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[寄稿]反対方向に進む韓国政府の経済政策

登録:2023-01-10 06:56 修正:2023-01-10 08:02
イ・ガングク|立命館大学経済学部教授
尹錫悦大統領が12月27日午後、大統領府迎賓館で開かれた2023産業通商資源部・中小ベンチャー企業部の業務報告で発言している/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は先日、「国家は消えても市場はなくならない」と語った。国家の役割を減らして民間主導の経済成長を推進するという基本方針を、極端に示す発言だ。実際、政府の2023年の経済政策の方向は、危機克服と経済再跳躍を目的として、民間と企業中心の経済運用を強調する。マクロ政策では、管理財政の収支赤字を国内総生産(GDP)の3%以内に抑制する健全財政方針を維持し、住宅市場の調節の解除を推進し、税制と金融インセンティブによって企業投資を促進する案を提示した。

 2023年度予算案にもそのような方向が現れている。2023年度の予算総額は638兆7000億ウォン(約68兆円)で、2022年度の本予算より5.2%増加した。過去の政権と比較すると、増加率が低下し、昨年の追加予算まで含めるとむしろ減少した。特に、政府は法人税引き下げを推進し、与野党協議によって法人税の税率が1ポイントずつ低くなり、総合不動産税も引き下げられた。法人税と総合不動産税の減税による今後5年間の累積減税額は、20兆ウォン(約2兆1000億円)に達すると予測される。

 問題は、高いインフレ率と深刻な景気鈍化が懸念される状況のもとで、税金を削り政府の経済的役割を減らす方向が適切なのかと思われることだ。国際通貨基金(IMF)は、2023年の世界の経済成長率を2.7%に下げた見通しを出し、全世界の国のうち3分の1は景気低迷に直面すると予測する。韓国政府は、2023年の経済成長率を1.6%と他の機関よりも低く見通しているが、これは1960年以来5番目に低い成長率だ。

 押し寄せる衝撃に対応し、他の先進国は、財政拡張を通じてマクロ経済を積極的に管理して市民の暮らしを支援し、増税を推進する努力を重ねている。米国は公共投資と増税のためにインフレ抑制法を通過させたし、日本もエネルギー充足率の補助と賃金引き上げを支援するため、大規模なインフレ総合対策を導入した。ドイツは、数回にわたりエネルギー補助金を導入して電気とガスの価格上限制を実施し、昨年12月には家庭のエネルギー料金を政府が代わりに支払うことにした。フランスやイタリアなども、エネルギー価格の急騰に対応し、財政を通じて市民を支援している。特に欧州国家は、インフレと共に高い収益をあげたエネルギー企業に超過利潤税を賦課し、財源を設けている。

 英国誌「エコノミスト」は、緊縮的な通貨政策と拡張的な財政政策が共に導入されるこのような現実を、マクロ経済政策のレジームチェンジ(体制変化)と呼ぶ。これは、最近大きく変化したマクロ経済学の流れを反映している。政府が消極的に対処し不況の傷が深くなれば、長期的な生産性上昇と経済成長にも悪影響を及ぼすという新しい理解に基づき、「大きい政府」が帰還したのだ。

 実際、コロナ禍に対応し、先進国は平均でGDPの約17%に相当する大規模な財政支出を施行した。韓国政府はその比率が4.5%に過ぎず、今年の財政政策も緊縮的だ。景気変動による効果を統制し財政政策が拡張的なのかどうかを示す構造的財政収支は、今年はGDP比0.3%の黒字と予想される。一方、他の先進国は大幅な赤字が予想され、拡張的な財政政策を持続している。

 韓国政府が財政健全化と減税を共に推進すれば、他の財政支出の抑制につながらざるをえない。2023年度予算でも福祉支出が増加したが、相当部分が高齢層の拡大などによる自然増加分であり、景気鈍化によって困難に直面する低所得層への支援は十分でないという批判が提起されている。また、社会間接資本予算は10%減少し、政府の景気対応の役割も懸念される。

 世界経済の転換はマクロ経済政策だけでない。ラナ・フォルーハーが最近の著作『ホームカミング(Homecoming)』で指摘するように、今では市場万能主義の代わりに政府の役割の強化、効率性の代わりに回復、資本と利潤の代わりに労働と所得、開放とグローバル化の代わりに保護と地域化という流れが明確だ。バイデン政権の景気浮揚策である「より良い再建」(Build Back Better)計画や、岸田政権の新しい資本主義、そして、欧州諸国の財政拡張など、各国は賃金を上げて所得再分配を強化し、政府が主導し成長と分配の好循環を推進している。韓国政府だけがこれとは反対の方向に走り進んでいる。

 大統領は若い頃、ミルトン・フリードマンの『選択の自由』を読み強い感銘を受けたという。実際にフリードマンの思想は、減税や民営化など、レーガンとサッチャーの保守的経済政策に大きな影響を及ぼした。しかし、それは40年前のことであり、今は2023年だ。

//ハンギョレ新聞社

イ・ガングク|立命館大学経済学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1075035.html韓国語原文入力:2023-01-10 02:08
訳M.S

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