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[コラム]尹錫悦大統領が帰国直後になすべきこと

登録:2022-11-15 02:26 修正:2022-11-15 08:52
今や国内政治の時間だ。帰国し次第、イ・ジェミョン代表と会うべきだ。経済危機と朝鮮半島危機の克服のための協力は米国や日本ともすべきだが、野党との協力の方がはるかに重要だ。野党との対話は、国政の最終責任者である尹錫悦大統領にとってはるかに大きな利益となる。 
 
ソン・ハニョン|政治部先任記者
尹錫悦大統領とキム・ゴンヒ女史が、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席するため13日(現地時間)、インドネシアのバリ島のングラ・ライ国際空港に到着した=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 梨泰院(イテウォン)惨事で暗かった尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の顔に笑みが浮かんだ。12日、カンボジアのプノンペンで晩餐会に参加し、米国のジョー・バイデン大統領と歓談してからのことだ。尹錫悦大統領は終始にこやかだった。キム・ゴンヒ女史はバイデン大統領と腕を組んで写真を撮った。

 尹錫悦大統領は東アジア首脳会議、韓米首脳会談、韓米日首脳会談、韓日首脳会談、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席した。真剣さと自信に満ちた表情だった。久しぶりに大統領として大きなやりがいを感じただろう。

 大統領は外国に出れば国賓待遇を受ける。頭の痛い国内政治はしばし忘れてもよい。歴代大統領の誰もが例外なく外遊と首脳外交を好んだ理由はここにある。

 外国を歩き回って首脳外交さえしておけばよいのであれば、大統領は本当に良い職業だ。もちろん不可能な想像だ。尹錫悦大統領もおそらく帰りの飛行機の中で頭痛が再発するだろう。

 韓国の大統領が大変なのは、権限と責任の不一致のせいだ。権限は半分なのに無限責任を負わなければならない。残りの半分の権限は国会が持っている。

 韓国だけがそうなのではない。大統領制は本来、大統領と国会が権限を分掌し、協力し合いけん制し合うことによって国政を率いる分立型の権力構造だ。大統領制の元祖である米国がそうだ。

 李承晩(イ・スンマン)、朴正熙(パク・チョンヒ)、全斗煥(チョン・ドゥファン)時代には、大統領は大変ではなかった。独裁だったからだ。大統領は与党の総裁だった。大統領がすべての公認候補を出した。与党の国会議員は「挙手する機械」だった。与党が絶対多数の議席を占める国会は「法を通すのが仕事の省庁」だった。

 1987年の改憲で大統領制が正常に作動しはじめたことによって、状況は変わった。少数与党がしばしば出現した。大統領たちは国会で多数の議席を確保するために必死にならなければならなかった。盧泰愚(ノ・テウ)大統領の1990年の3党統合、金泳三(キム・ヨンサム)大統領の1996年の野党議員および無所属議員の与党加入、金大中(キム・デジュン)大統領の2000年の新千年民主党の結党は、そのために行われたのだ。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領からは紆余曲折があったが、与党が総選挙で勝って国会で多数の議席を確保した。そのおかげでなんとか国政を率いることができた。李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も同様だった。運が良かったわけだ。

 それに比べれば、尹錫悦大統領が直面する少数与党という状況は前例のない険しい絶壁だ。民主党と合併することも、野党議員を迎えることもできない。少数与党で国政をまともに導いていくことは事実上不可能だ。知らなかったとすれば無知だ。

 だからこそ、尹錫悦大統領なりに何か工夫があると思っていた。民主党との大連立でもするのではと期待した。英国の保守党と労働党による戦時連立内閣に言及した時は特にそうだった。しかし、何もないようだ。

 ひとつ工夫があるとすれば「野党のせい戦略」かもしれない。国政マヒを前大統領と野党のせいにして、2024年4月の総選挙で勝つという策だ。2つの兆しがある。

 第1に、検察による捜査だ。最近の検察捜査はイ・ジェミョン代表と文在寅前大統領を同時に標的にしている格好だ。野党の本部を乱暴に家宅捜索するのをみると、いわゆる「政務的考慮」は全くしていないようだ。このままだと、国会での予算案の議決を前にイ・ジェミョン代表の逮捕令状を請求する可能性もありそうだ。

 第2に、チョン・ジンソク非常対策委員長の荒い言葉使いだ。チョン・ジンソク委員長は梨泰院惨事の国政調査を要求する民主党を非難した。豊山(プンサン)犬問題で文在寅前大統領を非難した。イ・ジェミョン代表のことを大庄洞(テジャンドン)不正の本体だと非難した。政局のねじれをほぐすべき与党代表が、野党非難にさらに熱を上げている。野党と対話するつもりはまったくないようだ。

 うまくいくだろうか。うまくいかないだろう。2024年4月と言えば尹錫悦大統領の当選から2年を超える。2年ものあいだ国政で成果を出せていない責任を野党のせいにすることは不可能だ。

 コンクリート支持層をかき集めても、総選挙の勝利に必要な40%を超えることはできないだろう。文在寅大統領は熱烈な支持層を結集して国政支持率40%を保ったにもかかわらず、政権を明け渡した。

 尹錫悦大統領はどうすべきだろうか。野党と対話するしかない。今や国内政治の時間だ。帰国し次第、イ・ジェミョン代表と会うべきだ。

 経済危機と朝鮮半島危機の克服のための協力は米国や日本ともすべきだが、野党との協力の方がはるかに重要だ。野党との対話は、国政の最終責任者である尹錫悦大統領にとってはるかに大きな利益となる。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1067191.html韓国語原文入力:2022-11-14 17:15
訳D.K

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