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[コラム]コロナとバイデン、「アメリカ例外主義」の終焉

登録:2020-11-10 09:18 修正:2020-11-10 10:41
COVID-19への対応と大統領選開票過程で現われた混乱は、一つの共通点を持つ。半世紀以上米国が誇らしく掲げてきた「アメリカ流」に対する過度な自信が状況を悪化させたという点だ。「米国は“特別な国”であり、米国の方法が常に最高という“アメリカ例外主義”(American Exceptionalism)”が指導者と市民の目をくらませた」という指摘は、その点で的を射ている。
ジョー・バイデン候補の当選が確定した翌日の8日(現地時間)、民主党支持者らが二階建て貸し切りバスに乗ってニューヨーク都心を回り、勝利を祝っている。ドナルド・トランプ氏が流行させた「YOU'RE FIRED!」と書かれた横断幕が張られている=ニューヨーク/ロイター・聯合ニュース

 米国のジョー・バイデン次期大統領は7日(現地時間)、国民向け演説で「分裂ではなく統合を追求する大統領になる。米国が再び世界から尊敬されるようにする」と約束した。彼の言葉はトランプ政権の4年間での極端な対立と軋轢に疲れた米国内外の期待を高めるものだったが、はたして約束を守れるかどうかは信用をおくことができない。今の米国の現実は、バイデン氏の伝統的かつ無難な演説だけでは解決できない地点に達したことを如実に示している。世界で最も多くの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者(1千万人)と死者(24万3千人)が出た国、大統領選挙の勝敗を確定するのに1週間近くかかる現実は、米国が本当に世界最強の国なのかという疑問を抱かせる。

 COVID-19への対応と大統領選開票過程で現われた混乱は、一つの共通点を持つ。半世紀以上米国が誇らしく掲げてきた「アメリカ流」に対する過度な自信が状況を悪化させたという点だ。欧州も類似した状況だが、特に米国は世界で最も先進的で強力な防疫システムを持っていると自負してきた。そのため、他国で何かを学ぶことに無関心だったし、それを受け入れるのにもかなりの時間がかかった。韓国や台湾、シンガポールなど“小さな国”が重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)から何を学び、その後、防疫システムをどう変えたのかについて、米国は関心を持たなかった。

 米国国際開発局(USAID)の局長を務めたジェレミー・コニンダイク氏が「フォーリン・アフェアーズ」誌に寄稿した文で「米国が(COVID-19への対応で)失敗した主な要因は科学や医療的欠陥ではない。米国は“特別な国”で、米国の方法が常に最高だという“アメリカ例外主義”(American Exceptionalism)が指導者と市民の目をくらませた」と指摘したことは、その点で的を射ている。

 大統領選挙の投開票過程も同じだ。選挙は民主主義制度の核心だ。選挙が公正かつ正確であるという信頼がない限り、大衆民主主義は成り立たない。ところが、21世紀のデジタル時代に大統領の当落を判断できるほどの開票を進めるのにかかった時間が5日だ。過去、一部途上国で選挙開票に1週間もかかるという報道を見たことはあっても、「民主主義の教本」である米国でこのようなことが起きるとは誰も想像できなかっただろう。現代政治で開票の遅延は致命的な結果をもたらしかねない。フェイクニュースがリアルタイムで伝えられる状況で、遅い開票作業は政治的混乱につながりやすい。

 最後まで接戦を繰り広げたジョージア州の電子投票機は、昨年アップデートされたもので、6月の予備選挙の際、コンピューターが作動せず一度問題になったことがあり、投票・開票の従事者が操作方法を熟知していたかどうかも疑問だと、政治専門誌「ポリティコ」は指摘した。ペンシルベニア州の67郡のうち8郡では、電子投票機の作動方式が異なり、ハッキングと誤作動の危険がより高いという。かつては寛容と妥協、信頼と承服が相まって制度および機械の欠陥を克服し、これが真の「米国民主主義の力」であるかのように称賛された。

 2000年の大統領選挙で、史上初のフロリダでの票再検査で激しい混乱に陥った際、これを早期に解消したのは、アル・ゴア民主党候補の承服だった。今回のように、最後の一票まで票の再集計を行ったなら、アル・ゴア氏は大統領になっただろう。しかし民主党とメディアが先頭に立ってアル・ゴアを圧迫し、ゴア氏は連邦最高裁判所の「再集計中止決定」を潔く受け入れた。もう20年も前のことだ。2020年の米国政治には、このように分裂を防ぐための譲歩や自発的な承服、陣営を超えた統合の動きはあまり見られない。

 トランプ氏個人のキャラクターが混乱と対立を煽っていることは事実だ。しかし、必ずしもトランプ氏でなくても、政治の二極化とこれによる尖鋭な対立は米国だけでなく、ほとんどの国が直面した問題だ。超高速インターネット時代に、州ごとに、郡ごとにそれぞれ異なる方式のアナログ式開票を進めるのは、いつでも深刻な問題を引き起こしかねない。「K-防疫」だけが優れているわけではなく、マンションの棟代表選挙にまで適用される韓国のK-ボーティング(K-Voting)システムも、米国より一枚上であることは明らかなようだ。

 「世界から再び尊敬される米国」を作るためには、まさにこの地点から出発すべきではないかと思う。米国大統領が政治的レトリックとして「統合」や「自由」、「民主主義」を掲げるだけで、全世界の人々の心を動かせる時代はもう終わった。今年起きた2つの事件は、世界唯一の大国である米国も徐々に衰退しているという象徴的なシグナルかもしれない。もう米国が世界の標準ではないという点、韓国を含む多くの国の助言に耳を傾けることが切実だという点、これに気付いてこそ、米国がトランプ氏の泥沼から成功裏に抜け出せるだろう。

//ハンギョレ新聞社
パク・チャンス先任論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/969180.html韓国語原文入力:2020-11-100 02:37
訳H.J

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