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[コラム]対日外交、金大中の道と尹錫悦の道、そして保守の特権

登録:2023-03-28 04:28 修正:2023-03-28 08:24
南北協力のための「金大中-小渕宣言」 
尹政権の対日外交は軍事協力に焦点
尹錫悦大統領が21日、ソウル龍山の大統領室庁舎で国務会議を主宰している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権と与党「国民の力」が屈辱的な対日外交を正当化するため、伝家の宝刀のように持ち出すものがある。1998年10月に発表された「金大中(キム・デジュン)-小渕宣言」がまさにそれだ。特に尹大統領は「浮き沈みを繰り返してきた韓日関係の新たな地平を切り開いたのは1998年の金大中大統領だった」とし、自身も金元大統領の歴史的決断から学んだと強調する。だが、金大中(DJ)元大統領は歴史を「直視」した一方、尹大統領は歴史を「無視」しているという根本的な違いがある。

 未来の道にも大きな違いがある。金元大統領は、朝鮮半島の冷戦構造の解体を対外政策の最重要目標とした。そのためには南北の和解協力を推進するとともに、米国と日本も北朝鮮と国交を結び、朝鮮半島の交差承認構図を完成させることが必要不可欠だと考えた。だから金大中政権は、韓米日の対北朝鮮「外交政策」の協力を追求した。いっぽう尹錫悦政権は、南北関係は後回しにし、韓米日「軍事」協力に余念がない。金政権が日本の軍事大国化の動きに強いけん制球を投じた一方、尹政権はそれを歓迎しているのも大きな違いだ。

 もちろん、北朝鮮の核問題が過去とは大きく異なる。尹錫悦政権も韓日および韓米日軍事協力の必要性を強調し、その主な理由を「北朝鮮の核の高度化」に求めている。しかし、金大中政権初期にも朝鮮半島内外の状況は決して容易なものではなかった。金氏が大統領に就任する時期は「北朝鮮崩壊論」が猛威を振るっており、米国の対北朝鮮政策もそれに焦点が当てられていた。また1998年8月には北朝鮮の金倉里(クムチャンリ)核施設疑惑が浮上し、最初の3段ロケットの発射もあった。「テポドンミサイル・ショック」に陥った日本は、北朝鮮に対する軽水炉分担金についての署名を取り消し、北朝鮮に対する食糧支援と日朝国交正常化交渉も中止した。金政権はエンジンもかけられずにいた朝鮮半島平和プロセスを生かすため、米国と日本に対する厳しい外交戦に乗り出した。「ペリープロセス」と「金大中-小渕宣言」、そして韓米日の対北朝鮮政策での協力はこのような努力の結果だった。

 冷静に考えれば、金氏が現大統領であったとしても、すでに高次方程式になってしまった朝鮮半島問題を解決するのは非常に難しい。韓米日の複数の政府を相手にしてきた金正恩(キム・ジョンウン)政権は、対話と交渉は余計なものと結論付け、安保は核で、経済は自力更生で、外交は中国およびロシア中心で行くと決意している。さらに、朝鮮半島問題と直結する米中関係も新冷戦へと突き進んでいる。したがって、尹錫悦政権は南北関係に関して歴代政権で最も厳しい条件と環境の下にある。

 このように情勢は非常に不利だが、政治的には有利な位置にある。政府与党がこのことを自覚することが非常に重要だ。進歩政権と呼ばれる金大中、盧武鉉、文在寅(ムン・ジェイン)政権が自発的に大規模な韓米合同演習を中止したことは一度もなかった。なぜか。イデオロギー的レッテル貼りや安保攻勢を考慮せざるを得なかったからだ。では、尹政権が戦区級韓米合同演習の中止を宣言し、北朝鮮に対話を提案するとしたら? おそらくそのような選択こそ保守の特権だと言える。1992年に盧泰愚(ノ・テウ)政権が米国との緊密な協議を経て「チームスピリット」の中止を宣言したようにだ。

 保守の特権は他にもある。盧武鉉、文在寅両政権は過去最大級の軍備増強を実施したにもかかわらず、国防を疎かにしていると非難された。一方、李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)両政権は、国防費の増額を半分に抑えてもそのような非難はされなかった。そして尹政権は進歩政権の軍備増強に支えられ、世界6位の軍事大国という遺産を受け継いでいる。

 民主化以降、国防予算が減ったことが1度だけあった。金大中政権時代の1998年に策定された1999年国防予算がまさにそれだ。なぜそれが可能だったのか。IMF通貨危機という国難に直面したことで、保守、進歩を問わず国防費を減らすべきだとの声が高まったからだ。今の国防費はあの時代の4倍以上だ。国民生活はあの時代に劣らず暗うつだ。

 こうした点をすべて考慮し、政府与党は来年の国防費を50兆ウォン規模とし、尹大統領の任期中はこの水準で凍結すると発表してはどうだろうか。それによって朝鮮半島の平和の構築を企図し、節約した国防費を国民生活の救済と気候危機への対処に使うことにしてはどうだろうか。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1085257.html韓国語原文入力:2023-03-270 09:15
訳D.K

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