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[寄稿]大邱のイスラム寺院より「豚頭デモ」の方が危険だ

登録:2023-02-03 03:38 修正:2023-02-03 08:18
ハン・スンフン|宗教学者・韓国学中央研究院
「大賢洞イスラム寺院反対非常対策委」は昨年12月15日昼、慶北大学西門付近のイスラム寺院建設工事現場前で豚肉バーベキューパーティーを行った=キム・ギュヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 2022年9月16日、最高裁は大邱市大賢洞(テグシ・テヒョンドン)の住民によるイスラム寺院建築中止要求を棄却した。イスラムに対する偏見のみで宗教活動を妨害してはならないという法的判断が下されたのだ。この判決は、多文化社会への転換が要求される中、宗教的、人種的他者に対する憎悪や嫌がらせが拡散する現実にあって、宗教の自由と差別禁止に関する憲法的原則を確認したということだけでも意味がある。

 しかし、判決後も一部の地域住民と反対勢力は奇異なかたちの抵抗を続けている。一つは寺院の工事現場の前で豚肉祭りを繰り広げることだ。イスラム教が豚肉を食べることを禁止していることを利用したこのデモは、差別禁止法が存在する国なら処罰されうる明白なヘイト行為だ。このような行動は最高裁判決の直後に始まったが、最初は工事現場の近隣でサムギョプサルを焼くことで匂いと煙を立たせるというものだったという。最近はバーベキュー専門業者を呼び、炭火で50キロの豚を焼いて食べたりもしている。形態的には、かつてセウォル号惨事の遺族たちのハンガーストライキ現場の前でなされた極右勢力による「暴食デモ」とも類似する。

 参加者のインタビューによると、この行為はムスリムが集まって羊肉を焼いて食べる時にする悪臭に対する抗議を意図しているという。羊の串焼きを好んで食べる筆者としては、全国の食堂街で繁盛している羊肉専門店から終日漂う匂いがなぜ「悪臭」のカテゴリーに含まれるのか、なかなか理解できない。実質的な意図はムスリムに対する嫌がらせだ。当事者の生活様式でタブー視されている食べ物を用い、彼らに韓国社会から歓迎されていないという脅威を感じさせようとするものだ。

 もう一つの猟奇的なデモのやり方は、ゆでた豚の頭や足、尻尾などを工事現場の周辺につるしておくというものだ。放置された豚の死骸は腐敗して悪臭を漂わせ、ハエがわいている。「聯合ニュース」の報道によると、この理解しがたい行為を始めた住民はこう語ったという。「建築主たちはみなで仲良く一緒に暮らそうと言っているが、豚肉は韓国の文化だから尊重すべきだ」、「韓国の文化が合わないなら(イスラム寺院を)移転させるべきだ」。筆者の知る限り、ゆでた豚肉を家の前につるして腐らせるのは韓国の文化ではない。これもムスリムを脅迫し、彼らの文化を嘲笑する暴力にすぎない。

 さらに懸念されるのは、オンライン空間でこのようなデモのやり方に同調し、外国人に対する排他的態度をおおっぴらに表出する人が増えていることだ。この問題に関しては多くの人々が懸念を示しており、筆者もこの紙面で何度か発言したことがあるので、改めて繰り返さない。ただ、イスラム寺院の建設に対するこのようなやり方での反対は、誰にとっても望ましくないということは付け加えておきたい。

 私たちがある事案を判断する基準は様々だ。是非を定める価値は非常に多様なため、特定の倫理的前提のみでは合意に至るのは難しい。そのため、多くの社会的対立は法的判断を通じて是非を判断することになる。倫理的または法的な基準の他に、経済的な得失という観点もある。イスラム寺院の建設は不動産価格に悪影響を及ぼすだろうとの予測は、おそらく地域住民を最も不安に陥れる要素の一つだろう。しかし、肌の色、国籍、言語、宗教、文化の異なる人々が隔離されずに平和に共存する地域の住宅価格は暴落しない。だが、異邦人を拒否したり嫌がらせをしたりする人々がのさばっていることで知られる地域が繁栄する可能性は明らかに低い。

 留学生であろうが難民であろうがテロリストであろうが、イスラム信者は本質において違いがないのだから韓国社会から排除すべきだという扇動はまったく合理的ではないため、論理的な反論はあまり効果がない。しかし、それによる実質的な危険性は指摘する必要がある。ムスリム憎悪と嫌がらせの深刻化こそ、テロリストに機会を与えるものだからだ。宗教的テロリストの動機は信仰ではない。政治的目的を達成するために不特定多数に恐怖を与えるのが彼らの本当の目的だ。ある地域でムスリムが抑圧されていることは良い口実になる。豚の頭と暴食デモという「象徴的」テロは、「物理的」テロを引き起こしうるという点でも非常に危険な行為だ。

//ハンギョレ新聞社

ハン・スンフン|宗教学者・韓国学中央研究院 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1074132.html韓国語原文入力:2023-01-02 18:58
訳D.K

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