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[寄稿]米大統領選後に開かれる機会の窓

登録:2020-11-06 02:45 修正:2020-11-06 09:19

 2年前の夏、筆者はニューヨークでヘンリー・キッシンジャー元国務長官に会った。95歳のこの老人は、当時楽観的な展望がわき上がっていた朝米対話について、このように述べた。「なぜ米国と北朝鮮の非核化交渉が成功すると考えるのか。中途半端な期待はするな。重要なことは韓国国民の意志だ。トランプばかりを信じず、韓国が平和を作るという意志を固めよ」。2019年にハノイでの朝米首脳会談が決裂した後、キッシンジャーの言葉は痛みを伴って迫ってきた。

 国の中長期的な生存戦略を駆使するにあたって、長きにわたって我々自身を押さえつけてきた2つの考え方がある。一つ目は同盟を神聖視する考え方だ。これによると、韓国はひたすら米国の懐で安全を追求すべきであって、他のことを考えてはならない。安保は米国と、経済は中国と追求する二股はもはや通用しない。同盟の考え方は、今や確実に「我々は米国の味方だ」と宣言すべき地政学の時だと主張する。二つ目は、民族の価値を絶対視する考え方だ。米国は厳然たる外国勢力なので、いつかはこの地から出ていかねばならない。だから今や南と北、我が民族同士が団結し、我々の運命に不当に干渉する外国勢力を排撃すべき統一の時だと主張する。同盟か民族かを二者択一せよと強要する悪い習慣だ。離婚する親を持つ子どもが、父親か母親かを選択するジレンマに直面するのと同じだ。我々はそれほど弱い存在だということが前提となっている。奇妙なことに、一般国民よりエリート専門家であればあるほど偏向的だ。一見すると非常に相克の主張のように映るこの二つの主張にも、自らに選択を強いるという共通点がある。我々は周辺列強に囲まれた小さな存在ではないかという弱小国の情緒だ。実際に、近世以来韓国の歴史は苦難と試練で綴られてきたのだから、我々の精神的遺伝子の中にも被害意識が深く刻まれている。同盟、または民族の価値を絶対化してきたことの出発点は、安全に対する熱望だった。しかし、まさにここで副作用が発生した。より強くなった自分を発見できないまま萎縮したプライド、恐怖に震えながら自ら運命を開拓することを知らない弱さと卑屈さを当然視する人々。筆者はこれを「周辺原理主義者」と呼びたい。

 3億人のイスラムに包囲された人口700万のイスラエルには米軍が一人もいない。にもかかわらず、行動の自由を享受しつつ生存している。タイ、インドネシアのような大国に囲まれた人口700万の都市国家シンガポールは、米国と中国を激しく批判する厳然たる自主国家だ。安保の現実の厳しさでは、国として認められることもなく、武器輸入も自由でない2300万の台湾の方が、韓国よりましだとは決して言えない。にもかかわらず、台湾は恐れることなく柔軟な生存戦略を駆使する。ロシアの脅威に直面する人口1000万のスウェーデンと、それよりさらに小さなフィンランドはどうか。吹けば飛ぶようなこれらの国々に比べれば、大韓民国はとてつもない大国だ。にもかかわらず、在韓米軍の数が一人でも減るのではないかと戦々恐々としている国だ。戦時作戦権も保有できず、休戦協定署名国でもない大韓民国は、主権の相当部分を行使できない境遇に置かれている。事実上、戦犯国や敗戦国のような扱いを受けるのだが、周辺根本主義者の多くはこれを当然視する。朝鮮半島問題は厳然として韓国の生存の問題なのに、米国と北朝鮮の交渉を待つだけの「仲裁者」と自らを規定しているのだから、これもまた荒唐無稽なことだ。依然として「韓国は弱小国」という認識でなければ不可能なことだ。

 自由な精神の上で強靭な生存の意志が表出される躍動的な国家建設、それほど難しいことなのか。なぜ韓国は、長期的な視点から朝鮮半島周辺情勢を主導する中堅国家の生存戦略を駆使できないのか。いま米大統領選で見られる混乱は単なる選挙の問題ではなく、民主主義そのものの危機だ。当面、米国は北朝鮮に対していかなる政策を執行することも難しい状況だ。おそらく短期間のうちに北朝鮮の非核化と朝鮮半島の緊張緩和を期待することもできない。しかし、このような真空状態こそ、大韓民国が朝鮮半島情勢を決定する中心国家へと飛躍する絶好の機会だ。かつて金大中(キム・デジュン)大統領がクリントン大統領に教示して「ペリー・プロセス」を誕生させた黄金の歴史が厳然として存在する。重要なことは、米国の大統領が誰になるかではなく、韓国はどのような国になるのかという意志と努力なのではないか。

//ハンギョレ新聞社

キム・ジョンデ|延世大学統一研究院客員教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/968683.html韓国語原文入力:2020-11-05 14:37
訳D.K

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