ジョー・バイデン政権はアフガニスタン、イラクなどの国外での米国の「永遠の戦争」を終わらせると約束した。しかし、米国内での「永遠の戦争」はどうか。
2020年には、ほぼ2万人の米国人が銃器による暴力によって死亡した。パンデミックと経済的封鎖は米国人同士の殺し合いを止められなかった。この20年間のどの年よりも多い数字だ。これには毎年発生する2万4000人の銃による自殺者は含まれていない。
暴力は2021年にも止んでいない。ジョージア州アトランタとコロラド州ボルダーで1週間のうちに起きた2件の銃乱射は、米国が戦争地域だということを改めて想起させる。
米国は1人当たりの銃器所有率が世界で最も高い。平均で100人当たり120丁を保有している。米国に近い国は、100人当たり52丁の銃を持っているイエメンだ。イエメンは本当に戦争をしているが、1人当たりの銃器の数は米国の半分にも満たない。
米国において銃器販売業者は相変わらず繁盛している。暴徒が米国議会の議事堂を襲撃した今年1月に、米国人は200万丁以上の銃を購入したが、これは1カ月当たりとしては史上3番目の記録となった。
もちろん、すべての米国人が銃を所有しているわけではない。複数の銃器を持っている人が多いのだ。彼ら銃器所有者は大きな政治的力を持っている。米国で最も強力なロビー勢力の一つである全米ライフル協会(NRA)は500万人の会員数を誇る。
全米ライフル協会のせいで、議会は穏健な銃器規制さえ可決させることができていない。例えば2013年に、下院は銃器乱射に多く使われる突撃小銃(AR)の禁止法案を可決した。コネチカット州サンディフックの小学校で起きた銃撃事件が、6~7歳の子ども20人の命を奪ってから1カ月後のことだった。しかし、同法案は上院の壁を越えることができなかった。
銃器賛成派は、米国憲法修正第2条が銃器所有権を保護していると主張する。この条項は「規律ある民兵隊は、自由な州(State)の安全保障にとって欠かせないため、人民が武器を保有し携帯する権利は、これを侵してはならない」となっている。全米ライフル協会は、憲法はすべての市民の銃器所有権を保護しているのだと主張するために「人民の権利」という文言に焦点を当てている。しかし、この条項は明らかに武器保有の権利を「規律ある民兵隊」の維持と結びつけている。憲法が制定された際には、その立案者たちは連邦政府の暴政から守るために民兵隊を維持する各州の重要性を考えていた。この条項は、個人の権利ではなく、規律ある民兵隊の中での武器所持に焦点を当てているのだ。
最高裁はこの解釈を維持したが、2008年に拳銃所持を禁止するワシントンD.C.の法を5対4で覆した。1人の最高裁判事の見解が、米国の銃器所有についての判例を変えたのだ。
米国が国外で繰り広げる「永遠の戦争」は、国内の銃器による暴力にも影響を及ぼした。アフガニスタンとイラクでの戦争によって心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱える参戦兵士たちが発生しているが、毎日約11人、年間4000人の参戦兵士が銃で自ら命を絶っている。第2次世界大戦に参戦した兵士たちが1949年にニュージャージー近辺で13人を殺害した事件をはじめ、参戦兵士たちは銃乱射事件を起こしてもいる。ある推定によると、大規模な銃撃犯の3人に1人以上は米軍の訓練を受けていた。
米国で銃乱射事件が発生する度に、政治家は何かをすると約束する。しかし、銃はどこにでもある。そして、米国文化はビデオゲームやハリウッド映画から狩り、ペイントボール(ペンキが入った弾丸を撃つゲーム)まで、暴力に満ちている。西部開拓時代が過ぎてから100年以上が経っても「ワイルド・ウエスト」の気風が米国に蔓延している。
銃器暴力は、米国が国内外で非武装化するまで消えないだろう。第1段階は米国の戦争中毒を終わらせることだ。我々が人を殺すのをやめれば、自らを殺すことも止められる。
ジョン・フェッファー|米国外交政策フォーカス所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )