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[寄稿]梨泰院惨事、行政安全部がすべきだったのにしなかった2つのこと

登録:2023-02-16 03:18 修正:2023-02-16 08:53
梨泰院惨事真相調査が明らかにすべき真実 
 
キム・ユジョン|弁護士・元社会的惨事特別調査委員会調査課長
イ・サンミン行政安全部長官が先月6日午前、国会で行われた梨泰院惨事国政調査の第2回聴聞会で発言している/聯合ニュース

 「予測の困難な新種の災害だ」「中央対策本部の設置は寸刻を争うものではなかった」「法では、現場指揮は緊急救助統制団長がすべて行うことになっている」

 国会が実施した「龍山梨泰院(ヨンサン・イテウォン)惨事の真相究明と再発防止のための国政調査」で、行政安全部(行安部)の責任が言及された際、イ・サンミン長官はこのように述べた。行政「安全」部の長かつ災害・安全管理業務の「総括者」の返事は「本当に行安部には何の責任もないのか」という疑問を残した。いやそうではない。すべきだったにもかかわらず行わなかったことが大きく分けて2つある。

 第1に、群衆事故による災害に事前に備えていなかった。昨年10月29日に起きた梨泰院惨事は新種の災害ではなかった。英国のヒルズボロ惨事、日本の明石花火大会惨事、ソウル駅圧死事故、尚州(サンジュ)コンサート圧死事故など、群衆の密集による人命事故は数多くあった。毎年ハロウィーンの日に梨泰院には数多くの人が集まっていた。昨年は社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)の解除などにより、いつにも増して群衆の密集が予想されていた。2017年11月に「国内外の群衆事故の原因を分析し、法制度とマニュアルを改善せよ」と勧告されてもいる行安部が、なぜ事前に災害防止対策を取っていなかったのか、さらなる調査が必要だ。

 第2に、災害発生後の対応業務の「総括者」としての役割をきちんと果たさなかった。災害および安全管理基本法(災害安全法)は、現場での緊急救助は消防(緊急救助統制団)が担当し、中央行政機関は災害管理主管機関として「収拾・復旧を総括」すると規定している。イ・サンミン長官は国政調査で「惨事後すぐに行安部を災害管理主管機関と定めた」と証言した。ならばイ・サンミン長官は速やかに中央事故収拾本部を設置したり、中央対策本部を稼動したりして、被害状況の総合管理▽災害の早期収拾に向けた調整・統制▽緊急救助および救急活動の現状把握、支援事項の検討▽被害者の身元把握および状況管理などの災害対応業務を「総括」しなければならなかった。

 しかし、昨年10月30日の「中央対策本部龍山区梨泰院事故対処状況」という文書によると、行安部の取った主な措置は「行安部長官、事故現場訪問(10月30日午前1時5分)、中央対策本部稼動運営(10月30日午前2時30分~)」が全てだ。中央対策本部は惨事から4時間15分がたってようやく稼動し、実質的な措置事項もなかった。10月29日午前8時27分に忠清北道槐山郡(クェサングン)で地震が発生した際に、行安部が直ちに中央対策本部を稼動し、状況判断会議を行って対応措置を取ったのとは対照的だ。

 災害対応業務の総括・指揮がまともに行われなかったため、梨泰院惨事の現場では緊急救助にあたる消防人材が足りなかったり、現場を統制する警察力の派遣が遅れたりするなどの問題が発生した。その結果、人命被害が拡大し、死傷者たちは管理されず散り散りになった。災害管理主管機関の指定の経緯とその後の行安部の対応についてのさらなる調査が必要だ。

 この他にも、行安部の中央災害安全状況室の状況伝達の遅延や、初動措置の不十分さ(イ・サンミン長官が報告を受けたのは惨事発生から1時間がたってからであり、大統領の指示事項が各部署に伝達されるのに50分かかっている)▽災害安全通信網の構築・運用の不十分さ(消防通信網と連係して災害安全通信網を構築していない、惨事に活用していない)▽イ・サンミン長官の現場訪問の遅れおよび現場指示の適切さ▽惨事発生後、行安部災害・安全管理本部長、中央災害安全状況室長、災害協力室長、社会災害対応政策官らは何をしていたのか、などについても調査しなければならない。

 社会的惨事の真相を究明する究極の目的は、災害を予防し再発を防止して安全な社会を確立することだ。災害安全法は行安部を含め消防、警察、地方自治体などの災害業務を担う様々な機関が重層的・競合的に災害を防止し、災害に対応して被害を最小化するよう、その役割と責務を分けている。

 災害の防止および対応体系において各機関がどのような役割を担っていたのか、なぜきちんと作動しなかったのかを明確にすることは、真相究明の出発点だ。現場での緊急救助だけでなく、災害対応の総括問題を必ず検討すべき理由がここにある。

 梨泰院惨事を捜査した警察の特別捜査本部は、イ・サンミン長官告発事件に不送致(却下)処分を下しており、国政調査でも行安部に対する調査は一部にとどまった。災害原因の調査は別途行わないと行安部は表明している。イ・サンミン長官と公務員が災害および安全管理業務をどのように処理したのかが、明確に調査さていないということだ。10・29梨泰院惨事の真相を究明し、再発を防止するためには、行安部に対する調査と責任の究明が必要不可欠だ。

//ハンギョレ新聞社

キム・ユジョン|弁護士・元社会的惨事特別調査委員会調査課長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1079866.html韓国語原文入力:2023-02-15 18:48
訳D.K

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