本文に移動

[コラム]ベトナム「権力闘争」の舞台裏

登録:2023-01-31 09:15 修正:2023-01-31 12:58
Jaewoogy.com//ハンギョレ新聞社

 中国に次ぐ「世界の工場」に浮上したベトナムで、ナンバー2の国家主席が突然辞任した。明らかになった理由は「腐敗撲滅」だ。ベトナムは新型コロナ拡散を防ぐための強力な封鎖政策を実施したが、企業家などが「特別入国」する過程で巨額の賄賂がやり取りされ、診断キットの開発・承認過程で高官が関わった不正があったということだ。これと関連して今月初めに副首相2人が退任し、数十人の高官や外交官が逮捕された。この状況に責任を負い、権力序列2位のグエン・スアン・フック国家主席が17日、辞意を表明した。

 舞台裏では、権力序列1位のグエン・フー・チョン共産党書記長が競争勢力を粛清したという解釈が出ている。ベトナム政治を研究してきた西江大学のイ・ハヌ教授は、その背景に「改革のスピード」と「中国との関係」をめぐる政治勢力間の対決があると説明する。「中南部出身、行政府で経歴を積んだ人々の中には『迅速改革派』が多く、北部出身で共産党職を主に受け持ってきた人々の中には『漸進的改革派』が多いが、今回の事態は改革をよりはやく推進しようとした『資本主義寄り』が押し出された過程とみられる」ということだ。辞任したグエン・スアン・フック主席は中部のクアンナム省出身で、外国企業の誘致と市場化改革に積極的だった。韓国企業の進出にも重要な役割を果たした「親韓派」にも数えられる。ベトナムは昨年、韓国が最大の貿易黒字(342億ドル)を出した国だ。

 ベトナムは米国と戦略的パートナーシップを形成してきたが、一方では共産党の一党統治国家という共通点と経済関係を考慮し、中国との関係維持にも力を入れてきた。「親中派」のグエン・フー・チョン書記長の権力が強くなり、重心がしばらくの間は中国側に傾くと予想される。グエン・フー・チョン書記長は昨年10月、習近平主席が3期目の就任を果たすとすぐに北京を訪問し、中国と全面的な戦略協力パートナー関係を強化することで合意した。しかし「ベトナム人の中国に対する深い警戒心と、中国との南シナ海領有権のあつれきなどを考慮すれば、ベトナム共産党は米国と中国との間で状況に応じてバランスを取りつつ国家利益を確保しようとし続けるだろう」とイ教授は見通した。

 ベトナムの「政治改革の後退」ともいえる。習近平主席に権力が集中している中国共産党とは違い、ベトナム共産党は書記長、国家主席、首相、国会議長に権力を分散させ、候補の資格は党が制限するものの国会議員500人を直接選挙で選ぶなど、政治改革を進めてきたという評価を受けてきた。しかし、グエン・フー・チョン書記長は3期連任し、公安部出身者を側近に前進配置している。批判的なマスコミやインターネット、市民社会に対する取り締まりも厳しくなった。超スピード成長の中で自律性を育んでいく社会を共産党と最高指導者の権力を強化して統制しようとする「習近平時代の中国モデル」が、どうしても重なってみえる。

パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1077505.html韓国語原文入力:2023-01-31 02:49
訳C.M

関連記事