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【特派員コラム】開城(ケソン)工業団地は“象徴”以上のものだ/ パク・ヒョン

登録:2013-08-09 18:32 修正:2013-08-09 21:44
パク・ヒョン ワシントン特派員

 開城(ケソン)工業団地と言えば、よく南北和解と協力の象徴だと言う。 至極ごもっともな答えだ。 だが私は、開城工業団地は“象徴”以上のものだと考える。

 2年前、中小企業中央会に出入りする機会があった。 ソウル汝矣島(ヨイド)の中小企業中央会にほとんど毎日出入りしていたのだが、いくつか驚いたことがある。 一つは、かつて権威主義政権時代には政権と密着して中小企業の権益擁護はなおざりにしているという指摘を受けていたこの組織が、「大企業との戦争」を行なっている中小企業人のベースキャンプのような所に変貌していたことだ。 これは大企業が製造業からベンチャー、さらには豆腐とパン屋のような小商工人の生計型業種まで無差別的に侵し始めて、中小企業人が崖っぷちに追いやられたためだ。

 ところで多くの中小企業が叫んでいる渦中にも例外的なところがあった。ほかでもない開城工業団地入居企業だった。 中小企業界では当時、一番よく儲けているのは開城工業団地入居企業だという話が広まっていた。 この入居企業の事情はなかなかよいという話はそれ以前も聞いたことがあったが、実際に当該企業家や専門家たちに会ってみると予想をはるかに越えていた。

 その理由は簡単だった。 低賃金と低地価、有利な立地条件にあった。 韓国で高賃金・高地価に加えて大企業の領域侵犯により競争力を喪失した中小企業は、すでに中国・ベトナムなどの地に多くが押し出されていたが、開城工業団地はそれらの地域よりもはるかに有利な条件を享受していた。

 このような実態はソン・ジャンジュン中小企業研究院研究委員が2011年末に入居企業123ヶ所中83ヶ所を調査した報告書によく表われている。 開城工業団地労働者の月平均賃金は115.5ドル(約12万9000ウォン)で、中国 青島(チンタオ)工業団地の368~460ドル、ベトナム タントゥオン工業団地の151~164ドルと比べてもはるかに低かった。 開城工業団地の地価は㎡当たり41ドルで、青島(100~200ドル)やタントゥオン(200~260ドル)とは比較にならないほど安かった。 物流面でも開城工業団地はソウルから60kmしか離れておらず、通関手続きを考慮しても物品搬入に1~3日しかかからない。 反面、青島から仁川(インチョン)は7~8日、タントゥオンから釜山(プサン)は9~10日もかかる。

 それで開城工業団地入居企業は天安(チョナン)艦事件と延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件、5・24対北制裁措置など南北関係が最悪の状況に陥っても、しばらく停滞するだけでたちまち回復した。 生産額が爆発的に増加するとともに、北側雇用人員は2005年の7000人余の水準から今年初めには5万人余りへと急増した。 入居企業は施設拡張と追加雇用を望んだが、開城近隣地域で人材をさらに求めることはできない状況にまでなった。 入居企業の62.5%が人手不足を訴えた。 南側も入居企業123ヶ所に原副資材を納品する業者が5000個所余りに達し、相当な波及効果があった。

 2004年末の初めての生産から現在まで8年余りの実験は、開城工業団地の成長潜在力が無尽蔵で南北の社会全般に及ぼす効果が途方もない大きさであろうことを示している。 南側にとっては中小企業に活路を開いてくれるのは言うまでもなく、雇用創出効果も得られるし、北側にとっては雇用創出と共に資本主義を実験する貴重な機会を得ることができる。 特に、何度も経済改革に失敗した北側指導層にも、いわゆる中国式改革・開放の道を追求する自信を持たせるだろう。

 開城工業団地の存立理由をこのように冗長にならべるのは、南北の為政者が自尊心争いにこだわるあまり、この工業団地の真の価値を忘れているのではないかと憂慮されるからだ。 開城工業団地閉鎖という劇薬処方は南北双方が“ウィン・ウィン”できる千載一遇の機会をのがす最悪の選択となるだろう。 14日の当局者会談で度量の大きい合意がなされることを期待する。

パク・ヒョン ワシントン特派員 hyun21@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/598842.html 韓国語原文入力:2013/08/08 19:00
訳A.K(1836字)

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