北朝鮮が8日夜、人民軍創建75周年の軍事パレードで固体燃料基盤の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と推定される新型兵器をはじめ、高度化した核・ミサイル能力を誇示した。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は今回の軍事パレードにも娘のキム・ジュエさんと共に登場したが、キム・ジュエさんの「存在感」がどのような政治的意味を持っているのかについても、綿密な分析が必要とみられる。
今回の夜間軍事パレードには戦術ミサイル、長距離巡航ミサイルなどの戦術核運用部隊、大陸間弾道ミサイル部隊が登場した。北朝鮮は世界最長の「怪物ICBM」と呼ばれる火星17型を10基以上公開し、同ミサイルを実戦配備したという自信を誇示した。昨年、北朝鮮戦術核運用部隊は、「金正恩委員長の指導」の下、韓国の主要軍事施設や港、飛行場などを打撃する訓練を行った。また、監視と迎撃が難しい固体燃料搭載の新型ICBMと推定されるミサイルも登場した。制裁と経済難にもかかわらず、北朝鮮が核・ミサイル能力を大きく強化していることを示す懸念すべきシグナルだ。
軍事パレードで最も注目を集めたのは、金正恩委員長の娘のキム・ジュエさんだ。「労働新聞」はキム・ジュエさんを「愛するお子様」「尊敬するお子様」と称し、党と軍の幹部よりキム・ジュエさんがより高い「地位」にあるかのように描写した。昨年11月18日、ICBMの火星17型発射当時、金正恩委員長の手を握って初めて姿を現したキム・ジュエさんは、今回までで5回、公の場に登場した。後継者の登場という解釈もあるが、2013年生まれと推定される年齢を考慮すると根拠が薄いという反論もある。キム・ジュエさんを「白頭血統と将来世代の象徴」として前面に押し出し、核・ミサイルで金正恩一家と北朝鮮の将来世代を守るというイメージを強調するための演出ともみられる。
軍事パレードでは、対南、対米メッセージを含めた演説はなかった。北朝鮮は当分の間、韓国や米国と向き合う必要性を感じておらず、中国やロシアとの関係を通じて核・ミサイル能力を強化する一方、経済難の突破を目指していくものとみられる。北朝鮮は否定しているが、ロシアの軍事集団であるワグネル・グループに北朝鮮が兵器を供給しているという情況も公開されている。一方、北朝鮮の経済、特に食糧事情が厳しいというシグナルは様々なところで現れている。労働党中央委員会全員会議が「当面の農業問題」で2カ月ぶりに再び招集される。開城(ケソン)などから餓死者が出ているという報道もある。北朝鮮が核・ミサイル開発と中朝ロの密着だけに頼ろうとするならば、北朝鮮の住民はさらに厳しい状況に追い込まれるだろう。