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[特派員コラム]BLで見る韓国と日本

登録:2022-04-08 05:30 修正:2022-04-08 09:19
キム・ソヨンㅣ東京特派員
オンライン動画配信サービス(OTT)企業WATCHAのオリジナルドラマ『セマンティックエラー』のワンシーン=WATCHA提供//ハンギョレ新聞社

 オンライン動画配信サービス(OTT)企業WATCHA(ワッチャ)のオリジナルドラマ『セマンティックエラー』が韓国で話題になっている。男性同士の愛を扱ったBL(Boy's Love)ジャンルのドラマだが、大衆から非常に愛されている。BLは韓国でファンダムはあるものの確固たるマイナーエリアだと思っていたが、『セマンティックエラー』の成功で何か境界が崩壊したような気がする。

 韓国ドラマに対する関心が高い日本人の友人の間でも口コミで広まっている。BLというジャンルそのものにというより、ドラマを輝かせる主人公を演じる俳優パク・ソハムとパク・チェチャンにはまっている様子だ。それもそのはずで、BLは日本が元祖だ。マンガから始まったBLジャンルの根源を探ると、1960年代後半までさかのぼる。「やおい」「JUNE」などの様々な用語が使われていたが、BLに固まったのは1990年代だ。

 15年ほど前に初めて東京を旅した時、カルチャーショックを受けたのはほかならぬ書店だった。ある程度の規模のある書店の場合、一つの階全体がマンガで埋まっており、「BL」というコーナーがあった。当時はそれが何を意味するのか知らなかった。マンガを開いて少し読んでみて、とても驚いたことが生々しく思い出される。年齢制限はあるものの、子どもたちの多い場所に同性愛マンガが専用コーナーとして存在しうるという事実がしっくりこなかった。

 日本では、BLジャンルは底辺を拡大し続けている。SNSで4コマBLマンガとして始まった『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)』は読者の注目を集めたことで単行本が出版され、2020年10月に地上波放送の「テレビ東京」でドラマ化された。このドラマは日本だけでなく韓国、中国、台湾、ベトナムなど、アジア各国で大きな人気を集めた。単行本(現在9巻まで出版)は日本だけで200万部以上売れ、映画化もされてまもなく封切られる。

 『セマンティックエラー』や『チェリまほ』が様々な流通プラットフォーム(ウェブ小説、ウェブトゥーン、マンガ、ドラマ、映画)で人気を博すのには、何よりもよく練られたストーリーが一役買っている。二つの作品を見ると、面白いだけでなく、人に惹かれ、愛する上で、性別がそこまで重要なのかということに共感を覚える。

 必ずしもBLのためというわけではないだろうが、性的マイノリティーに対する認識では、韓国より日本の方が少し開かれているという印象を受ける。日本人の友人に理由を聞いたこともある。 自分たちの友人など、周りに性的マイノリティーが多いため、自然に受け入れているという人や、その人の個人的な問題を他人がとやかく言うのは適切ではないという友人もいた。

 もちろん、日本も性的マイノリティーに対する差別は依然としてあるため、自分のアイデンティティーを明らかにすることは容易ではなく、法的に同性同士の結婚は許されないなど、権利も制限されている。露骨に嫌悪発言をする保守政治家もいる。しかし、韓国より一足先に変化しつつあるのも事実だ。

 日本の地方自治体は同性カップルを公式に認める「パートナーシップ制度」を設けている。 2015年に東京の渋谷区と世田谷区が日本で初めて同性パートナーシップ制度を導入し、昨年現在で130あまりの自治体へと拡大した。約2200組がこの制度の恩恵を受けている。民間領域には拘束力がないため限界はあるものの、日本国内の性的マイノリティーの人権にとって画期的な制度であることは明らかだ。韓国には同性カップルを認める自治体は一つもない。

 このような雰囲気の中で『セマンティックエラー』が人気を得ているというニュースを聞くと、いろいろと嬉しい気持ちが先に立つ。すぐに大きな変化が起きることはないだろうが、数多くの面白いBL作品の登場が社会的偏見を少しでも和らげる「プラスの影響力」を及ぼしてくれることを願いたい。

//ハンギョレ新聞社

キム・ソヨンㅣ東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1037946.html韓国語原文入力:2022-04-07 14:56
訳D.K

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