米国とイランがここ1週間で3回にわたり攻撃を交わしたことで、両国関係が先月の覚書(MOU)締結以前の対立局面に戻ってしまうのではないかという懸念が高まっている。イラン外交当局が仲介国と交渉を進める一方で、イスラム革命防衛隊(IRGC)をはじめとする強硬派が軍事行動によって交渉の流れを揺るがす事態が繰り返され、交渉の勢いも急激に失われている。
イランの足並みの乱れは11日(現地時間)に明らかになった。アラグチ外相はオマーンのマスカットで、同国のバドル外相とホルムズ海峡の安全な通航策について協議した。オマーンは、自国と接する南部の航路は戦争前のように自由に開放し、イランと接する北部の航路はイランが管理する一方、いずれの側にも通航料を課さないという折衷案を提示した。
ところが、イラン代表団がこの案をテヘランで再検討することにしてからわずか数時間後、革命防衛隊はオマーン側の南部航路を通過していたコンテナ船を攻撃し、米国の域内介入が終わるまで海峡を閉鎖すると宣言した。外相が海峡の開放について協議したその日、軍部が同海峡を航行する商船を攻撃し、全面封鎖を宣言したのだ。
革命防衛隊の軍事行動の背景には、先月締結された覚書に対する強硬派の不満が潜んでいるものとみられる。こうした動きは、前最高指導者の故ハメネイ師の葬儀を機に、さらに勢いを増している。米CNNの取材陣によると、葬儀期間中、弔問客たちはトランプ大統領を殺害して復讐すると口々に語り、葬儀会場には「サタンと交渉するな」「交渉する者に呪いあれ」というスローガンも聞こえたという。ブルス・アンド・バザール財団のメフラン・ハギリアン研究所長はウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材に対し、イランの意思決定は「混沌状態」にあるとし、交渉に否定的な強硬派が、衝突が長くなるほど自分たちに有利だと判断し、対立を長引かせようとしていると分析した。
米国の不信感も深まっている。イランは、商船への攻撃は過ちであり、交渉を妨害しようとする体制内部の逸脱した強硬派が仕組んだものだと釈明したが、翌日にも攻撃と封鎖宣言が繰り返された。米国としては、イラン交渉団が体制全体を代表し、合意の履行を保証できるかどうか改めて考えざるを得ない状況だ。
交渉の限界が露呈した一方で、軍事的圧力も明確な解決策にはなっていない点が、米国を困らせている。米軍は今週、これに先立つ2回の空爆でイラン国内の標的約170カ所を攻撃したが、この日のイランによる商船への攻撃を阻止することはできなかった。米国防総省でアラビア半島業務を担当していたデビッド・デスロシス元局長はアルジャジーラに対し、イランの戦略は軍事的勝利よりも海運・保険市場に不確実性を生み出すことにあるとし、「イランは状況を混乱させるだけでよいが、米国は目標を達成するにはペルシャ湾全域を統制しなければならない」と述べた。小型船舶や無人機で不安を煽れるだけで揺さぶりをかけられるイランとは異なり、米国は広範な海域に莫大な戦力を投入しなければならないという意味だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米国の選択肢が、全面戦争の再開、当初の要求に及ばない合意の受け入れ、あるいは交渉や衝突から手を引くという案に絞られつつあると指摘した。