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[寄稿]朝中ロ「北方三角関係」の帰還

登録:2022-09-19 01:54 修正:2022-09-19 08:00
南北米三角関係で問題を解決した時代は終わった。北朝鮮は南方を閉鎖し、中国とロシアの間で生存を追求するだろう。私たちはどうすべきなのか。一部では陣営を選択すべきだと主張する。だが、米国が主導するサプライチェーンの陣営化は米国製造業の復興のためであって、陣営内の利益調和を意味するものではない。

キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授
15日、中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウズベキスタンのサマルカンドで開かれた上海協力機構首脳会議で会った/新華社・聯合ニュース

 冷戦は陣営の対決だった。朝鮮半島でも北朝鮮、中国、ソ連の北方三角と韓国、米国、日本の南方三角が対立した。冷戦が終わると、陣営も崩れた。韓国は脱冷戦後、中国とロシアと協力的関係に切り替えており、北方三角関係も緩んだ。ところが最近、米中の戦略競争とロシアのウクライナ侵略で、約30年ぶりに再び北方三角関係がうごめいている。この新たな秩序の変化は朝鮮半島情勢にどのような影響を及ぼすだろうか。

 北方三角関係は3つの二国間関係から成り立っている。中ロ関係はプーチン・習近平体制から徐々に「事実上の同盟」関係に進化している。1970年代以降のソ連と米中の対決が、ウクライナ戦争を機に米国と中ロの対決に切り替わった。両国の首脳会談も頻繁になり、経済協力の水準も高まった。2021年、中国はロシアから原油の16%、石炭の15%、天然ガスの10%を輸入したが、2022年に入ってからはエネルギー輸入が急激に増えた。ロシアは欧州に向かっていたパイプラインを閉鎖し、今や中国にパイプをつなげている。軍事分野で、特に最新戦闘機とミサイル防空システムなど戦略兵器関連の協力が増え、両国が主導する軍事訓練の規模が大きくなった。

 朝中関係は南北、朝米関係が悪化し、ますます緊密になっている。我々は2018年春を南北米三角関係が好循環した時期として記憶している。当時、朝米関係は南北の特使会談で可能になった。しかし当時、北朝鮮はもう一つの三角関係にも力を入れていた。ほかでもなく、朝米中の三角関係だ。米国との関係改善に乗り出しながら、北朝鮮は中国との関係を強固にした。北朝鮮は米中の戦略競争を自分たちにとって有利に活用しようとしたが、2019年2月ハノイ会談が物別れに終わってからは、中国に便乗した。その後、朝中関係は過去には見られなかった戦略的協力に転じた。

 朝ロ関係も変わった。脱冷戦時代にロシアは南北バランス外交を維持してきたが、これからは違ってくる。朝ロ関係の変化によって、国際社会の北朝鮮制裁政策は限界を露呈するだろう。ロシアが国連安全保障理事会常任理事国として存在する限り、北朝鮮の戦略的な挑発に対する国連の追加制裁は困難だ。コロナ禍が終わり、北朝鮮の国境が開かれれば、朝ロ経済関係も変わるだろう。北朝鮮はロシアのエネルギーが必要であり、ロシアは北朝鮮の労働力が絶対的に必要だ。このような協力は現行の国連決議においては制裁違反だ。制裁違反に対してできる措置が追加制裁だが、北朝鮮とロシアいずれも追加制裁を無視する可能性がある。

 北朝鮮は1960年代、中国とソ連が紛争を経験した時、実利外交で利益を得た経験がある。現在、南北関係と朝米関係が悪化したことで北朝鮮は中国に全面的に依存せざるを得なかったが、ロシアの登場は新しい北方三角関係の躍動性を意味する。3つの二国間関係の躍動性とは別に、三者協力も増えるだろう。今後、中ロが主導する軍事訓練に北朝鮮も積極的に参加するだろう。 地政学的中間地帯である朝鮮半島で、北方と南方の軍事秩序が対立すれば、それだけ緊張も高まる。

 朝鮮半島の秩序において、北方三角関係の帰還は非常に重大な変化だ。これまでのように南北米三角関係で問題を解決した時代は終わった。北朝鮮は南方を閉鎖し、中国とロシアの間で生存を追求するだろう。我々はどうすべきなのか。北方の門が閉ざされており、新南方政策も進む道を失ってしまった。一部では現在の情勢を新冷戦と解釈し、陣営を選択すべきだという。 同意しがたい主張だ。北朝鮮は南方を放棄し、北方から活路を見出せるかもしれないが、韓国は北方を放棄することは難しい。陣営が利益を保障するわけでもない。米国が主導するサプライチェーンの陣営化は、米国製造業の復興のためであって、決して陣営内の利益調和を意味するものではない。

 グローバル化時代の終末は複合的な経済危機を意味する。鉱物とエネルギー価格の上昇、生産の国内化によるコスト上昇、そして国際的な分業体系の混乱が作り出す世界的なインフレは、ウクライナ戦争が終わったからといって解消するわけではない。複合危機の時代に陣営の境界に立っている国は、バランスを取りながら国益を追求している。インドは米国とロシアの間で徹底的に実利を選択し、トルコは地政学的位置を活用して仲裁外交で存在感を示している。世界的な地政学的中間国家も陣営の境界を越え、利益を求めている。我々も陣営に閉じ込められている限り、未来は開けない。もはや冷戦時代の大韓民国ではないからだ。非武装地帯が南北を分けて世界を分ける分断の断層地帯に変わる現実が残念だ。

//ハンギョレ新聞社
キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1059093.html韓国語原文入力:2022-09-1819:14
訳H.J

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