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[コラム]尹大統領の「グランド譲歩」と「外交の私有化」

登録:2023-03-18 06:57 修正:2023-03-27 07:26
尹錫悦大統領が16日、東京の首相官邸で岸田文雄首相と首脳会談を開く前に儀仗隊を査閲している=東京/聯合ニュース

 苦々しい侮辱を感じた。16日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と岸田文雄首相の首脳会談は、「日本の完勝」を「韓日関係の未来志向的改善」として取り繕うための舞台だった。岸田首相は「歴代内閣の歴史認識を継承する」との一言で、歴史に対する反省を消した。尹大統領が韓日間のすべての懸案を一気にやりとりすると公言してきた「グランドバーゲン」ではなく、日本が必要なすべてのことを差し出した「グランド譲歩」だった。

 北朝鮮の核問題、台湾海峡の危機など安保状況の悪化と米中覇権競争の激化にともない、国際秩序が揺れ動く現実のなかで、韓日の協力は必要だと思う。しかし、韓国の世論を絶望させ、日本は「韓国が約束をきちんと守るか見守る」と高圧的に見下ろす「屈服外交」のずさんな土台の上で、どうやって韓日の公正かつ安定的な協力を実現できるだろうか。

 尹大統領はなぜなりふり構わず突進するのか。韓日関係の敏感性と歴史の意味に対する認識がないからだ。当局者の話を聞いてみると、参謀たちは「少なくとも日本の謝罪は必要だ」と提案し続けたが、尹大統領は「それは古い韓日認識」という考えを強く持っており、聞く耳を持たなかったという。日本の右翼があれほど望んでいた「これ以上謝罪を求めない韓国」を、韓国大統領が自ら作ろうとしている。

 韓日の歴史問題を解決しない限り、米国と共に進めないという焦りも原因だ。中国をけん制しようとする米国の戦略のもとでは、韓米日の軍事・経済安保協力が極めて重要だが、韓国はここに参加しなければ捨てられるという不安に駆られ外交を展開しているわけだ。14日に開かれたニア財団主催セミナーで、亜洲大学のキム・フンギュ教授は「尹大統領は『米国の縄張りから追い出されたら生存の危機に陥る』という認識を持ち、『極端な賭け』に出ている」と分析した。それと共に「このようなやり方なら中国も日本が使った方法を使って韓国を屈服させようとするだろう」と警告した。

 それに尹大統領の「外交の私有化」も加わった。今回の訪日は、4月26日の米国国賓訪問に向けた布石だ。大統領室と外交部は1月から韓米首脳会談の日程を決めることに力を入れ、米議会の上下院合同演説の実現に力を入れてきた。尹大統領は韓米同盟70周年を迎え、米議会で「自由主義陣営の指導者」として記憶に刻まれる日を夢見ている。尹大統領は5月、日本の広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)への招待も狙っている。支持層に好まれる「歴史的場面」を演出するためには、韓日関係をきちんと交渉する時間などなかったわけだ。

 「大統領の引き立て役の外交」の裏で、韓国の未来がかかっている懸案をめぐる外交は後回しになっている。米国は昨年10月、対中国半導体輸出統制措置を発表し、先月28日には、自国に半導体工場を建設する企業が補助金の支給を受けるためには中国内の生産施設を10年間拡張できず、営業機密も提出しなければならないという厳しい条件を公開した。韓国は3月7日に尹大統領の訪米日程が確定発表された後になって、ようやく通商交渉本部長が米国を訪問し、協議に乗り出した。米政府官僚と議員の間でも「韓国政府は半導体とバッテリーにあまりにも関心がないようだ」、「韓国が強く要求すれば『妥協』の余地もかなりあるのに、なぜ韓国政府は積極的に動かないのか」という声があがっているという。

 米国と中国はいずれも自国内で主要戦略物資を自給するとし、はばかることなく保護主義を進めている。このような状況で、米国の主要同盟である欧州と日本は黙っていない。EUは米国の保護主義を強く批判し、欧州内で主な原材料と部品を調達しない限り補助金を支給しない「欧州原材料アライアンス」(CRMA)を作っている。日本は米国と密着する一方、「新秩序の制定者(rule setter)」の役割を先取りしようと奔走している。日本は1986年の「日米半導体協定」で半導体産業を韓国と台湾に奪われたと考え、それを取り戻すために緻密に動いている。

 韓国は世界で製造業5位、半導体・バッテリー生産1~2位、大規模な軍隊と防衛産業を持つ国だ。米国も日本も、中国を牽制し先端技術のサプライチェーンを再編するなど戦略目標を実現するためには、韓国の協力が欠かせない。このような韓国の力を最大限テコにして同盟に苦言を呈し、緻密に交渉してやり取りしてこそ、韓国の未来を守ることができる。ところが尹大統領は「我々が先に屈服すれば、その国が自ら呼応してくれるだろう」という幻想を抱いて、外交交渉の原則と力量を損なっている。韓国の未来を傷つけながら、「自分だけが未来志向的」というはなはだしい勘違いをしている。

//ハンギョレ新聞社
パク・ミンヒ|論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1083971.html韓国語原文入力::2023-03-17 17:41
訳H.J

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