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既成世代の性文化が教室で日常化…「性搾取はすでに学校にあった」

登録:2020-04-13 09:00 修正:2020-04-13 17:54
青少年5人が語る「n番ルーム事件」と解決策 
既成世代が作った男性連帯文化、女性の純潔を強要する社会を作り 
男性の性犯罪は「失敗」と考え、女性の逸脱は「性の乱れ」と非難 
「親に言うぞ」という加害者の脅迫…家庭が「しつけ集団」に転落したという証拠 
性認知の感受性・性別ヘイトまで扱った包括的な性教育の討論場を設置すべき
青少年フェミニズム団体「ウィティ」などのサポートで集まった5人の男女の青少年たち。左からユンダル(活動名・16・女) チョン・ジウォン(18・女) チェ・ヘソン(18・男) キム・ジョンヒョン(仮名・18・男) トウン(活動名・17・女)//ハンギョレ新聞社

 「n番ルーム事件」をはじめ、韓国社会の怒りを買ったテレグラムの性搾取犯罪の主な標的は、青少年を含む20歳前後の女性だった。被害者らの人生を破綻させる驚愕の犯罪を犯した主要共犯の中にも、まだ20歳未満の青少年が数人含まれており、さらにショックを与えた。また、他のセキュリティメッセンジャーの「ディスコード」で性搾取ルームを運営したり、性搾取物を流布して警察に捕まった10人のうち8人も青少年だった。

 既成世代(旧世代。いまの社会の中核を担う世代も含む)の一部は、n番ルーム事件に対し「最近の10代は怖い」と言う。10代の青少年たちの考えは違った。青少年たちは「既成世代に蔓延した男性連帯と強姦文化(女性に対する性暴力を合理化する文化)が教室でも日常化して起こった結果」だと口をそろえた。ハンギョレは9~12日、青少年フェミニズム団体「ウィティ」などのサポートで5人の男女の青少年に深層インタビューを行い、n番ルーム事件の原因と解決策について聞いてみた。

 青少年たちは何よりも「既成世代が問題の原因を提供しておいて『非行青少年の問題』と線引きしている」と怒りをあらわにした。10代の男性の性犯罪は旺盛な好奇心から始まった“失敗”と考え、10代の女性の「逸脱」は“性の乱れ”と非難する風土は既成世代の遺産であり、このような教育と文化がn番ルーム事件を生んだというのが、彼らの説明だ。女性青少年のチョン・ジウォンさん(18)は「10代の女性青少年を性的に対象化しながら、女性青少年が性に関して言うとわいせつさや性の乱れと規定する社会の雰囲気がある」と指摘した。男性青少年のキム・ジョンヒョンさん(仮名、18)は「教室で男子が同年代の女子生徒の写真を見ながら性的な発言をした場合、これを不快だというと『高潔な奴』とからかわれる。その時、同調して黙認する雰囲気が男子を性犯罪に対して鈍感にさせる」と話した。青少年たちはかびの生えた方式の性教育を覆さない限り、多くの「n番ルームの同調者」が絶えないと口をそろえて言う。

■「親に言うぞ」はどのようにして脅迫になったのか

 「純真無垢さ、純潔さ、何も知らない、そして『娘みたい』。女性青少年にはいつもこのような修飾語が付きまといます。そこから少しでも外れると『非行青少年』になるんです」。女性青少年のユンダル(活動名・16)はこう指摘した。「被害者は絶対に通報できないだろう」というテレグラム性搾取加害者の盲信はここから始まるというのが、彼らによる説明だ。ハンギョレのインタビューに応えた青少年たちは、その背景に「10代が性について語ることをタブー視する文化」の定着があると見ている。特に、韓国社会が女性青少年にかぶせる「純潔」と「性的対象」という二重のイメージは、女性青少年が脅迫されても周りに助けを求めることを難しくさせた。

 テレグラム性犯罪被害者のうちの一部は、露出写真などを掲載したソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の「逸脱」アカウントを運営していた。青少年フェミニズム団体のウィティは「性を欲望する女性青少年には、匿名性を借りて自分をさらけ出す『逸脱』だけが許された」と説明した。そのような被害者たちに「お前の親に知らせる」というn番ルームの犯罪者らの脅迫が与えた影響は強力だった。「女性青少年が性的欲望を表わしたり話すのは間違っているという考えのせいで、犯罪被害に遭っても助けを求めることができなかったのだろう」という説明だ。約20年前、性的暴行を受けた10代の青少年の映像が「赤いマフラー」という名前で流布した時から、韓国社会は女性青少年の性搾取物を「犯罪物」として断罪せず、「わいせつ物」として消費してきた。犯罪被害にあっても青少年たちが口を開けないのはそのためだ。

 家庭が保護よりも統制としつけの空間である点も、青少年たちの被害の届け出を妨げたと彼らは説明した。チョン・ジウォンさんは「まず警察に知らせて捜査を要請するためには、親に同行してもらわなければならない。そのため捜査機関の支援を受けることが青少年には遠く、難しいこと」だとし、「両親など親権者に知らせなくても捜査を進められるようにし、届け出のハードルを下げてほしい」と話した。男性青少年のチェ・ヘソンさん(18)は「親に知らせるという言葉が脅迫になってしまったのは、家庭が青少年の意思を無視してしつけのための集団に転落したという意味」だと指摘した。

//ハンギョレ新聞社

■既成世代に学んだ「男性連帯」「強姦文化」を踏襲する教室

 青少年にとっては、教室も暴力を内面化する空間だった。教室では性的欲望を思う存分噴出させる部類がある一方、覆い隠す部類がある。5人の青少年は、これを分ける基準が性別だと指摘した。今年高校生になったユンダルは、中学校2年生の授業時間に映画を見た経験を思い出した。「授業時間に映画を見ていたとき、女性の主人公2人が走る場面が出ると、後ろにいた男子たちが大声で下ネタを言ったんです。私もいろんなことを考えるけれど、男子たちだけにこうした発言が許されている」

 性に関して話すことが男性には認められ、女性にはタブーになる背景には、男女を生物学的に分ける論理が隠れている。「男の子はもともと意地悪だ」という論理は、教室でも日常化している。ユンダルは「テレグラム性搾取ルームのチャットを見たが、まったく驚きはなかった。普段教室でも聞くような内容だったから。先生も『男の子たちはまだ子どもだからそうなんだよ』といって聞き流していた」と話した。「結局、先生たちが容認した発言がn番ルームで暴力として現れたもの」という鋭い指摘だ。

 「グループトークのセクハラ」、「外見の品評」、「違法撮影物」など男性の連帯を基盤にした性犯罪は、「先生違法撮影」、「同級生違法撮影」、「母親隠し撮り」という名前ですでに教室でも流行って久しい。ウィティのヤン・ジヘ代表は「n番ルーム事件は、女性の外見の品評や違法撮影物のコンテンツが行き交うグループトーク文化と全く無関係ではない。n番ルーム事件が既存の男性権力とは全く関係がないかのように『最近の子どもは実に困ったものだ』などと言っている場合ではない。こうした構造から断ち切って変えていかなければならない」と指摘した。チェ・ヘソンさんも「日常で向き合う女性ヘイト文化を解決できなかった既成世代に責任がある」と指摘した。チェさんは「男性が女性だけでなく弱者を搾取できる強者と考え“男らしさ”をさらけ出すことが男性連帯の核心だが、これは10代だけの問題ではなく、男性全体の問題だ」と話した。

■「自分の体を守る」にとどまる性教育、ヘイトと性認知の感受性も教えるべき

 青少年たちは「性教育の正常化」が第2のn番ルーム事件を防ぐための出発点だと指摘した。「自分の体は自分で守らなければならない」という伝統的な性教育は、女性ヘイトと強姦文化に基づいた最近の性犯罪予防には何の役にも立たない。むしろ性犯罪を同年代の文化の中の権力関係や遊び程度に考えさせる結果だけを生んだ。女性青少年のトウンさん(活動名・17)は「性教育をするとき、いまだに男子生徒には欲望をどう解消するかを教え、女性には性器は大事な部分なのでむやみに触れられないよう守らなければならないと言う。性教育をする時、女性に関する話が出れば男子はげらげら笑うだけ」とし、「新しい女性主義的観点が含まれた性教育が必要だ」と語った。男性青少年のキム・ジョンヒョンさんも「n番ルーム事件以降、『子どもたちを守らなきゃ』という声ばかり出るのが残念だった。学校内で自分が受けた性教育も『自分の身を守らなければならない』というレベルで止まっているため」とし、「またこの問題をめぐり青少年を性から隔離、保護しなければならないという声が高く、解決策が見えないと思った」と話した。

 彼らは性認知の感受性と性別ヘイトまで人権教育をともに扱う包括的な性教育を解決策として提示した。公教育という場で、10代たちが真剣に性を討論する場を設けなければならないということだ。チェ・ヘソンさんは「女性ヘイト、性犯罪問題に関し、学校だけでなく社会でも論議を避けてもみ消してきた。いまや学校が、それが間違っているということを聞き分けるまで言い続けなければならないとき」だと述べた。

オ・ヨンソ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/936747.html韓国語原文入力:2020-04-13 07:49
訳C.M

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