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[コラム] 韓中関係の 「ニューノーマル」

登録:2021-06-18 06:49 修正:2021-06-24 12:03
パク・ミンヒ論説委員
文在寅大統領が今月12日(現地時間)、英国コーンウォールのカービスベイで、主要7カ国(G7)の首脳らと共に記念撮影を行っている=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 先週末に英国で開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、和やかな宴のように見える激しい外交戦だった。米国は、全世界的な影響力と指導力の再建と反中国同盟の構築に奔走した。欧州諸国や日本、カナダも自国の利害得失に基づいて対応した。

 G7首脳が激しい議論の末に出した共同声明は“中国けん制”で埋め尽くされていた。台湾をめぐる緊張、新疆と香港の人権と民主問題をはじめ、新型コロナウイルスの起源に関する再調査や中国の国家主導経済と一帯一路に対抗する構想などが網羅された。中国の急浮上で始まった問題にどの程度対応すべきかをめぐり、各国の立場の違いは存在するものの、大きな枠組みで問題意識を共有し、ともに対応するというシグナルであることは明らかだった。

 米国は米中競争を「民主と独裁の対決」と規定しようとするが、本質は覇権を守ろうとする米国と挑戦する中国の総力戦だ。その対決の過程で、中国に対する反発が国際的に広がっているのは、中国の自業自得だ。 2049年までに世界最強の大国になると宣言した中国は、それに見合う代案的な国際秩序を提示する責任があるが、実際に見せたのは国内では批判の声を抑圧する「ビッグブラザーによる監視社会」であり、国際的には金と力で他国を操ろうとする「戦狼外交」だった。

 大統領府は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がG7首脳たちと並んでいる写真とともに、「その場に居ることが、大韓民国の(上昇した)地位を示す」として、大々的に広報したが、中国を批判したG7の共同声明については、「文大統領はG7加盟国ではなく、“招待国”の首脳であり、声明の作成に参加しておらず、署名もしなかった」と釈明した。先月の韓米首脳会談の共同声明に初めて中国が敏感に反応する「台湾海峡の平和・安定の維持の重要性」を明示した後も、チョン・ウィヨン外交部長官が出て「原則的な内容にすぎない」と述べ、あえて意味を縮小しようとしたのと同じ脈絡だ。中国の問題に共同で対応するための国際的な流れに賛同した後、すぐに「そのような意味ではなかった」と、中国に訴えている。朝鮮半島平和プロセスと韓中経済関係の重要性を考慮した行動だろうが、国際秩序が急変しているこの時期に原則を明確にし、決定に責任を持とうとする姿を見せなければ、主要10カ国(G10)に仲間入りしたという韓国の国際的信頼度は揺らぐだろう。

 今は韓中関係の「ニューノーマル」を直視すべき時だ。韓中関係は2016年の在韓米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備と中国の報復措置を機に急速に悪化したが、両国関係を根本的に揺るがしたのはより大きな枠組みの地殻変動だ。韓中経済関係は緊密だが、先端技術などの領域で両国間の協力よりも競争の領域が広がり、習近平時代の中国が覇権国になるという目標を明確にして攻勢的愛国主義を高め、韓国を含む周辺国との対立が避けられない構図が形成された。韓国社会の一部の「習近平主席が訪韓すれば韓中関係がTHAAD配備以前の状態に戻る」という期待は幻想だ。

 習近平時代の中国は「中国モデル」「中国案」を新たな国際秩序として掲げている。ところが、現在中国が示す「中国式秩序」に同意できるかという質問をめぐり、韓国社会は分裂している。韓国政府がこの質問を避けるような行動を取っている間に、「反中世論」は過去最高の水準に上り、中国問題をめぐる国内の対立は、しばしば政治的目的に悪用されている。いまこそ中国の変化を正確に分析し、変化した韓中関係の「ニューノーマル」に適した対中外交の新たな方向を、韓国社会がじっくり作り上げていくべきだ。

 米中の「新冷戦」で両極端に偏らない中間国家たちが「第3地帯」を形成し、緊張を緩和する構想に進展が見られるためには、韓国も原則を明確にしなければならない。実際、ドイツの外交・国防分野の高官らが最近、韓国政府高官らとの面会で、中国に対する両国の立場が似ているとし、韓国の対中政策に深い関心を示したという。ドイツにとっても、中国は重要輸出市場であり、米中間のバランスについて悩んできたことは共通している。しかし、ドイツ政府は中国との外交で、新疆ウイグルや香港の状況について問題を提起し続けている。同時に、経済や気候変動問題の解決などで中国との協力は続けていくという原則を打ち出している。韓国は中国問題に沈黙するのではなく、「批判と協力の原則」を明確にしつつ、これを共有できる国家間の協力を広げていく戦略を推進すべきである。

 G7に韓国、オーストラリア、インドを加えてG10に拡大するという構想は、今回のサミットでは進展が見られなかったが、韓国がこれから示す役割によっては、可能性は残っている。先端技術と民主主義を共有する国家の連合(T12)や民主主義10カ国(D10)など、新たに論議される国際協力の枠組みにおいても、韓国に対する国際社会の期待は高い。

 中国に対しては協力を続けるが、現在の「中国式秩序」には同意できない部分があり、より肯定的な代案を提示したいというシグナルを発信していく必要がある。韓中がより良い方法で共存できる道を模索するためにも、韓国は韓中関係の「ニューノーマル」を直視すべきだ。

//ハンギョレ新聞社
パク・ミンヒ論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/999806.html韓国語原文入力:2021-06-17 19:22
訳H.J

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