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[特派員コラム]性的マイノリティ差別問題、日本が熱い

登録:2023-02-17 06:46 修正:2023-02-17 08:17
ゲッティイメージズバンク//ハンギョレ新聞社

 最近の日本社会で最も熱い社会的争点の一つは、性的マイノリティ(LGBT)差別問題だ。岸田文雄首相の秘書官のヘイト発言が世に知られ、論争に火がついた。荒井勝喜秘書官は3日、同性婚についての意見を質問する記者団に「(同性婚カップルを)見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」と語った。同性婚法制化についても「(首相)秘書官室もみんな反対する。同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」という暴言を吐いた。

 荒井秘書官は匿名を前提に取材に応じたが、記者団は問題が深刻だと判断し、実名報道に踏み切った。岸田首相は翌日、「政権の方針とは相いれない」として荒井秘書官をただちに更迭した。だが、論議は簡単には沈静化しなかった。首相の近くで補佐した秘書官のヘイト発言であっただけに、岸田政権の全般的な雰囲気が反映されたものではないかという追及が続いた。実際、岸田首相は、国会で同性婚法制化について「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題」があるとして反対するという趣旨で答えた。

 世論が悪化し続けると、岸田首相は2年前に国会で議論して中断された「LGBT理解増進法案」の準備を進めることを明らかにした。国会内の超党派の議員連盟である「LGBTに関する課題を考える議員連盟」が2021年に提出しようとしたが、自民党の保守派の反対で保留となった法案だ。性的マイノリティに対する差別は許されないという文言を法案に明記し、政府や地方自治体、企業などに努力義務を課す内容が加えられた。ただし、処罰条項はない象徴的な法案だ。

 安倍晋三元首相ら自民党の保守派は、これさえも一部の文言を問題にして、法案提出は見送られた。政府レベルで性的マイノリティ関連の法案が作られれば、伝統的な家族制度を揺さぶりうる同性婚や選択的夫婦別姓制度(日本では夫婦の姓は統一させなければならない)の許容に広がることを警戒をしたものだとする見方が出ていた。

 2年ぶりに国会での法案の議論が再開したが、状況はかなり複雑になっている。連立与党の公明党と野党第1党の立憲民主党は、法案は早く成立されるべきだとする側だ。自民党の保守派議員は懸念の声を強め、法案の中心的な内容である「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」という文言を削るべきだという雰囲気だ。

 性的マイノリティの当事者たちは、理解増進法ではなく差別禁止法を制定するよう求めている。これらの人々は、14日に参議院議員会館に集まり、「なんらかの被差別となる属性を持つ者たちへの理解を促すことは大切なことではありますが、それはまず国として『差別との決別』を宣言した上で取り組むのが正しい順序ではないでしょうか」とし、「憲法14条に則り『差別禁止』を明確に謳った法律を作っていただくよう強く」要求した。世論も好意的だ。共同通信が11~13日に行った世論調査の結果、回答者の64%が「同性婚認定」に賛成すると答えた。

 今年5月、広島では主要7カ国首脳会議(G7サミット)が予定されている。G7のうち同性婚が認められていない国は日本だけだ。性的マイノリティへの差別を禁止し、同性婚を認めた場合、どのようなことが起きるのだろうか。最近日本を訪問し、朝日新聞とのインタビューに応じた米国務省のLGBTQI+人権促進担当特使であるジェシカ・スターン氏は、次のように語った。「心配する必要はない。データがある。米国や他のG7諸国を見れば、唯一もたらされる影響とはより多くの愛と敬意、そして経済的繁栄だということが分かる」

//ハンギョレ新聞社

キム・ソヨン|東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1080044.html韓国語原文入力:2023-02-17 02:07
訳M.S

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