」「廃刊」などの暴言で脅すとは、「自由民主主義」政府なのか疑うほどだ。
イ委員長は8日、国会の対政府質問で「キム・マンベインタビュー」関連報道に対して「(大統領選挙の)当選者を変えかねないほどの衝撃を与えたため、一般的フェイクニュースとは次元が違う」と述べた。実に荒唐無稽な詭弁だ。当時マスコミが提起した問題の本質は、2011年の釜山貯蓄銀行不正融資捜査の時、最高検察庁中央捜査部が大庄洞(テジャンドン)事業関連融資ブローカーを調査しながらなぜ処罰しなかったのかにある。このブローカーに「コーヒーを淹れてあげた検事」が誰だったかは枝葉に過ぎない。当時の主任検事は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)最高検察庁中央捜査第2課長であり、彼と格別な関係にあったパク・ヨンス元特別検事が大庄洞一味の弁護士だった。有力な大統領選候補者に対する検証は、マスコミとして当然ではないか。それでも「コーヒーを淹れてあげた検事」は尹大統領ではなかったという些細な誤りを挙げて、廃刊を口にし脅迫するとは、イ委員長はどこの独裁国家で暮らしてきたのか。
問題は、政権与党の代表と放送通信委員長の暴言が単なる脅しに止まらない点だ。尹大統領は外遊中の8日、放送・通信内容を審議・制裁する放送通信審議委員会(放審委)のチョン・ミニョン委員を解職し、与党優位の構図に変えた。さらに、与党のリュ・ヒリム委員を互選で委員長にさせた。彼は言論労組が2017年に発表した「言論の公正性と独立性を侵害した言論人50人」に上がった人物だ。また検察は、検事10人余りの規模で「大統領選挙介入世論操作事件特別捜査チーム」なるものを構成し全方位捜査に乗り出し、国民の力は「キム・マンベインタビュー」報道と関連して、ニュース打破と文化放送(MBC)の記者たちを検察に告発した。政府・与党がまるで軍事作戦のように一糸乱れずに批判的マスコミの締め付けと威嚇に乗り出している。庶民は高物価・高金利に「暮らしが厳しい」と叫び声をあげているが、政府・与党の耳には全く聞こえないようだ。