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[コラム]トランプと金正恩の時間

登録:2018-08-09 22:26 修正:2018-08-10 08:01
ファン・ジュンボム・ワシントン特派員//ハンギョレ新聞社

 「ワシントンに来られたことを歓迎します。幸運を祈ります!」

 特派員として仕事をするために3週間前にここワシントンに到着して会ったシンクタンク関係者たちと外交消息筋は、このような挨拶で迎えてくれた。彼らの「グッドラック!」という言葉には、儀礼的な挨拶以上の“真心”が含まれている。ある人は「トランプ狂気の時代にアメリカにくるとは…」として残念がり、はなから「大変だな」として肩をたたいてくれる人も少なくなかった。予測不能なドナルド・トランプ大統領の統治、そしていつまで続くやもしれない朝米間の綱引きなど、険しい道が待ち構えているという話だ。

 その渦中に慰安してくれる人々もいた。あるシンクタンクの要人は、「今は平穏な時ゆえに適応するにはとても良い時期だ」という話だ。昨年、トランプ大統領の「炎と怒り」発言に代表される朝鮮半島戦争ムードから、今年の6・12シンガポール朝米首脳会談まで両極を行き来して激変の時期を越えてきた数カ月に比べれば、今は「静かな季節」ということだ。それだけシンガポール首脳会談以後の合意事項履行に速度がつかない状況をいう。

 事実、6・12首脳会談だけでも朝米関係は全く違う次元に入った。いま米国で会う誰もが、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)に対する恐怖やトランプ大統領の対北朝鮮軍事行動の可能性を口にしない。彼らとの対話は「北朝鮮と米国はどのような合意を成すことができるだろうか」、「9月のニューヨーク国連総会の時、金正恩(キム・ジョンウン)委員長は来るか」ということに焦点が合わされている。昨年をワシントンで過ごしたジャーナリストや市民団体の人々が「何としても戦争は防がなければならないとの一念だった」と回想するのとは天と地ほどの差だ。

 だが、朝鮮半島の非核化と平和・繁栄、朝米関係の正常化に向かった行進が、ここで停滞してはならない。進展なしに時間だけが流れれば、米国、北朝鮮、韓国の内部で懐疑論と疲労感が高まり、特にトランプ大統領が北朝鮮との対話に興味をなくすこともありうる。

 今年の秋を黙って見過ごしてはならない理由も、各首脳たちにははっきりしている。今年の新年挨拶で核・経済並進路線を捨て「経済建設総力集中路線」に大転換した金正恩国務委員長は、人民に対して国際社会の対北朝鮮制裁緩和と経済成果で顕著な何かを見せなければならない。その切迫した契機は、北朝鮮政府樹立記念日である9・9節だ。「ロシアスキャンダル」で国内的困難に直面したトランプ大統領もまた、11月6日の中間選挙で経済と対外政策の成果を誇示したい。しかも、米国中間選挙の結果が朝鮮半島政策に直間接的影響を及ぼす可能性もある。

 進歩指向の米国のシンクタンクのある専門家は「民主党が下院を掌握すれば、ロシアスキャンダルでトランプ大統領弾劾を推進する可能性が高い。その場合、トランプ大統領の最高優先順位は弾劾の防御になり、朝鮮半島問題は二の次になる可能性が高い」と話した。逆説的だが、米国の民主党内にトランプ大統領の対北朝鮮政策の成功を望まない気流が強い点も変数だ。韓国はこうした米国の政治状況まで考慮して、朝米のシンガポール合意履行が後進しがたい軌道に乗るよう助けるべき状況だ。

 懐疑的世論と参謀の引き止めを取り払い、今まで走ってきた追求力は、トランプ大統領と金正恩委員長、そして文在寅(ムン・ジェイン)大統領の意志だった。今後押し進める力もまた三首脳にある。「核施設申告からしろ」、「いや。終戦宣言を先にすべきだ」として、平行線を走ってばかりいずに、秋に入る前に南北米の首脳が直接出て、突破口を切り開かなければならない。依然として信じる所はトランプ大統領、金正恩委員長、そして文在寅大統領だ。

ファン・ジュンボム・ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/856956.html韓国語原文入力:2018-08-09 19:04
訳J.S

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