裁判所は20日、世界最大の児童性搾取サイト「ウェルカム・トゥー・ビデオ(W2V)」の運営者S受刑者に対し、犯罪者引渡し拘束令状を交付した。昨年5月に1年6カ月の実刑が確定して服役中のS受刑者は、27日の出所を目前に控えている状態だった。S受刑者は出所できないまま、即時米国に引き渡される可能性が高い。法務部は昨年4月、米司法省から犯罪者引渡しを要請され、関連議論を進めてきた。
S受刑者が米国に引き渡されれば、韓国よりもはるかに重い処罰を受けることになるのは確実だ。米国裁判所は、児童性搾取物を製作すれば初犯でも15~30年刑を宣告する。ウェルカム・トゥー・ビデオからダウンロードした違法動画を所持していただけの自国男性に、懲役10年の刑を言い渡してもいる。米国はS受刑者の「国際マネーロンダリング」容疑まで見据えているという。韓国とはあまりにも対照的だ。
ウェルカム・トゥー・ビデオ事件は、32カ国の協力捜査によって明らかになった国際犯罪だ。だが、検挙された310人のうち実に223人が韓国人だった。これは決して偶然の結果ではない。以前にも「ソラネット」、「AVSNOOP」、「ヤン・ジンホ・ウェブハード」などの事件が絶えず起こってきたが、いずれも甘い処罰にとどまった。ウェルカム・トゥー・ビデオ事件でも、利用者の大半は罰金刑や執行猶予付きの刑を受けたに過ぎない。そして我々はまたもや「n番ルーム」事件と向き合うことになった。
韓国の法律、量刑基準、司法判例は性搾取犯罪に対する「制度的避難所」になっていると言っても過言ではない。S受刑者に対する米国の司法手続きとその結果は、性搾取犯罪に対して甘い処罰で一貫してきた韓国の素顔を赤裸々にあらわにするだろう。どうしてこのような極悪な犯罪を自ら厳罰に処すことができず、他国の手に委ねることになったのか。嘆かわしい限りだ。
n番ルーム事件に世論が沸き立つと、政府や政界などは「n番ルーム再発防止3法」の推進や量刑基準の強化など、遅ればせながら対策作りに乗り出した。しかし、先月成立したディープフェイク法(性暴力犯罪処罰特例法の一部改正)は、製作注文者に対する処罰条項が抜けており、実効性に対する憂慮が出ている。国会での議論の過程で「芸術作品だと思って作ることもある」、「青少年たちは頻繁にそういうことをする」というあきれた言葉が行き交ったことを考えれば、こうした「隙」も偶然発生したと見ることは難しい。第20代国会は残りの任期中にn番ルーム関連法を必ず処理し、最高裁は早急に量刑基準を強化すべきだ。