朝鮮半島をめぐる覇権競争の様相が急変している。米国と中国は外交安保と経済産業のみならず、技術領域にまで全方位的に戦線を広げ、周辺国に苛酷な選択を強要している。「価値観外交」を掲げた尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が親米に急旋回し地政学的な破裂音が激しくなる今、米国が主導する金融資本主義の実状に対して一度立ち止まって考えさせる本が出た。
ウォール街の経済アナリストを経て、大学で経済史を研究してきた米ミズーリ・カンザスシティ大学のマイケル・ハドソン名誉教授は、著書『文明の運命(The Destiny of Civilization )』で、米国を中心に構築された金融資本主義がどのように上位1%を除く中産階級と労働者階級の利益を搾取しているのか、その作動原理を暴いている。マネーの流れを追って金融経済の作動原理を深く体感したからこそ可能な洞察だ。
著者が提示する金融資本主義の核心は「負債デフレーション」という表現に要約される。不動産の私有化とこれを基盤とした金融融資は、実体経済の主体が労働所得では到底まかなえない金融資本主義の「地代」、金利の牙城を強固に構築した。また、医療・教育・介護など当然公共が担うべき必須領域を民営化に追い込み、経済主体が自立する前から金融資本主義に捕らえられるようにしているということだ。このような分析は、中世封建制が崩れた後に欧州を支配した地主貴族たちが、どのように金融界のトップランナーに変貌したのかという「経済史」を加味した考証を通じて説得力をもたせている。
著者が指摘するように「米国が時には暴力を伴う積極的外交政策で他国に負債と貿易依存を押し付けているのが、今日の新冷戦の本質」だ。危険な朝鮮半島情勢に対する指針書が必要な方は、夏休みに通読に挑戦してみる価値のある本だ。