本文に移動

米中対決は今後10年が分岐点…「中堅強国の連帯」で緩衝すべき(2)

登録:2022-06-07 06:16 修正:2022-06-07 07:36
[パク・ヒョンのG2技術覇権]

 米中の覇権争いでは、両国の間で板挟みになっている国が受ける打撃がさらに大きくなる。戦争のような極端なシナリオを排除し、経済的な側面だけを見てもそうだ。両大国が保護主義に転じた場合、韓国のように貿易中心の国々は、その影響を大きく被るのは避けられない。このような予測は、国際通貨基金(IMF)の報告書でも確認される。IMFは昨年、米中の間で先端技術分野の交易が中断される「技術デカップリング(分離)」が現実化した場合、シナリオ別に主要国の経済に及ぼすネガティブな影響を推定した。対象国は米国・中国と韓国、日本、ユーロ地域、インドの6つの国と地域だ。シナリオは米中間のデカップリングと、経済協力開発機構(OECD)-中国間のデカップリングを想定し、各国は同じブロック内だけで交易をする場合と、両ブロックとも交易が可能な場合の2つに分けて推定した。その結果、米中間デカップリングが行われ、各国は同じブロックだけで交易が許される場合、米国と中国の国内総生産(GDP)の減少率がそれぞれ3%、4%になると推定された。ところが、OECD-中国間のデカップリングが行われる場合、状況が大きく異なる。米国は減少率が1%台に止まったが、中国はなんと8%にもなった。米国としては同盟・友好国と連合して中国とデカップリングする方が、最小費用で大きな打撃を与えられるわけだ。

 韓国は米中間またはOECD-中国間のデカップリングが行われても、両ブロックとも交易が許される場合にはGDPが小幅に増加した。韓国が中国に代わる「漁夫の利」の効果を得られるためだ。ところが、同じブロック内だけで交易が許される場合には、韓国が受ける打撃は非常に大きかった。米中間デカップリングの時はGDP減少率が6%にもなり、調査対象国の中で被害が最も大きかった。OECD-中国間のデカップリングの時も減少率が5%だった。日本は2つのシナリオにおいて、韓国より被害が2倍程度小さかった。インドは米中間のデカップリングの時は-1%だったが、OECD-中国のデカップリングの時は0%だった。

 これは韓国経済の対外依存度が日本やインドに比べて非常に高いことに起因する現象だ。このような予測は、今後韓国がどのようにアプローチしていくべきかについて、大きな示唆点を与える。

 ここ数年間、米国中心に「経済安全保障」論理が流行のように広がっている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権も経済安保を対外政策の基調として採択した。ところが、経済安保は基本的に米中間の覇権争いで勝とうとする大国の論理に基づいている。両国は互いに相手を制圧し、覇権を握るのが国益に有利だ。一方、対外依存度の高い韓国は事情が異なる。保護貿易主義を招く経済安保よりは、貿易自由化を主張しなければならない。経済と安全保障をデカップリングするのが、韓国の国益を最大化する道だ。

 このために韓国は、利害関係と能力が近い「中堅強国」たちとの連帯外交を通じて、米中の緩衝材の役割を果たさなければならない。アジアではASEAN(東南アジア諸国連合)とインド、日本、オーストラリア、欧州ではドイツとフランス、北米ではカナダなどがそれに当たる。これらの国々と多国間協力と地域統合の道を模索すべきだ。インド太平洋経済枠組み(IPEF)でも、中国まで包容するルールを作らなければならない。すでにASEANとインドがそのような声をあげている。欧州連合(EU)も経済安保の代わりに「開放的・戦略的自律性」を対外政策基調として採択している。これは、米国と最大限協力するものの、対中国政策では可能な限り自律性を確保しようとするものだ。中国にも国際的なルールを受け入れるよう圧迫しなければならない。

 米中競争は、韓国にとっては技術力と産業競争力を維持し、拡大する機会になり得る。韓国は米国との技術協力を通じて基本となる技術にアプローチできるが、中国は米国の制裁で技術へのアプローチに制約が伴うためだ。例えば、半導体やバッテリーのような分野は世界市場でさらに確固たる地位を固めることができる。中国に遅れを取っている人工知能(AI)やクラウド、ビッグデータ、航空宇宙などでも、追撃の足掛かりを作ることができる。しかし、このような幸運の時間がどれほど残っているかは誰にも分からない。

 現在の米中関係は、19世紀末~20世紀初めの英独の覇権争いと類似した側面が多い。当時、技術革新(第2次産業革命)の真っ最中で、国家主導の経済と権威主義体制の新興強国であるドイツが、大英帝国の覇権に挑戦状を突きつけた。両国は関税の賦課や技術標準の設定、技術奪取、第3世界へのインフラ投資など、いたるところで激しい競争を繰り広げた。両国の経済的相互依存度も非常に高かったが、第1次世界大戦という災いを防ぐことはできなかった。今、米中は向かい合って迫りくる汽車のように危険な疾走をしている。1世紀前、韓国には力がなかったが、今は違う。半導体をはじめ先端産業で米中も無視できないレバレッジ(テコの力)を持っている。韓国のような国々が陣営対決やそれぞれの生き残りに埋没すれば、悲劇の歴史は再び繰り返されるだろう。

//ハンギョレ新聞社

パク・ヒョン|論説委員

1994年から経済・国際・社会部で主に働き、ワシントン特派員や国際部長、経済部長、副局長などを務めた。特派員時代にオバマ-習近平首脳会談や米国の対外政策と軍産複合体などを取材し、2015年に米国のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備の意図を暴いた報道で寛勲言論賞国際報道賞を受賞。コロナ禍直前までアリババなど中国の主要先端企業と金融会社の発展ぶりを現場で取材した。G2の覇権争いが韓国経済と朝鮮半島に及ぼす影響を探求している。

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1045906.html韓国語原文入力:2022-06-07 02:37
訳H.J

関連記事