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[社説]福島第一原発の汚染水に対する憂慮を怪談扱いする韓国政府与党

登録:2023-05-29 03:11 修正:2023-05-29 09:09
福島汚染水視察団のユ・グクヒ団長が26日午後、仁川国際空港に帰国し、取材陣の質問に答えている/聯合ニュース

 韓国与党「国民の力」が福島第一原発の汚染水の海洋放出に反対する野党を「怪談扇動」と非難している。政府の原発汚染水視察団の26日の帰国後、野党が「日本が見せたいものだけを視察した結果では、国民の不安は解消できない」と批判したことに対し、「むしろ国民の不安をあおる」と反論したのだ。いくら野党の政治攻勢に押されないことを意図したものであっても、政権与党が国民の安全に対する懸念を怪談だとみなすのは行き過ぎだ。

 視察団は23~24日の2日間にわたり、福島第一原発の現場点検で、多核種除去設備(ALPS)で処理された汚染水と、トリチウム(三重水素)を希釈する設備などを視察したと明らかにした。しかし、東京電力の示す設備が正常に作動しているかどうかを確認するにとどまった。韓国の専門家たちが独自に試料採取を行うなどの活動は全くできなかった。野党の指摘どおり「日本政府が見せたいものだけを見てきた」わけだ。だからこそ、視察団は日本の7月の汚染水放出計画の単なる「付き添い人」だと指摘されるのではないか。また、来月に予定されている国際原子力機関(IAEA)の報告書発表後に最終評価を発表すると視察団が言っていることに対しても、無責任だとの批判の声があがっている。政府は先制的な対応を放棄し、IAEAの「放出承認」にこっそり便乗しようとしているのではないかということだ。

 国民の大多数は福島第一原発の汚染水放出に反対している。環境運動連合が19日から4日間わたり1000人の成人に対して実施したアンケート調査では、反対意見を表明した回答者が85.4%に達した。「福島第一原発の汚染水を放出しても安全に問題はない」との日本政府の主張に対しては、79%が「信頼していない」と答えた。韓国政府の対応についても、64.7%が「間違っている」と評価した。にもかかわらず国民の力は「主要7カ国(G7)はIAEAによる『汚染水放出は問題はない』との判断を尊重するという合意文を発表した」ということばかりを繰り返し、汚染水放出に対する憂慮を怪談におとしめている。

 韓国政府が、納得できるような説明と情報を提供せずに日本の汚染水放出に協力的な態度を示してばかりいるからこそ、国民は不安を感じているのだ。福島第一原発の汚染水の放出が始まれば、その期間はあと30年になるか、50年になるか分からない。それより長い期間にわたって放出されることもありうる。放出された汚染水が後代に及ぼす影響を心配するのは当然である。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1093620.html韓国語原文入力:2023-05-28 18:10
訳D.K

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