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[寄稿]尹大統領のNATO首脳会議出席…便乗外交は解決策になりえない 

登録:2022-07-06 06:32 修正:2022-07-06 13:08
1.キム・ジュンヒョン|韓東大学教授(前国立外交院長)
先月29日(現地時間)、スペインのマドリードのIFEMAコンベンションセンターで開かれた韓米日首脳会談に先立ち、尹錫悦大統領と米国のジョー・バイデン大統領が会って握手を交わしている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

今年5月21日、尹錫悦大統領は、米国のジョー・バイデン大統領と韓米首脳会談を行い、米国主導の経済安保プラットフォーム、インド太平洋経済枠組み(IPEF)への参加を宣言したのに続き、先月29日にはスペインのマドリードで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議にも出席した。政権発足から2カ月足らずで米国と西側諸国との密着を明確にしたわけだ。これをどう見るべきか、今後どのようなアプローチが必要なのかについて、キム・ジュンヒョン韓東大学教授(前国立外交院長)とチョ・ビョンジュン前光云大学兼任教授(経営学博士)の寄稿を掲載する。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への出席について、支持者らは皆高く評価している。成功裏に国際舞台デビューを果たし、主要国の首脳と肩を並べて存在感を誇示すると共に、韓国の地位を高めたという。特に、これまで米中間で曖昧な態度を維持していた前政権の優柔不断な態度を捨て、西側主導の価値観に基づく連帯を選択したと褒めたたえる。韓国の国内メディアは、今回の歴訪が昨年の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の主要7カ国首脳会議(G7サミット)出席と同じレベルであるかのように取り上げていた。しかしNATOは軍事・安全保障同盟であり、G7やG20サミットとは根本的に違う。さらに、加盟国の構成が似ている欧州連合(EU)会議に招待されるのとも異なる。もしG7サミットへの出席が挫折し、その代わりにNATO首脳会議への出席を決めたなら、非常にアマチュアな決定だ。そうではなく、損益を十分に検討した末の決定ならば、今後の韓国の立場に大きな困難をもたらす一方的な便乗外交を選んだという点で、さらに深刻な問題だ。

 NATOが12年ぶりに新たな戦略概念を採択し、中国とロシアの対抗同盟として路線を明確にした点に注目しなければならない。同概念はロシアを「直接の脅威」(direct threat)としたうえで、中国を「体制上の挑戦」(systemic challenge)と規定した。 ロシアを「敵」(enemy)と、中国を「脅威」と規定するだろうという当初の予測よりは表現のレベルが多少低くなった。経済関係などで中国との過度な対立を避けようとするフランスやドイツなどの立場が一部反映されたとみられる。それでも、冷戦の遺産であるNATOが脱冷戦後も存続する理由を欧州全体の共同安全保障のためだと強弁してきた米国が、今や露骨に冷戦体制の復活を既成事実化したことに他ならない。ロシアのウクライナ侵攻を機に欧州を結集し、対ロ・対中連帯をつなごうとする米国の意図は明らかだ。NATOの会議に出席しながら、特定の国を狙ったものではないという韓国の主張はつじつまが合わない。

 さらに今回の会議に日本、オーストラリア、ニュージーランドとともに出席することで、欧州とアジア同盟を結びつけようとする米国の試みを後押しした。NATO会議中に開かれた韓米日3カ国会談は25分の短い時間にもかかわらず、ホワイトハウスが歴史的だと評価するほど、米国が切に願っている3者協力を通じた対中牽制の意図を明確に示した。日本の岸田文雄首相は、再武装を思わせる防衛力の強化に言及した。尹大統領は最も意味のある日程として韓日米首脳会談を挙げ、「軍事安全保障分野の協力」の再開に原則的に合意したという点を大きな成果に掲げた。韓米日はこれまで北朝鮮の核問題など特定のイシューに限定した協力を行ってきたが、「軍事安全保障分野の協力」という尹大統領の表現通りならば、今後、軍事同盟に進むこともありうることを示唆する。過去に対する反省もなく、地政学的危機を機に再武装を進めようとする日本と同盟を結んだ場合、朝鮮半島有事の際、日本の自衛隊が朝鮮半島に上陸したり、ロ日および中日紛争に大韓民国の軍隊が介入するという、想像もしたくないことが可能になる。

 尹錫悦政権は西側陣営への便乗外交という路線を確実に示した。しかし、敵味方をはっきり分けるのは、物事の解決を容易にするのではなく、むしろ困難にする。尹政権は前政権の路線をバランスまたは戦略的曖昧性だと批判したが、これは難しい構造的な限界があったためだった。どちらかを選ぶ方が簡単で、国益のためになるなら、そうしたはずだ。実はバランスという言葉は的確ではないかもしれない。革新勢力の政権にとっても、韓国が親米路線から離れては生き残れないというのは周知の事実だ。したがって米中間の「バランス」を取るのは最初から不可能だった。戦略競争の渦の中で、新冷戦的な対立を避け、それなりの実利を手に入れようとする努力に政治的フレームをかぶせただけだ。

 問題はこれからであり、困難は本格化するだろう。時事週刊誌「タイム」は、韓国がNATO首脳会議に出席したことで、ロシアと中国との関係が後退するかもしれないと警告した。中国政府は今回のNATO首脳会議を冷戦体制の復活として捉え、批判しているが、韓国に直接対立しようとする姿勢は見せていない。しかし、韓国が陣営対決の先鋒に立った場合は、話が違ってくる。韓米同盟が韓国の最も重要な外交的資産であることは疑いの余地がないが、現政権が目指す過度な親米と西側諸国への便乗路線は、韓国の立場を狭め、外交的テコを失わせる恐れがあることを肝に銘じなければならない。今のような時代に片方だけを見ていては国益をまともに守れない。米国の知識人たちでさえバイデン政権に対し、韓国が米国に過度に依存するよりは、韓中関係を友好的に維持していく方が米国にとって有利だと助言している。

//ハンギョレ新聞社
キム・ジュンヒョン|韓東大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1049624.html韓国語原文入力:2022-07-0502:39
訳H.J

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