本文に移動

[コラム]大統領府移転、「迎賓館」という尾が胴体を揺さぶったのか

登録:2022-09-20 01:57 修正:2022-09-20 06:49
ソン・ウォンジェ|論説委員
風水が意識を支配したのか。尹次期大統領の拙速とコミュニケーション不在に「逆風」=キャプチャー//ハンギョレ新聞社

 「姉さん、私の知り合いの道士が、総長は大統領になるって言ってたぜ。でも、大統領府に入ったらすぐに迎賓館は移すべきだって言うんだ」

 「うん。移すつもり」(「ソウルの声」のイ・ミョンス記者とキム・ゴンヒ女史との2021年12月11日の通話記録)

 「龍山(ヨンサン)迎賓館」新築問題を見て、この通話内容を思い浮かべなかった人は多くないだろう。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はこれまでのあらゆる舌禍と物議にも、すっぱりと態度を変えたことはほとんどない。うやむやにしたり突っ張りとおしたりして、波紋が大きくなってようやく折れるというやり方だった。「全斗煥(チョン・ドゥファン)美化」、「犬謝罪」、「キム女史の経歴詐称」問題などで繰り返されてきた態度だ。今回は異例にもわずか一日で「直ちに予算案を引っ込めよ」として「撤回」を指示した。「予算の浪費」批判が高まったためだろう。同時に鳴りを潜めていたキム女史と巫俗・風水の問題が再び急速に拡大することに対するストレスも一役買ったようだ。

 迎賓館新築計画が初めて明らかになったのは15日の夜だ。共に民主党のハン・ビョンド議員が企画財政部の「国有財産管理基金2022年度予算案」に新築予算878億ウォン(約90億3000万円)が編成されていることを発見したのだ。メディア報道で世論は沸き立ち始めたが、大統領室は翌日午後になってもまだ「龍山時代にふさわしい迎賓館の必要性について、多くの国民は共感するだろう」と述べ、火に油を注いだ。午後8時30分になって突如「国の格にふさわしい行事空間を作ろうとしたが、このような趣旨を十分に説明できなかったという無念さはある」として、撤回せよという尹大統領の指示が発表された。

 撤回が決定されても騒ぎは収まっていない。推進の経過についての疑惑はさらに膨らんでいる。企画財政部が予算を編成して国会に提出するまで、大統領室はいかなる事前議論も公に行ったことがない。与党も知らないうちに秘密作戦のように予算が組まれた。実際に計画がいつ立てられ、予算案に反映されたのかはミステリーだ。

 尹大統領の一方通行とコミュニケーション不在などには慣れてしまっている。龍山の国防部に執務室を移す過程からして拙速とごう慢にまみれていた。安保に対する懸念、莫大な移転費用、大統領の通勤にともなう国民の不便さなどの問題が提起されたが、尹大統領は気にもかけなかった。むしろ自らの独断を「決断」と美化した。当時もそのように急がなければならない合理的な理由を見出すのが難しかったため、巫俗と風水の影響を疑う声は大きかった。英国「エコノミスト」は先月、「尹大統領がなすべきことは、難しい選択をした後に、それを明確に説明することだが、納税者に莫大な費用を転嫁する執務室の移転ではそれができていない」とし、「基本がなっていない」と批判するコラムを載せた。ならば、今回はなおさら気をつけなければならなかった。しかし、このような常識は今回も全く通じなかった。

 迎賓館の新築は尹大統領自身の発言すら覆したものだ。尹大統領は3月20日、「外賓を迎える空間はどうなるのか」と取材陣に問われ、「大統領府の迎賓館や本館を、夜に国賓との晩餐のような行事を行う際に使うこともできるのではないか」と述べた。「龍山公園にワシントンのブレアハウスのようなものを建設するという方策がある」とも述べたが、これは龍山の米軍基地の返還や汚染の浄化などが前提になるべきものだ。来年度予算案に入れる段階ではない。尹大統領は、15日には前政権の太陽光事業疑惑と関連して「困難な方々のための福祉に使われるべき国民の血税が利権カルテルに使われたということが嘆かわしい」とも述べている。国民の力のイ・ジュンソク前代表や民主党のイ・ジェミョン代表、「キム・ゴンヒ特検法」などに関する記者の質問には必ず「国民生活を検討するために他のことに気を使う暇がない」と答える。にもかかわらず、国民生活の危機の中で878億ウォンの迎賓館を建てるための予算を密かに編成していた。もう一つの「羊頭狗肉」だ。

 非合理的な選択が相次ぐのには必ず理由があるものだ。突然の大統領府の移転、さらに唐突な「龍山迎賓館」の密かな推進にも、特定の意図と力が作用した可能性が高い。尹大統領は「一日たりとも大統領府にとどまることはできない」と奇異な意地を張った。巫俗的な理由で「(迎賓館を)移す」と言ったキム女史の断言に照らしてみれば、結局のところ「迎賓館」のためにその意地を張ったのではないかという問いが広がるのは自然な帰結だ。現代民主国家の指導者なら答えなければならない。真相を明らかにして責任を問うことこそ、韓国社会を混迷から救い出す出発点となるだろう。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ウォンジェ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1059068.html韓国語原文入力:2022-09-18 17:09
訳D.K

関連記事