韓米合同軍事演習が始まった10日、北朝鮮のキム・ヨジョン労働党副部長が、韓国と米国を強く非難する談話を発表した。韓国に対しては「南朝鮮当局者たちの裏切り的行為に強い遺憾」と述べ、米国に対しては「侵略戦争演習を強行した、地域の平和と安定を破壊する張本人」と述べた。バイデン政権が北朝鮮に対し、「外交的関与」と「前提条件のない対話」を提案したのも「偽善」だと述べた。北朝鮮はこの日午後、南北軍通信線と共同連絡事務所のチャンネルを通じた定期通話にも応答しなかった。
今月に入って二度発表された「キム・ヨジョン談話」は、同意しがたい内容だ。今月1日のキム・ヨジョン談話は「北南関係の前途をさらに曇らせるつまらない前奏曲となるだろう」とし、合同演習の延期・中止を要求した。仮に、合同演習の延期によって南北関係が改善し、朝鮮半島平和プロセスが再稼動ができていたなら望ましかったことだろう。しかし演習を延期するかどうかは、韓国と米国が様々な状況を総合的に考慮して判断する問題だ。北朝鮮の圧力を加えるような談話は、結果的に韓国の世論を悪化させ、韓国政府の行動の幅を狭めるという悪影響ばかりを生んだ。
10日の談話でキム副部長が韓米演習を「侵略戦争演習」と規定したことも根拠がない。今年の韓米合同軍事演習はコロナ禍などを考慮して、参加人員など規模を大幅に縮小して実施するコンピューター・シミュレーション方式の指揮所演習であり、防御と反撃の形で進められる。戦略兵器も配備されず、夜間機動訓練も実施しない。核兵器完成を宣言し戦略核兵器開発も宣言した北朝鮮が、韓米の小規模防御訓練を「侵略演習」と主張するのは説得力がない。また訓練規模の縮小については、コロナ禍を考慮して韓米両国が5月から議論してきたものだが、保守メディアがこれを「キム・ヨジョンの下命」と主張するのも無責任な攻勢だ。
北朝鮮が本当に安保に対する懸念を解消することを望むなら、南北、朝米対話の場に出てきて、非核化と相応措置を取り交わす中で問題を解決していくべきだ。北朝鮮が今回の談話で「強力な先制攻撃能力」に言及し、「米軍が南朝鮮に駐屯する限り、朝鮮半島情勢を周期的に悪化させる禍根は絶対に除去されない」とし、「在韓米軍」問題にまで言及したことは、状況を大きく悪化させる恐れがある。北朝鮮の態度変化を重ねて求める。韓国政府も、南北関係改善のための説得と意思疎通を続け、朝鮮半島平和プロセスの再稼働に向けて揺らぐことなく進んで行くべきだろう。