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[山口二郎コラム] 広島G7サミットの成果と日韓関係

登録:2023-05-29 09:07 修正:2023-05-29 09:18
G7サミットにオブザーバー資格で参加し日本を訪問した尹錫悦大統領とキム・ゴンヒ夫人、岸田文雄首相と裕子夫人が21日、広島の平和記念公園内の韓国人原爆犠牲者慰霊碑に献花している=広島/聯合ニュース

 岸田文雄首相と尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、日韓関係の修復を急いで、一定の成果を挙げている。岸田政権のこの姿勢を、日本の世論も支持している。重要な隣国でありながら、これまでのような険悪な関係が異常だったのであり、いろいろと限界はあるものの、関係改善は私もよいことだと思う。

 5月19日から開かれたG7広島サミットの成果については、日本国内で様々な評価がある。核兵器を保有する大国のリーダーが集まったために、核なき世界という言葉が躍るだけで、具体的な核軍縮に向けた行動計画はなかった。この点を、地元の被爆者団体の人々が批判するのもやむをえないだろう。しかし、世界の首脳が原爆による被害の一端を知る機会を得たことには、意味があるとも思う。これから世界の指導者に、あなたは広島で何を見て、何を感じたのか、問い続けなければならない。

 また、岸田首相と尹大統領が韓国人被爆者の慰霊碑を参拝したことには、大きな意味がある。なぜ、多くの朝鮮半島出身者が広島で被爆したのか。それは、日本による植民地支配がもたらした犠牲であった。広島は、日清戦争以来、日本がアジアに侵出する際の拠点であり、軍需物資の集積地であった。太平洋戦争中も、朝鮮半島から多くの人々が連れてこられ、軍需工場で働かされていた。

 日本人は、被爆者の中に多くの朝鮮半島出身者が含まれていたことに関心を持ってこなかった。徴用工の補償問題が、韓国側の政治判断によって一応決着を見たことで、日本人はますます日韓の間にある過去の問題について、関心をなくしていこうとしている。しかし、無関心のままでは、未来志向の友好関係を作り出すことはできない。

 サミットの中で、岸田首相は、「法の支配」や「自由で開かれた国際秩序」という言葉を頻繁に使い、ロシアや中国に対抗する西側諸国の結束を演出した。当面、ロシアを非難し、ウクライナを支援することは必要である。しかし、法の支配や自由という普遍的な価値が、ロシアや中国を非難するための政治的道具になったことには、大きな違和感を覚えた。日本の内側に、法の支配や自由があるかと問われれば、まったくないとは言わないが、法を無視した恣意的な支配や自由に対する抑圧があると答えざるを得ない。

 政府、与党が民間のテレビ局に対して、公平中立の名のもとに政府批判を避けるよう圧力をかけていた様子が、数か月前の国会審議で明らかにされた。あるいは旧統一教会の信者の子が安倍元首相を銃撃した事件の背後には、旧統一教会が信者から巨額の献金を巻き上げて信者の生活を破綻させたことに対する恨みと、その旧統一教会と自民党の保守派の政治家が親密な関係を持っていたことが明らかになった。しかし、旧統一教会による犯罪的な行為が放置されてきたことに政治家の関与があったのではないかという疑念は解決されていない。ことほど左様に、日本の指導的政治家は、法の支配や人間の自由を守ることについて、無関心である。

 法の支配や自由という価値は、日韓関係にも当てはめるべきである。現代の世界では、旧宗主国による旧植民地に対する抑圧や、多数派による少数民族への圧政について、抑圧された側の権利や尊厳を守るために、歴史をさかのぼって謝罪、補償するという事例が多くの国で続いている。アメリカにおける日系人に対する差別への謝罪もその一例である。

 岸田首相が法の支配と自由という普遍的価値を擁護する世界的なリーダーになりたいのであれば、韓国や朝鮮半島との関係においても、人権の尊重、個人の尊厳の擁護のために行動し、メッセージを出し続けなければならない。過去の抑圧について謝罪し、常に差別を許さないという決意を、自分の言葉で語らなければならない。

//ハンギョレ新聞社

山口二郎|法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1093626.html韓国語記事入力:2023-05-29 02:35

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