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30年の慰安婦闘争史で「最大の暗礁」…日本政府による謝罪と賠償、行き詰まり

登録:2021-04-22 03:54 修正:2021-04-22 08:32
朴正煕政権の「65体制」の壁に阻まれ 
朴槿恵政権の「12・28合意」が結局足を引っ張る 
裁判所「被害者救済の代替手段存在」 
 
慰安婦のほか強制動員、汚染水 
悪材料は相変わらず 
政府「被害者の名誉回復に努力」原則論のみ 
韓日関係改善には当面影響しない見込み
21日、ソウル瑞草区のソウル中央地裁での判決後、イ・ヨンスさんが裁判所から出て来て立場を明らかにしている。同地裁民事合議15部はこの日、故クァク・イェナムさん、故キム・ボクトンさん、イ・ヨンスさんら被害者と遺族20人による日本に対する損害賠償請求を却下した/聯合ニュース

 「つかまえて放してくれない、つかまえて放してくれないんです。日本の軍人が…。それでしかたなく泣きながらやられる。私が死ぬ前に必ず、せめて言葉ででも恨みを晴らしたいのです」

 30年前の1991年8月14日、金学順(キム・ハクスン)さん(1924~1997)が日本軍「慰安婦」だったことを初めて実名告発した時、韓国社会は耐えきれない悲しみと羞恥心を感じた。以来、慰安婦被害者たちの苦しみに共感して、名誉を回復し、日本政府から正しい謝罪を引き出すことは、韓国社会が必ず達成すべき「時代的課題」となった。最初は女性たちが「業者に騙されて行ったもの」という不誠実な回答にとどまっていた日本政府は、1993年8月4日、慰安婦に対する軍の関与と動員の過程の強制性を認めた「河野談話」を出すことになる。

 韓日間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」とする1965年(韓日請求権協定の)体制の壁は、堅固で高かった。日本政府は1995年7月に「アジア女性基金」を設立してこの問題の解決を図るが、65年体制のため政府予算は投入できないと言い張った。慰安婦問題が国家犯罪であることを認めて「法的責任」を受け入れるのではなく、「道義的責任」を認めるにとどまったのだ。韓国社会は「法的責任」を認めないアジア女性基金を拒否し、いつ終わるとも知れぬ対日闘争に乗り出した。

 状況が変わったのは、慰安婦問題は「65年協定に含まれない」という2005年8月の韓国政府の見解が出てからだった。では、なぜ政府はこの問題の解決に取り組まないのか! このような韓国社会の切迫した問いに、2011年8月、憲法裁判所が応えた。日本政府と交渉しない韓国政府の「ずうずうしい不作為」が違憲であることを宣言したのだ。以降、慰安婦問題は韓国政府が必ず解決しなければならない「外交課題として」歴史の前面に再浮上した。

 2013年からは、朴槿恵(パク・クネ)政権と安倍晋三政権との間で凄絶な慰安婦外交が始まった。しかし、「中国の台頭」に韓米日は共同で対応すべきとする米国の圧力に押され、2015年末に朴槿恵政権は12・28(韓日慰安婦)合意を飲んでしまう。この合意を通じて安倍晋三前首相は、自分が認めるのが「法的責任」なのか「道義的責任」なのかを明らかにせずに「責任を痛感する」と宣言し、その延長線上でこれまで拒否し続けてきた10億円の政府予算支出を受け入れた。その代わりとして韓国政府が約束したのは、この問題の「最終的かつ不可逆的解決」だった。2016年末のろうそく集会で政権についた文在寅(ムン・ジェイン)政権は「この合意によって慰安婦問題が解決されてはいない」としつつも、2018年1月には「再交渉」は求めないと述べた。この時点ですでに慰安婦問題は、韓日両政府が「解決すべき」懸案ではなく「管理すべき」懸案として格下げされたのだ。

 その後、2021年1月8日、多くの人の予想を覆す判決が出た。裁判所が国際慣習法上の主権免除(国家免除)原則を破って、日本政府に慰安婦被害者への賠償を命じる判決(1件目の判決)を下したのだ。しかし文在寅大統領は新年の記者会見で、この判決について「少し困惑したのは事実」と述べ、裁判所は先月末、勝訴した原告が日本の国家資産を強制執行する道をふさいだ。

 そして裁判所は21日、2件目の裁判の判決で原告の訴えを却下した。裁判所は、1件目の判決においては慰安婦のような「反人権的不法行為」には適用できないと判断した主権免除の原則を受け入れ、「この事件の被害者たちに対する『代替的な権利救済手段』」である12・28合意が存在すると判断した。慰安婦問題の最終解決策として12・28合意を認めたのである。抗告の手続きは依然として残っているが、被害者が法的に救済される可能性は今のところかなり低くなった。慰安婦問題解決のための30年に渡る闘争史にとって、重大な分岐点となったのだ。

 この判決は、韓日関係改善の流れへと導くことはできないだろう。両国は依然として北朝鮮と中国に対する「戦略的な見解の相違」という根本的な問題を抱えており、強制動員被害者賠償判決などの積年の難題、福島原発汚染水の海洋放出という新たな悪材料で対立している。

 韓日両国政府は、判決に対する具体的な言及は控え、原則論的な立場のみを明らかにしている。外交部は「本日の判決に関する詳細内容を把握中であり、これに関する具体的な言及は控える」としつつ、「韓国政府は被害者中心主義の原則に則り、日本軍慰安婦被害者の名誉と尊厳を回復するために政府がなしうるあらゆる努力をしていく」と述べた。続いて、日本に対しては「慰安婦問題は、世界でも類を見ない戦時の女性に対する人権蹂躙かつ普遍的な人権侵害の問題であり、日本政府には、1993年の河野談話や2015年の12・28合意などで自ら表明した責任の痛感と謝罪、反省の精神に見合った行動を示すことを求める」と述べた。

 日本政府の反応は冷淡だった。加藤勝信官房長官は午前の定例記者会見で「内容を精査する必要があり、現時点で政府としてのコメントは差し控えたい」と述べるにとどまった。

キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/992000.html韓国語原文入力:2021-04-21 16:28
訳D.K

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