保護者の死や離婚、虐待、ネグレクトなどの理由により児童養護施設、共同生活家庭、委託家庭などで育った「保護児童」は、満18歳になれば法的保護が終了する。毎年約2500人の青年たちが施設などを離れ、一人立ちを始める。かつては「保護終了児童」と呼ばれたが、支援・保護の対象ではなく青年というアイデンティティを強調するとの趣旨から、政府は昨年「自立準備青年」へと名称を変更した。彼らは保護終了時点で通常500万ウォン(約50万円)前後の自立定着金を握って社会に出る。保護終了時点から5年後までは毎月35万ウォン(約3万5000円)の自立手当が支給される。
だが、自立「させられた」青年たちの状況は劣悪だ。2020年に保健社会研究院が「保護終了」した3104人を調査した「保護終了児童の自立実態および欲求調査」によれば、彼らの月平均所得(2020年現在)は127万ウォン(約13万1000円)で、最低賃金(179万ウォン、約18万4000円)にも達していない。生活費、居住費、学資金などに充てるために24.3%は平均605万ウォン(約62万2000円)の負債を抱えていた。失業率は16.3%と一般青年(8.9%)の2倍で、非正規労働者の割合(36.4%)も一般青年(29.6%)より高かった。考試院(簡易宿所。もともとは公務員試験などの受験勉強をする人の長期滞在用に作られた)、友人・知人宅、宿泊施設などの臨時・脆弱住居で生活する人々は16.7%に達する。
何よりもそれまで施設の規律と統制の中で生きてきた子どもたちにとって、準備なしに社会に出たことで直面する困難は多い。詐欺・恐喝などの犯罪にさらされたり、経済観念の不足で浪費してしまったりする事例が少なくないという。助言してくれる支持基盤もほとんどない。「助けを求められる人」を問うと59.9%が学校や地元の友人をあげた。生活苦や寂しさなどが重なり、彼らの半数(50%)は「死にたいと思った経験がある」と答えている。一般青年(16.3%)のおよそ3倍だ。
政府は昨年7月に関係省庁合同で、本人の希望に沿って保護措置期間を最大24歳にまで延長▽自立手当支給期間の延長▽公共後見人制度の導入▽自立支援専門人材の拡充などを骨子とした保護終了児童支援強化策を発表した。しかし、大半は依然として「推進中」だ。特に自立後の事後管理と支援を担う自立支援専門人材は、まだ圧倒的に足りていない。2017年から2021年までの間に保護が終了した青年は1万2256人いるが、政府が今年中の確保を目標としている自立支援専門人材の数は120人だ。それすらも、まだ定員に達してもいない。
21日、自立準備青年のAさんが光州(クァンジュ)のある大学の建物の裏で亡くなっているのが発見された。大学の新入生であるAさんの机からは「まだ読むべき本がたくさんあるのに」と書かれたメモが発見されたという。24日に「家族に申し訳ない」というメモを残して亡くなったBさんも、光州のある児童養護施設で暮らし、1年前に退所した自立準備青年だった。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は29日、「国が全面的に責任をとり、自立を準備している青年たちが社会に適応できるよう、親の気持ちで世話をしてほしい」と指示した。安定した住居や経済的支援とともに、彼ら青年たちの支えとなり声援を送ることは、仲間の市民である私たちが共に負わなければならない責任であろう。