米国のブリンケン国務長官が訪中する直前、中国の習近平国家主席は16日、北京でマイクロソフト(MS)の共同創業者、ビル・ゲイツ氏に会った。習主席が海外の企業家と単独で面会するのは非常に珍しいことである上、ゲイツ氏を「今年北京で会った初の米国の友人」だと呼んで歓待したことで、さらに注目を集めた。
最近中国を訪問したテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)には合わなかった習主席がゲイツ氏とは単独面会した理由も注目に値する。マスク氏は上海に大規模のテスラ電気自動車(EV)工場を運営しており、「ゼロコロナ」政策や台湾問題などでも中国政府の政策を支持する発言を続けてきた。マスク氏は先月末から今月初めまで中国を訪問した際、丁薛祥副首相をはじめ外交・産業・商務相らに相次いで会ったが、習近平主席との面会は実現しなかった。アップルのティム・クックCEO、ウォールストリート金融資本を代表するJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOなどが最近相次いで中国を訪問したが、習近平主席に会ったのはゲイツ氏ただ一人だ。
この面会が実現した背景には、ゲイツ氏が1990年代から中国と事業をしてきた「古い友人(老朋友)」である点も働いたが、なにより中国の戦略的思惑がある。米国政府の「対中国先端技術包囲網」を突破するために米国企業を呼び込んでいる習近平主席が、特に人工知能(AI)技術に注目しているからだ。EVとバッテリーは中国が世界で最もリードしている分野であるため、テスラの技術は中国にとって切実ではない。しかし、ゲイツ氏が投資し開発したChatGPTなどのAI技術を導入することは、中国の未来産業と軍事力の側面においても重要だ。
「台湾統一」を中国夢の中核として強調してきた習主席が、マスク氏が運営する衛星インターネット網「スターリンク」について懸念しているという点も原因だと、中国の専門家たちは語る。中国はロシアのウクライナ侵攻後、状況を注視しながら台湾で似たような状況が起きる場合に備えた研究を行ってきた。特に、ロシアが侵攻初期にウクライナのインターネット網を破壊し速やかに勝利を収めるものとみられたが、スターリンクの衛星インターネット網を活用したウクライナが戦場と世論戦で善戦してきた点に注目した。スターリンクのような衛星インターネット網が、台湾に対する中国の軍事作戦や封鎖戦略に重大な障害物になりうると警戒している中国人民解放軍は、「GW」というコード名で独自の衛星インターネット網の構築に取り組み、高度700キロメートルに衛星を打ち上げ、高度約550キロメートルで作動するスターリンク衛星の作動を有事の際に遮断することを念頭に置いている。「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」による最近の報道だ。
ブリンケン米国務長官の訪中で、米中両国は「対立の中での対話」局面に入っているが、台湾と先端技術競争など敏感な問題に対する不信感と緊張、そして競争はこれからも続くだろう。ゲイツ氏やマスク氏のようなビッグテック企業家たちは、米中競争の中で最大限の利益を確保しようとしており、技術とネットワークを掌握した彼らの「選択」が国際秩序の未来を変える可能性がある。