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[コラム]盧武鉉元大統領の夢「強中国の韓国」…実現されたこと、未達成のこと

登録:2021-08-18 05:51 修正:2021-08-18 07:09
文在寅大統領が15日、ソウル空軍基地で行われた洪範図将軍の遺骨奉還式に参加している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 抗日独立戦争の英雄である洪範図(ホン・ボムド)将軍の遺骨が、光復節(日本の植民地支配からの解放記念日)の8月15日、韓国国内に奉還された。7月2日には国連貿易開発会議(UNCTAD)が韓国の地位を「発展途上国」から「先進国」に変更した。これに先立ち6月11~13日に行われた主要7カ国(G7)首脳会議には、初めて韓国大統領が招請され参加した。

 最近、1カ月間隔で相次いで起きたこの三つの出来事は、それぞれ東北アジアの一つの新生独立国が光復後76年にわたり成し遂げた優れた成果を振り返させてくれる。

 洪将軍の故郷は平壌(ピョンヤン)だ。彼はまた、1927年にソ連共産党に入党した社会主義系列の独立軍の指導者だった。1922年、初めて高麗革命軍司令官の資格でレーニンとトロツキーに面会もした。レーニンは、自分と洪将軍のイニシャルが刻まれた拳銃や金貨などを贈った。そのような洪将軍の遺骨が、北朝鮮ではなく韓国の大田(テジョン)顕忠院に18日に安置される。南北の体制競争が終わったことを物語る、もう一つの象徴的な事例だ。

 これまで北朝鮮は、洪将軍の遺骨は故郷に埋葬されるべきだと主張し、韓国への奉還に反対してきた。実際には、ソ連派や延安派、南朝鮮労働党系などを追いだし、金日成(キム・イルソン)唯一指導体制を構築した北朝鮮が、洪将軍などの海外派独立軍の遺骨奉還を心から望んでいたのかは疑問だ。しかし、北朝鮮の内心は別にして重要なのは、韓国の飛躍的な変化だろう。社会主義系列まで荘厳な追悼の対象として包括し、国家の正統性の基盤をより広く深く固めたという点だ。

 先進国に上りつめたのは、漢江(ハンガン)の奇跡を公式に反映した結果だ。1964年のUNCTADの創設後、発展途上国から先進国になったのは韓国だけだ。世界史的な成果だ。

 「G7」への招請は、経済に劣らず韓国の外交的な地位が高まったことを雄弁に語る。韓国はすでに、大陸と海洋勢力、発展途上国と先進国をつなぐ橋梁国家の役割を自任している。激しい米中競争においても、韓国は、二つの超大国の双方が無視できない戦略的な価値を有する国に浮上した。選択を要求される難しさも大きいが、身動きする空間を作る力も持っている。「クジラのけんかでエビがつぶれる」(他人の争いで被害を被ること)ということわざがあるが、韓国は「挟まれたエビ」だというコンプレックスに陥っている人たちのみが、これを知らぬ振りをしているだけだ。

 韓国の高まった国際的地位と国力を表現する言葉として「ミドルパワー」が用いられる。強大国には及ばないが中上位圏の国力を持つ国を通称する用語だ。「中堅国」と翻訳されることが多い。カナダ、オーストラリア、オランダなど総じて米国とグローバルな歩みを共にする自由主義中堅国と、トルコ、ブラジル、南アフリカ共和国など地域大国を志向する新興中堅国に区別されたりする。韓国は自由主義中堅国に分類される。

 しかし、韓国の国力とそれにふさわしい国家戦略を合わせて示すには、「中堅国」の規定では2パーセント足りない。韓国は、昨年の国内総生産(GDP)の順位が世界10位、国防費の順位が世界10位の経済・軍事強国だ。K-POPなど「韓流」のソフトパワーの成長も目覚ましい。ハードとソフトの権力を合わせた国力の総合でみるならば、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で提起された「強中国」(強い中堅国または中間規模の強国)が、韓国の地位をより適切に示す規定であるようだ。

 世界の最強大国が対立する東アジアの地政学を考慮すれば、なおさらだ。 大型のクジラが競い合う場において、「ミドルパワー」のイルカとして生き残り繁栄するための国家戦略の目標と方向を十分にとらえようとするならば、中堅国を越え「強国」のアイデンティティを明確にする必要があるということだ。「強中国の特徴のうちの一つが、安全保障を強大国に全面的に依存、便乗するより、固有の国益を定義し、独自の外交安保戦略を追求すること」(チョン・ボングン『北東アジア地政学と韓国外交戦略:強中国と中枢国アイデンティティを中心に』)だからだ。

 盧武鉉元大統領が抱いた「強中国」の夢は、外形上では実現した。しかし、実は強中国構想の目的地は「富国強兵」のような国力の成長それ自体ではない。国力を活用し平和と共栄を成し遂げることが真の目標だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権は、相変わらず「中堅国外交」という名札を付けていたりするが、強中国戦略の方向性を継承したのは明らかだ。平和の突破口を開き、米中競争の荒波に巻き込まれる失敗もなかった。しかし、結果まではまだ出せていない。強中国の物理的な基礎である戦時作戦統制権の移管も未完であり、先送りされる可能性が高い。次の政権では強中国の夢を名実ともに実現できることを期待する。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ウォンジェ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1007996.html韓国語原文入力:2021-08-18 02:38
訳M.S

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