ソウルの漢江(ハンガン)公園での大学生死亡事件をめぐり、死亡したSさんの友人Aさんに対する憶測と攻撃が危険水位を超えている。Aさんの実名や顔などの身元情報の暴露だけでなく、Aさんの犯人扱いがユーチューブなどのオンライン上で広がっている。虚偽情報に基づいた陰謀論も幅を利かせている。社会的に注目が集まる事件が発生すれば、オンライン上で根拠のない主張が広まるのが基本となってしまった時代ではあるが、今回はそれが度を越している。
いつものように、今回の事件でも陰謀論はフェイクニュースを栄養分として拡大している。Aさんの母方の叔父は警察幹部だという主張が代表的な例だ。実名まで挙がった警察幹部は「親戚関係どころか、まったく面識もない間柄」と反論した。Aさんの父方の伯父は現職の法務部の高官だとか、Aさんの父親は大手法律事務所の弁護士だという虚偽情報も出回っている。Aさんの家族の中に有力者がいるため、警察が捜査を十分に行えずにいるというのが陰謀論の骨子だ。今月16日に漢江公園で開かれた「故Sさんのための平和集会」の参加者たちは「公正な捜査」を求め、今回の捜査を担当する瑞草(ソチョ)警察署まで行進を行ってもいる。
もちろん、突然子どもを失った親の悲痛な心情を察し共感するのは、共同体の構成員として当然のことだ。しかし、憶測と攻撃は追悼とはなり得ない。特に、根拠のない陰謀論を拡大再生産している一部のユーチューバーの行動は、犯罪行為と同じだ。悲しい死さえ金儲けの手段として利用する態度は、これ以上容認されてはならない。
Aさん側は17日、文書で立場を表明し、世間の憶測に反論した。Aさん側は「警察の捜査結果を見て判断しても遅くないはず」とし「このような状況だと、Aさんの無実が明らかになっても、Aさんと家族が普通の生活に戻ることは難しいのではないかと懸念される」と訴えた。今は落ち着いて警察の捜査を見守るべき時だ。