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[寄稿]2023年のグローバル複合危機と韓国政治

登録:2023-01-09 06:24 修正:2023-01-09 07:33
シン・ジヌク|中央大学社会学科教授
尹錫悦大統領が1日、龍山の大統領室ブリーフィングルームで、2023年新年の辞を発表している=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 元日は例年のように暖かい励ましの言葉と祝福の言葉で始まったが、世界は多くの同時多発的危機が絡み合ったまま2023年を迎えた。ニューヨーク・タイムズやガーディアン、ル・モンド、朝日新聞、シュピーゲル、エコノミストなど世界の主要メディアはヘッドラインニュースとして、経済不安やウクライナ戦争、プーチンのロシア、エネルギー・気候危機、移民とテロなどを取り上げた。

 人類は昨年、ウイルスの恐怖からは少し抜け出すことができたが、「パンデミック以後」の世界はむしろさらに複雑になった。ロシアのウクライナ侵攻は世界の軍事的緊張を高め、エネルギーと食糧供給システムを動揺させた。その中でも欧州連合(EU)は脱炭素プランを加速させたが、世界的に気候危機の議題の力は弱まった。戦争はまた難民問題を加重し、不平等と貧困に関する公論の場はさらに狭くなった。

 「グローバル複合危機」(global polycrisis)は、このようにいろいろな重大な危機が同時に起き、互いに影響を及ぼすことで、未来の不確実性と統制不可能性の問題が大きくなる状況を指す。単に解決すべき危機が多数あることが問題ではなく、様々な危機が一つのシステムで絡み合い、互いに悪影響を及ぼす「悪循環の輪」を加速させることで深刻さが増している。

 感染症、経済不安、戦争と地政学的力学、エネルギー危機、気候災害、不平等による社会葛藤のような様々な問題が同時に浮上している。しかし、政府と政治の力、人々の利害関心の違い、複雑に交差する葛藤構造のため、このすべての問題を同時に解決することは非常に難しい。しかも、一つの危機に対する対応が他の危機の悪化を招きかねないため、問題解決のための選択肢はさらに限られる。

 このような状況がしばしばもたらす政治的結果は、ポピュリズムと権威主義、憎悪政治に大衆が弱くなることだ。伝染病や戦争、失業、日照りまたは洪水、エネルギー難など、さまざまな災害と不安が襲ってくる。その時、誰かがあなたを本当に代弁してあげると言う。または法と原則で一挙に解決できるという。あるいは労組、フェミニスト、移住者、障害者のような者が問題だと指摘する。このような誘惑の力は実に強いものだ。

 複合危機の現実が求める政治はそれとは正反対だ。開放的、協力的、統合的なガバナンスだけが問題を解決できる。少数の統治勢力だけがこの現実に立ち向かうことはできないため、問題の診断と解決過程に当事者と専門家を幅広く参加させなければならない。代案を具体化する過程で、多くの部門主体が協力して調整された案を導き出さなければならない。究極的には、この過程を指揮できる政治的リーダーシップが求められる。

 ところが、今の韓国の現実はどうなのか。韓国もそのような複合危機の世界の中に置かれているだけでなく、朝鮮半島の地政学がそれに重なる。2023年の韓国社会を揺るがす重大変数は、米中ロの覇権争い、世界経済不安定、気候危機悪化などのグローバルシステムの影響と共に、北朝鮮との軍事的緊張が高まる危険がある。このような世界的、対外的要因は国内世論と政治に大きな影響を及ぼすだろう。

 現在、韓国保守政治はこのような時代の危機に応戦するビジョンも、広い同意基盤を創出する構想も持っていない。だからこそ尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は「労組」、「市民団体」、「民主化勢力」に犯罪、偽善、利敵集団のレッテルを張り、「先制打撃」、「拡戦も辞さず」のような言葉で北朝鮮に脅しをかけるやり方で保守有権者を結集して利益を得ようとするのかもしれない。そのようなやり方は政略的には有用かもしれないが、まともな問題解決とはかけ離れた無責任な対応だ。

 さらに問題は、現政権の勢力だけでなく野党も、岐路に立たされている転換の時代に対応する路線と政策を示せていないことにある。巨大両党の内部でも、支持層を刺激し相手に対する憎悪を増幅させる技に長けた無能な者たちが高度に発展した大韓民国を統治する。そのため、与党を批判することで野党を利することは結局、何の役にも立たない。この閉鎖されたカルテルの競争的寡頭制を打破する果敢な挑戦と実力競争が、新年には始まらなければならない。

 後ろに転がり落ちるリアカーを全力で支えている人は、自身も後ずさりするものだ。リアカーを前から引っ張る力を持った人だけが、リアカーと自分自身を前に押し進めることができる。韓国の政治と社会にそのような底力があるのか。あるとすればどこにあるのか。ないなら、どうやって作るのか。それに答えるのが新年の課題だ。

//ハンギョレ新聞社
シン・ジヌク|中央大学社会学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1074297.html韓国語原文入力: 2023-01-03 19:04
訳H.J

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