本文に移動

[コラム]尹大統領は「3万573回嘘をついた」トランプをロールモデルにするのか

登録:2022-09-28 06:31 修正:2022-09-28 08:00
21日(現地時間)、米ニューヨークでグローバルファンド第7回財政公約会議が終わった後、尹錫悦大統領がジョー・バイデン米大統領と48秒間会話を交わしている=ニューヨーク/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が自ら「暴言」波紋を広げ続けている。対象が米国議会であれ韓国国会であれ、「このXX(野郎ども)」という言葉で人々を蔑んできた尹大統領の傲慢な態度が問題であり、率直に釈明して丁重に謝罪すれば済む問題だった。ところが、キム・ウンヘ広報首席秘書官が「詭弁だらけの釈明」で火に油を注いだうえ、帰国した尹大統領は謝罪を拒否し、「同盟毀損」「真相究明」フレームを突きつけてマスコミと批判者への脅しに出た。

 2017年1月20日、米国ワシントンでドナルド・トランプの大統領就任式が開かれた当時、バラク・オバマ大統領の就任式当時の写真と比べて参加人数がはるかに少ないという報道が相次いだ。怒ったトランプの指示を受けたホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官は「就任式史上最多の人出」だったと言い張った。なぜ報道官が嘘をつくのかという記者団の質問に、ホワイトハウスのケリーアン・コンウェイ顧問は「あなたは嘘だと言うが、スパイサーは『代案的事実』(alternative fact)を示しただけ」という荒唐無稽な主張を展開した。尹大統領とキム・ウンヘ首席、親尹(錫悦)系の議員の相次ぐ前言翻しと「強弁」は、彼らとは何が違うのか。

 もはや尹大統領と大統領室が暴言波紋を終わらせようとしているのではなく、むしろ意図的に「拡大」を選択した理由を問うべきかもしれない。キム・テヒョ国家安保室第1次長が15日、「快く合意」したと公式発表した韓米・韓日会談が前代未聞の失敗に終わり、外交安全保障責任者を問責すべきだという世論が高まったことを受け、その責任を負って退くべき人々が暴言騒ぎを煽り立て、事態を免れようとしているのではないだろうか。米国とはインフレーション抑制法(IRA)における韓国製の電気自動車への差別とウォン・ドル通貨スワップ協定に関する進展を遂げ、日本とは強制動員被害解決策をはじめ、韓日関係改善案を「グランドバーゲン」で解決していくという今回の歴訪外交の主な目標が水の泡に帰した事実は、いかなる「代案的事実」でも隠蔽できない。

 大統領は自分の発言について国民に一言の説明もしていないのに、韓国政府は米ホワイトハウスに釈明したところ、「問題はない」という反応が返ってきたと発表した。国民は眼中になく、米国さえよければ問題ないという指導者を国際社会が尊重するだろうか。ワシントンの外交消息筋は「暴言の波紋が広がり、米政界では尹大統領を見る視線は厳しくなったが、政府や議会が公に問題視することはないだろう」とし、「米国の政治家からみて尹大統領は『米国の思うままに韓国を動かしやすい外交相手』であるからだ」と述べた。尹大統領と大統領室の中途半端な「トランプの真似」は、尹大統領が共に国際秩序の再編を真剣に議論するほど信頼できる外交相手ではない点を相手国に確認させているわけだ。これから相手国の首脳らは内心、尹大統領を無視しながらも、韓国を簡単に動かせる将棋盤の駒のように接するのではないか。

 22日に行われた尹錫悦大統領と日本の岸田文雄首相の「略式会談」を生々しく描いた朝日新聞の記事からも、尹大統領に対する尊重は見当たらない。同紙の報道によると、会談の同席者は「ブスッとした表情で黙ったままの首相を前に、尹氏は懸命に話し続けた。日本政府代表部ビルをわざわざ訪れて首相と対面した尹氏は、短時間で終わらないように、少しでも時間を長くしようとしていた」とし、「何の成果もない中で会いたいというから、こちらは会わなくてもいいのに会った。日本は韓国に貸しを作った」とまで語ったという。日本の政治家たちは韓米日安全保障協力の強化を強調する尹大統領の態度を歓迎するが、尹大統領の支持率が下がるほど結局李明博(イ・ミョンバク)元大統領のように支持率回復を図るため、「反日」に転じかねないという懸念を抱いていると、「日経アジア(Nikkei Asia)」が19日付で報じた。

 重要な外交日程のたびに大騒ぎを引き起こす尹錫悦外交のもう一つの問題は、韓国社会が国際秩序の大転換について真剣に討論する機会を奪っていることだ。今年6月、尹大統領の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への出席は、国際秩序の変化の中で韓国がどのような役割を果たすべきかを討論する契機になるべきだったが、民間人側近の随行やのキム・ゴンヒ夫人が着用したアクセサリーをめぐる物議などを残しただけだ。今回も経済安全保障とサプライチェーンの再編、韓日関係に対する真剣な討論は「ナルリミョン(「吹っ飛ばしたら」。マスコミの報道はこの言葉を「バイデン」に聞き間違えたものというのが尹大統領側の主張)」をめぐる波紋で吹き飛ばされた。

 現在の韓国外交は、国際秩序の変化をきちんと読み取り、対応策を探すのに全力を尽くしても足りないほどだ。国民は、尹大統領が外交初心者であることを責めているわけではない。 外交や安全保障、経済安全保障などの領域で「白紙」状態であることを謙虚に認め、専門家の多様な意見に耳を傾け、国際秩序の転換期にふさわしい戦略家を抜擢することを望んでいる。勇敢で誇り高い指導者は自分の過ちについて謝罪し、省察して前に進むことができるが、無能で頑固な指導者は「代案的事実」にしがみつく。トランプは4年間の在任中、3万573回(『ワシントンポスト』)嘘をついた。尹大統領は何回の嘘で国を揺るがすつもりなのか。

//ハンギョレ新聞社
パク・ミンヒ|論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1060272.html韓国語原文入::2022-09-28 02:54
訳H.J

関連記事