本文に移動

[コラム]まだマスクを外す時ではない

登録:2023-01-20 06:17 修正:2023-01-20 07:25
シン・ギソプ|国際ニュースチーム先任記者
18日、ソウル市内のある屋内ショッピングモールでマスク義務着用の案内文が掲示されている/聯合ニュース

 「患者が大学病院に押し寄せている。病室はすでに飽和状態だ。医師と看護師はどうしたらいいのか分からずにいる。冬をむかえ怒涛のように流れこむ患者たちのために、予定されていた手術が取り消されている」

 英国日刊紙「デイリー・テレグラフ」は最近、「英国人には聞きなれた話だが、英国の話ではない」として、「私たちと違いのない冬の危機によって保健サービスが崩壊しているスウェーデンで繰り広げられていること」だと報道した。同紙は「呼吸器ウイルスの感染拡大の傾向が激しく、保健システムの負担が非常に重い」とするスウェーデン公衆保険庁の警告もあわせて伝えた。

 こうしたなか、スウェーデンで新型コロナウイルス感染症で亡くなる人の数は、昨年初めの4倍を超えている。国際統計に関するウェブサイト「アワー・ワールド・イン・データ」の集計によると、スウェーデンの1週間平均の1日の死者数は、12日時点(最新の統計)で人口100万人あたり6.8人で、マカオ(20.1人)と香港(9.0人)に続き世界で3番目に多かった。ワクチン接種が本格化する前の2021年1月中旬(12.5人)の半分の水準だが、昨年1月中旬の1.5人に比べるとはるかに多い。

 欧州でコロナ禍初期に最もよく対処したという評価を得たノルウェーとフィンランドの死者数の増加傾向も見過ごすことができない。両国の人口100万人あたりの死者数は、2021年1月中旬はそれぞれ1.2人と0.9人、昨年1月中旬は0.8人と1.6人だったが、今月12日には2.3人と4.3人を記録した。

 政府の防疫措置の緩和やメディアと大衆の無関心のなかで、今なお多くの人が犠牲になっているのは、東アジアとオセアニアも同じだ。12日時点の日本の100万人あたりの死者数は3.2人で、2021年初め(0.5人)と昨年初め(0.02人)とは比較にならない。オーストラリア(2.2人)とニュージーランド(1.7人)も同様だ。韓国も安心できる水準ではない。2021年初めは死者数は100万人あたり0.4人、昨年初めは0.9人だったが、今月12日には1.0人を記録した。政府が防疫規制を緩和したことで激しい感染拡大傾向が現れている中国を、対岸の火事として眺めていられる状況ではない。

 フランス、英国、イタリアなどでは、入院患者の規模が大きな問題になっている。今年に入り、フランスの新型コロナの入院患者は1万9000~2万4000人の水準を維持しているが、これは、昨年初めや2021年初めの入院患者数とほぼ同じ規模だ。英国も入院患者が1万人を超えており、イタリアは7000~9000人を維持している。昨年初めに入院患者が15万人以上にまで激増した米国も、現在3万~4万人の水準を保っている。

 全世界的に新型コロナワクチン接種が始まり2年を超えたが、世界平均のワクチン接種完了率が17日時点で63.5%に達したことを考慮する場合、ワクチン接種を促すだけではコロナ禍を終わらせることは容易ではないようにみえる。世界保健機関(WHO)の欧州地区事務所が10日、感染力が極めて強力なオミクロン株の下位変異株(XBB.1.5)の感染拡大を懸念し、公共交通と室内でマスクを使うことを再び勧告したのもそのためだ。

 「科学防疫」を前面に出している韓国政府が、旧正月の連休を前にして、20日に室内でのマスク着用義務を廃止する可能性が高い。私たちの大切な家族・親戚・隣人、そのなかで最も保護が必要な人たちのためにも、まだマスクを外す時ではない。

//ハンギョレ新聞社

シン・ギソプ|国際ニュースチーム先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1076460.html韓国語原文入力:2023-01-20 02:05
訳M.S

関連記事