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[社説]日本の「慰安婦」被害者への賠償責任否定した没歴史的な判決

登録:2021-04-22 03:56 修正:2021-04-22 07:50
ソウル鍾路区の旧駐韓日本大使館前の平和の少女像。21日、ソウル中央地裁民事合議15部(ムン・ソンチョル部長判事)は、故クァク・イェナムさん、故キム・ボクトンさんやイ・ヨンスさんら被害者と遺族20人による日本政府への損害賠償請求を却下した/聯合ニュース

 日本軍「慰安婦」被害者たちが日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で21日、原告の請求が却下された。日本政府の責任を問う訴訟そのものが成立しないというもの。同じ趣旨の訴訟で裁判所は今年1月、日本政府に対し被害者1人当たり1億ウォン(約967万円)の賠償を命じる判決を下しているが、これと相反する結果だ。日帝の反人道的犯罪に責任を問い、実質的正義を打ち立てようとした前回の判決とは異なり、今回の判決は国際慣習法などの形式的要件に埋没し、消極的な態度を取ったものとなった。

 裁判の最重要争点は「国内の裁判所は他国に対して裁判権を行使できない」という「国家免除(主権免除)」の法理だ。先の判決は、「慰安婦」強制動員のような「反人道的な犯罪」は国家免除法理の例外だと述べたが、今回の判決は国際司法裁判所(ICJ)の多数意見に寄りかかってこのような例外を認めなかった。

 国際慣習法は、強者が支配する国際秩序を反映せざるを得ない。「慰安婦」問題を被害者の立場から取り扱うことには明らかな限界がある。イタリアとギリシャの裁判所も、ナチス・ドイツによる自国民に対する人権蹂躙行為に対し、国家免除を認めない判決を下したことがあるが、ICJでドイツに敗訴している。しかし、少しずつ国際社会が人権と正義を普遍的価値と認識しつつあるだけに、各国の努力が加われば国際慣習法も変化せざるを得ないということを、今回の法廷は看過している。

 「慰安婦」問題は国際法の形式的枠組みに閉じ込められるべきものではなく、韓国の憲法と国際人権法が最高の価値と宣言している人間の尊厳に照らして判断しなければならない。裁判所は、憲法の掲げる国際法尊重の原則は強調しつつも、被害者の尊厳の回復は軽視したようだ。「外交的な屈辱」である朴槿恵(パク・クネ)政権による12・28韓日慰安婦合意を、被害者に対する権利救済の手段として評価していることも受け入れがたい。

 判決は「慰安婦問題の解決は、韓国と日本の政府の対内外的な努力によって実現されねばならない」と注文しているが、日本政府の態度を見れば空虚な話だ。「慰安婦記録」の「世界の記憶」への登録さえ、日本の要求により先日ユネスコの規定が変わり、危機を迎えている。日本の歴史教科書は1993年の「河野談話」をかなぐり捨て、「慰安婦」の強制性についての記述を消してしまっている。人間性を踏みにじった戦時性暴力であるという「慰安婦」問題の本質を国際社会と歴史に刻みつけるには、外交努力だけでなく司法的評価も鮮明でなければならない。司法府は「人権の最後の砦」という役割を思い出し、上級審では今回の判決を正してほしい。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/992039.html韓国語原文入力:2021-04-21 18:31
訳D.K

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