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[コラム]中国が米国に読み上げた「宣言文」

登録:2020-11-06 02:42 修正:2020-11-06 10:55

 中国では外国の固有名詞を漢字で音訳して書く。例えばトランプ米大統領の中国式の名前は「特朗普」または「川普」だ。中国のネチズンが呼ぶニックネームは別にある。「川建国」、トランプ大統領の無理な中国叩きによってむしろ中国が目覚めたのだから「建国」を助けたのだという嘲笑だ。

 民主党のバイデン候補は「拝登」と書く。彼にもまた、ネットユーザーがつけたニックネームがある。「中国を復興させた(振興中華)」という言葉から取った「拝振華」だ。バイデン候補が当選してもトランプ政権の対中国政策を受け継ぐだろうということを皮肉った表現に聞こえる。米大統領選挙を控え、中国官営メディアが「2人のうち誰が当選しても中国は意に介さない」という言葉ばかりを繰り返しているのも同じ脈絡と見られる。妙な自信がにじみ出ている。

 「コロナ禍によって世界各国は巨大な試験に向き合っている。中国人民はすでに血のにじむような努力の末、新型コロナ防疫において重大な戦略的成果を収めた。中国経済も安定的に転換しており、世界経済の回復に向けて積極的な力を発揮している」

 米大統領選の開票結果が世界を混沌に陥れていた4日午後8時(現地時間)すぎ、中国の習近平国家主席は第3回上海国際輸入博覧会の開幕式で、画像を通じて基調演説を行った。「一方主義」「保護主義」に対する批判が少々登場するだけで、2500字を超える演説文のどこにも「米国」への言及はなかった。主人公は中国だからだ。

 習主席が同日の演説で強調したのは、「新型コロナ防疫」と「経済回復」の2つだ。「10月20日現在までにマスク1790億枚、防護服17億3000万着、診断検査キット5億4300万セットを150の国と7つの国際機関に支援した」と具体的な数値まで述べた。自負が感じられる。

 中国中央テレビ(CCTV)は毎日、夜のメインニュースで「米ジョンズ・ホプキンス大学の集計結果」を引用し、米国や欧州などで新型コロナがどれほど猛威を振るっているかを詳しく報道する。武漢封鎖時には人権を云々していたが、「生命権」より重要な「人権」があるのかと問い詰めているように感じる。

 危機を克服して反騰した経済は、中国のもう一つの誇りだ。習主席はこの日の演説で「中国の人口は14億人に達し、中産層は4億人を超える。世界で最も潜在力の大きい市場だ。今後10年間で中国の累積輸入額は22兆ドルを超えると推算される」と強調した。

 「世界の工場」は昔の話だ。中国はすでに「世界で最も大きく、魅力的な市場」となった。中国が2018年秋から上海国際輸入博覧会を始めたのも、これを内外に誇示するためだ。習主席はこの日、新型コロナで沈滞の沼に陥っている世界に向けて「中国は協力と団結を通じて、誰もが利益を得られるよう開放を全面的に拡大する」とし「国内外の市場をつなげて効率を高めるとともに、経済活動に必要な資源を共有する」と述べた。そして次のように強調した。

 「国際社会に肯定的な力を吹き込むために、中国市場を世界の市場、ともに享受する市場、全ての人の市場にしていきたい」

 米大統領選の結果は依然として霧の中だ。大勢に乗ったように見えるバイデン候補の当選が確定したとしても、混乱は当分続かざるを得ないように見える。習主席は「米国」を口にしなかったが、4日夜に彼の演説を聞き、「混沌の地」米国が重なって見えた。習主席が米国の次期大統領に向かって一種の「宣言」を読みあげているという感じをぬぐえなかった。

//ハンギョレ新聞社

チョン・インファン|北京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/968746.html韓国語原文入力:2020-11-05 18:54
訳D.K

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