6月21日、日本の通常国会が閉幕した。この国会では、これまでの日本の針路を大きく転換するような重要な法律が成立した。防衛費を大幅に増やすための財源確保について、防衛財源確保法が制定された。また、原発再稼働を進める政策転換も、グリーン・トランスフォーメーションの名のもとに決定された。これらの政策の危険性について、言うべきことは多いが、今回は少子化対策と対外国人政策について、考えてみたい。
「異次元の」少子化対策は、岸田文雄首相の最大の売り物であり、国会でも児童手当の給付拡大などが華々しく打ち出されたが、財源に関する議論は先送りされた。対外国人政策については、入国管理法改正案が成立し、日本に対する難民認定申請が厳しく制約されることとなった。この2つの問題は、実はつながっている。2つをつなぐのが、日本社会の急速な人口減少という現実である。
4月末、厚生労働省付属の社会保障人口問題研究所は、2070年の人口推計を発表した。それによれば、2020年の1億2600万人余りの人口が、2070年には8700万人に減る。また、その時には日本に定住する外国人人口の割合が全人口の10%に達する。65歳以上の高齢人口は38.7%の3400万人、生産年齢人口は現在の7500万人から4500万人に減る。政府は、少子化の危機については30年前から様々な対策を取ってきたと主張するのだが、成果は現れていない。残念ながら、この推計は当たる可能性が高い。
ただし、この推計にはあえて現実離れした楽観が盛り込まれている。それは、日本の人口のうち10%が外国人という予想である。日本が経済大国である間は、東南アジアなどの人々が技能実習生という名目で、事実上外国人労働力として日本の農業、水産業や介護を支えてくれた。しかし、これから経済的停滞が進み、日本よりも多く稼げる国がアジアに増えていけば、どれだけの外国人が日本に来るのだろうか。人口の10%を外国人が占めなければならないとすれば、日本人と外国出身者が共存する法的、社会的仕組みを整備することが急務なのだが、政府にはそのような認識がない。
その象徴が、入管法改正問題であった。日本は長年、難民認定を極端に抑制してきた。2021年の難民認定率を比べると、英国は約63%(認定数1万3703件)、ドイツは約25%(3万8918件)、米国は約32%(2万590件)であるのに対して、日本は0.67%(74件)である。そして、今回の法改正によって、難民認定申請は原則として2回に制限され、認定されなかった者は本国に送還されることになる。日本に住む外国出身者や人権擁護に携わる法律家がこれに反対したのは当然であった。
純粋な日本人が日本社会を構成するというドグマが、21世紀の日本の生存を脅かすことになるかもしれない。このドグマは保守派のアイデンティティである。そこで言う純粋な日本人とは、先祖代々日本に住み、男尊女卑の「伝統的」家族の一員となり、同性愛などもってのほかと考えるような人間である。この国会では、LGBTへの理解増進を図る法律も成立したが、マイノリティに対する差別を禁止する内容とは程遠い、無意味な立法であった。この法律を骨抜きにしたのも、自民党の保守派であった。LGBTの権利尊重は、人権の問題であるだけでなく、独創性を持った人間がさまざまな分野で活躍することを支えるという点で、社会、経済の活性化にもつながるのである。日本の保守派は、国を愛するといいながら、純粋な日本人という虚像を抱いて、日本社会消滅の道を進もうとする人々である。
1つの希望は、政治に無関心と言われる若い世代の人々が、入管法改正に反対する多様な声を上げたことである。彼ら、彼女らは、様々な人間と日本社会を構成するという感性を持っている。そして、この人々は50年後も日本社会を支える。ならば、日本社会のメンバーをどのように規定するかという問題は、若い人々に決めてもらうべきだと思う。
山口二郎|法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)